
●この記事のポイント
亀田製菓は2026年9月、インドの合弁会社KLTの株式49%を合弁相手のLT Foodsに譲渡し、インド事業から撤退すると発表した。KLTは2026年3月期に純損失1億2111万ルピーを出し、債務超過に陥っていた。記事では、価格帯のずれや49%出資という制約などの撤退理由と、TH FOODSを軸にした北米への集中を分析し、日本企業が学べる撤退の進め方を考える。
亀田製菓は9月16日、インドの持分法適用関連会社「KAMEDA LT FOODS (INDIA) PRIVATE LIMITED」(以下KLT)の保有株式49%を、すべて合弁相手のLT Foodsに譲渡すると発表した。LT Foodsはバスマティ米ブランド「Daawat」で知られるインドのコメ大手である。株式譲渡は10月下旬に実行される予定で、亀田製菓は2017年3月の設立から約9年半続いたインドでの米菓事業から手を引く。
同社は直近の2026年3月期に売上高1380億円(前期比33.7%増)、営業利益75億円(同36.9%増)と過去最高の業績を出したばかりだ。海外事業の売上比率はすでに35%に達している。業績が好調ななか、なぜ14億人の市場から退くのか。そして、日本企業がなかなか踏み切れない撤退を、なぜ短期間で決めることができたのか。開示資料と数字から読み解いていく。
●目次
(1)売上は伸びたが、赤字は縮まらなかった
LT Foods側の開示によると、KLTの売上高は2024年3月期の7360万ルピーから、2025年3月期には1億4320万ルピーとほぼ倍増した。しかし2026年3月期は1億4030万ルピーと横ばいになり、同期の営業損失は約5842万ルピー、純損失は約1億2111万ルピー(約2億円)に上った(1ルピーは約1.65円で計算)。純損失が売上高の9割近くに達しており、開示資料によれば純資産もマイナス、つまり債務超過に陥っていた。売上は伸びても、固定費の重さを吸収できるだけの規模には届かなかったことになる。
(2)価格帯と食習慣の壁
主力ブランド「KARI KARI(カリカリ)」は2020年1月に発売された。コメとピーナッツを使った「揚げない、プレミアムな健康スナック」という打ち出しで、価格は60gで50ルピー、135gで99ルピーだった。一方、インドのスナック市場の中心にあるのは、ナムキンと呼ばれる伝統的なスパイスの効いた揚げ菓子だ。大手ナムキンメーカーのビカジ・フーズの資料を見ると、5ルピーと10ルピーの小袋が、2021年の同社の販売(SKUベース)の63%を占めている。日常的に買われる価格帯と、KLTが狙ったプレミアム帯とのあいだには、かなりの差があった。なお、発売から約2カ月後の2020年3月には、新型コロナウイルス対策でインド全土がロックダウンに入っている。新しいブランドを店頭で試してもらう機会が限られた時期だったことは、差し引いて考える必要がある。
「インドでは『健康に良い』という訴求だけでは、なかなか購入頻度は上がりません。小袋でまず試してもらい、少しずつ習慣にしていくのが定石ですが、小容量にすると製造コストと物流コストの比率が上がります。輸入品と同じ発想の値付けのままでは、都市部の一部の層で止まってしまう。これは亀田製菓に限った話ではなく、インドに進出した日本の食品メーカーの多くが同じところでつまずいています」(戦略コンサルタント・高野輝氏)