鹿島が建設業初「売上3兆円」、大手4社は最高益…ゼネコンが逆風下で稼げる理由

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●この記事のポイント
大手ゼネコン4社の2026年3月期連結営業利益は合計約7,300億円と前期比5割増、東京五輪特需を超え8年ぶり最高益を更新。鹿島は建設業初の売上高3兆円超。背景には選別受注・スライド条項による価格転嫁の定着がある。一方、中小建設業の倒産は2024年に1,890件と過去10年最多。大手最高益と中小最多倒産が同時進行する業界の構造転換を解説。

 5月8日、建設業界に一つの区切りが訪れた。

 大手ゼネコンの業績が拡大している。2026年3月期の4社合計の連結営業利益は前の期に比べ5割増え、8年ぶりに過去最高となった。鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設の連結営業利益の合計は7,300億円程度に達し、東京五輪・パラリンピックに向けた建設特需があった2018年3月期の5,994億円を上回った。

 建設特需として長く語り継がれてきた「五輪バブル」を、平時の業績が超えてしまった。しかも、この数字は当初の予想を大きく上回る着地だった。大林組・大成建設はともに期初には「反動減」を見込んでいたが、追加工事の獲得と価格転嫁の定着により業績を大幅に上方修正。大林組は国内建築で追加工事の獲得やコスト低減が進み、2026年3月期の純利益見通しを前期比17%増の1,700億円へと上方修正した。清水建設も国内建築・土木での採算改善に加え、政策保有株の売却益も追い風となり、純利益見通しを前期比67%増の1,100億円へと大きく引き上げた。

 一方で同じ時期、2024年に発生した建設業の倒産は1,890件に上り、過去10年で最多となった。小規模事業者が大半を占め、建築資材価格の高止まりに加え、建設現場での職人不足と人件費の高騰によって事業の継続を断念するケースが目立った。

「大手は最高益、中小は最多倒産」──この極端な二極化こそが、今の建設業界の実像だ。そしてその背後には、業界の力学を根底から変えた構造転換がある。

●目次

「数」を追うのをやめた日──選別受注という覚醒

 長年、ゼネコン業界には「赤字でも受注しろ」という空気があった。仕事の量が業績の代理指標とみなされ、採算を度外視しても受注残高を積み上げることが美徳とされた。その結果生まれたのが、「受注すればするほど赤字になる」という逆説的な構造だった。

 転換点は、コロナ禍を経た2022〜23年頃に静かに訪れた。

 今回の最高益を支えた核心は、契約の変革にある。資材高や人件費高騰の逆風の中でも追加工事の獲得や価格転嫁が進み、価格決定力が発注者側からゼネコン側に移る構造変化が起きた。かつては工事中に資材が高騰してもゼネコン側が飲み込む慣行が続いていたが、今や変動分を発注者が負担する「スライド条項」が一般化し、「正当なコストは正当に請求する」という当たり前の仕組みが業界に根付き始めた。

 なぜこれが可能になったのか。需要の質的変化が大きい。半導体工場、首都圏の大型再開発、全国各地で急増するデータセンター──2024年度の建設工事受注総額は18.7兆円で前年度比8.9%増となり、4年連続のプラス成長を達成した。これほどの需要が重なれば、施工能力には明確な上限がある。

「以前は建設需要が施工能力を下回り、ゼネコン同士が叩き合っていた。今は逆転し、需要が施工能力を大きく上回っている。その構造変化が、価格決定権をゼネコン側に移した本質的な理由です」(不動産ジャーナリスト・秋田智樹氏)