米国で寿司ロボット需要が爆発的急伸…米飯加工ロボットメーカーの海外展開が加速

米国市場の動向と高関税政策の影響は

――北米市場では、のり巻きロボットの年間販売高が過去5年で2.5倍に増えましたが、 トランプ政権による対日関税率の引き上げによる影響について、どのような見通しを立てていますか。

谷口 北米市場における関税の影響は、中期的な視点でみれば限定的と考えています。

 関税比率の引き上げにより米飯商品のみならず様々なモノが値上がりすることで消費の減退や景気の停滞が起こりお客様の設備投資は抑制されますが、一定の期間を経れば再び投資需要は高まってくるとみています。

 米国市場について詳しくご説明しますと、米国では1980年代後半から90年代に第1次寿司ブームが起こりました。この時は寿司を扱う外食店舗が増え、カリフォルニアロールが生まれるなど一定の消費者層の間で寿司が非日常食として人気化しました。ただこの時はまだ大量かつ均質に美味しく寿司を作るまでには至らず、人手で十分賄えるため機械化すなわち寿司ロボットの需要は大きくありませんでした。

 私は数年前から本格的な寿司ブームが始まったと実感していますが、今回の流れは米国において寿司が一定の日常食になりつつあり消費者が増えていること、そして寿司を提供する事業者が効率的かつ均質に美味しく寿司を作り提供することを追求するようになり、そのための機械化が進んでいます。

 現在は寿司を提供する外食事業者が拡大していることはもちろんですが、日本とは桁違いの店舗数を有する大手スーパーマーケットチェーンでも相応の量の寿司が提供され始めていることから消費者の増加が実感できます。さらに、例えばロサンゼルス(カリフォルニア州)では、労働者の最低賃金は1時間17ドル(約2500円)を超えていますし、2030年までには一部の業種で30ドルまで引き上げることが義務付けられます。こうした流れを踏まえると寿司の生産における機械化は限りなく必然になってくると考えています。

 従って、一時的な消費や景気の減退があっても、中期的には当社の北米事業は、さらに拡大していくと確信しています。

――米国の関税対策として、御社は「米国子会社への在庫積み上げ」と「4月から6月まで集中的な製品出荷」を発表していますが、この対応をとった背景は何でしょうか。

谷口 当社は当初4月に発動すると言われていた関税対策として、発動される前に在庫を 積み上げて、一定期間はお客様へ関税による値上げ前の価格で当社製品を提供できるようにと考え、3月までに相応の在庫を確保しました。

 一部のお客様にはそうした対応をご評価いただき前倒しの購入に繋がりましたが、関税率や発効時期が二転三転したことに加えて、消費や景気の不透明さから設備投資を抑制もしくは当面の様子見をするお客様が多くみられたことから「4月から6月までの集中的な製品出荷」には想定していたほど繋がりませんでした。

 ただ関税率も決まり、現状は消費や景気の大きな混乱もみられないことから、徐々にお客様の設備投資行動も回復してきています。

――積み上げた関税前の在庫が切れて以降は、値上げに切り替える方針ですか。

谷口 お客様には申し訳ありませんが、関税後の製品については当社も価格を引き上げる ことになります。ただ製品の値上げではなく関税分を引き上げるので、販売明細にはそれをきちんと明記してお客様との取引の透明性を確保していきます。

海外市場における日系の食材卸売会社との協業

――22年3月期から25年3月期までの中期経営計画「Growth2025」の振り返りで、海外事業では「潜在需要に対する戦略的な取り組みが不十分」と課題を指摘していますが、具体的 にはどういったことを意味しているのですか。