●この記事のポイント
・月間アクティブユーザー1200万人、参加アーティスト170組超―Weverseは「滞在時間」ではなく「ユーザーの幸福」をKPIに置く
・チェ・ジュンウォン代表が語る成長の本質は「負の感情を排除し、没入の深化を支える」次世代型プラットフォーム設計
・Weverseは「不便の解消」「安全地帯の提供」「文化研究」で差別化に成功
K-POPの世界的ヒットの裏側で、静かに、しかし確実に存在感を増しているプラットフォームがある。BTSやSEVENTEENを擁するグローバルの総合エンターテインメント企業・HYBEのプラットフォーム部門であるWeverse Companyが展開する「Weverse(ウィバース)」だ。
2019年のローンチから6年。単なる「ファンコミュニティアプリ」から、コマース、ライブ配信、メンバーシップまでを統合した「グローバル・スーパーファン・プラットフォーム」へと進化を遂げた。月間アクティブユーザー(MAU)は1200万人を突破し、参加アーティストは170組を超える。
その成長を牽引してきたのが、Weverse Company代表取締役のチェ・ジュンウォン氏だ。Nexon、NCSOFT、Pinkfongといったゲーム・コンテンツ業界で25年以上のキャリアを持ち、プラットフォームビジネスの本質を知り尽くした人物である。
単なるファンアプリではない、「アーティストIPを核にした経済圏(エコシステム)」としてのWeverseの正体とは何か。そして、日本市場がHYBEエコシステムの中でどんな戦略的位置づけを持つのか。東京・汐留のHYBE JAPANオフィスで、チェ氏に話を聞いた。
●目次
Weverseは当初から「グローバル・ファンダム・プラットフォーム」を作る構想でスタートした事業だ。チェ氏は5年前、HYBEの創業者であるバン・シヒョク氏から声をかけられ、その構想に感銘を受けて合流を決めた。
「当時、BTSやTOMORROW X TOGETHER(TXT)が急成長していた時期で、『全世界のK-POPファンのためのプラットフォームを作りたい』という意気込みを聞いて、これは挑戦する価値があると思いました」
チェ氏は、スタートアップの成長メカニズムについて、独自の視点を語った。
「世の中のスタートアップの9割はビジネス的に長続きしません。残りの5%は曖昧な状態になり、わずかな企業だけがJ字カーブを描いて成長していく。その違いを生むのが『アンフェア・アドバンテージ』――つまり、その会社だけが持つ光る価値です」
Weverseにとってのアンフェア・アドバンテージは、BTSやTXTといった強力なIPだった。最小限の機能からスタートし、急速に市場に浸透。その後、ファンダム・プラットフォームとして定着するために、機能を拡張し、エコシステムを構築してきた。
「5年かけて、今ようやくそのエコシステムが完成したといえます」