日本企業で「脱オラクル」加速…高額ライセンスとロックインへの懸念が背景

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●この記事のポイント
日本企業で「脱オラクル」の動きが広がっている。Oracle Databaseの高額ライセンスとベンダーロックインへの懸念が背景にあり、アマゾンはAuroraやDynamoDBへ移行。国内でもベネッセや田辺三菱製薬がAzureやPostgreSQLを活用したクラウド移行を進めている。DX時代のIT戦略として、オープンソースDBとマルチクラウドへのシフトが加速している。

 日本の大企業のITシステムには、長年「聖域」と呼ばれてきた領域が存在する。日本オラクルが提供するデータベース管理システム「Oracle Database(以下、オラクルDB)」だ。

 1990年代から2000年代にかけて、日本企業の基幹システムは急速に高度化した。その過程で、金融・製造・流通・通信などの大規模トランザクション処理を支える基盤として、オラクルDBは事実上の標準(デファクトスタンダード)となった。高い可用性、膨大なデータ処理能力、そして堅牢なサポート体制。これらの要素が企業に「安心」を提供し、多くの企業が基幹系システムの中核にオラクルDBを採用してきたのである。

 しかし今、その鉄壁の牙城に変化の兆しが現れている。DX(デジタルトランスフォーメーション)とクラウド化の波の中で、かつての守護神はむしろ企業の俊敏性を阻む存在として見られ始めているのだ。

●目次

牙を剥く「ベンダー・ロックイン」の代償

「脱オラクル」という言葉が企業のIT戦略会議で語られるようになった背景には、主に二つの問題がある。コストの高騰と、ベンダー・ロックインだ。

 オラクルDBのライセンス体系は複雑であり、CPUコア数や利用機能に応じて費用が積み上がる。さらに年間保守費用はライセンス価格の20%前後に達することも多く、長期運用では莫大なコスト負担となる。

 近年はさらに状況が厳しくなった。エントリー向け製品の提供終了や、クラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」への移行を促す販売戦略が強まり、ユーザー企業の選択肢が狭まっているとの指摘が増えている。

 問題をより深刻にしているのが、ベンダー・ロックインの構造だ。一度オラクルDBを中心にシステムを構築すると、他のデータベースへ移行するにはアプリケーションの大幅な改修が必要になる。さらにクラウド環境によってはライセンス条件が変わり、事実上の「移行コスト」が跳ね上がるケースもある。

 企業のIT戦略のコンサルティングを行うITジャーナリストの小平貴裕氏はこう語る。

「クラウド時代のIT戦略では、柔軟なシステム構成が重要になります。しかしオラクルDBを中心とした構成は、クラウド移行やマルチクラウド戦略を難しくすることがある。企業のDXを進めるうえで、これは無視できない制約です」

 かつては企業に安心を提供していたオラクルDBが、クラウド時代のIT戦略においては「重い足かせ」と見られるケースも増えている。

アマゾンが引いた「決別の引き金」

 この流れを決定づけた象徴的な出来事がある。米アマゾンによる「オラクル離れ」だ。

 アマゾンはかつて世界最大級のオラクルDBユーザーだった。しかし同社は2010年代後半から、内部システムを段階的に自社開発のデータベースへ移行していった。代表例が以下の2つである。
 ・Amazon Aurora(クラウド向けリレーショナルDB)
 ・DynamoDB(NoSQL型分散データベース)