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歴史・時代 連載中 長編
 四季折々の美しい自然に彩られる彩凪藩。秋も深まる頃、若き藩士である橘環は、藩主の密命を受け、隣国・墨染藩との緊張が走る国境地帯、暁峰連山の奥深くへと調査に赴く。朴訥ながらも内に強い意志を秘めた環は、供の若党・弥助と共に、険しい山道を進む。そこでは、息を呑むほど美しい紅葉が燃える一方で、国境を越えてくるかもしれない脅威への警戒が常に求められた。  山中で予期せぬ霧と日暮れにより道に迷った環は、霧の奥から微かに聞こえる清らかな音に導かれるように、古びた鳥居のある場所に辿り着く。そこは、夕陽に照らされた紅葉が錦織りなす、静寂に包まれた古社の境内だった。そして環は、白い小袖に緋袴をまとった一人の巫女・小夜が、一心に神楽舞の稽古に打ち込む姿を目撃する。風に舞う一枚の真っ赤な楓の葉が、彼女の肩にひらりと舞い降りたその光景は、環の心に鮮烈な、そして生涯忘れ得ぬ印象を刻みつけた。  木花咲耶神社と名乗るその社で一夜を明かすことになった環。小夜の自然への深い知識と慈しみの心、そして神社の神秘的な雰囲気に触れ、武骨な彼の心にはこれまでに感じたことのない安らぎと温かい感情が芽生え始める。別れ際に小夜から手渡された一枚の紅葉の葉は、環にとってかけがえのない宝物となった。  城下の日常に戻った環の心には、常に小夜の面影が焼き付いていた。鍛錬にも身が入らず、父の形見である影笛を手に取り、切ない音色を夜空に響かせる日々。一方、小夜もまた、環の朴訥ながらも誠実な人柄に心惹かれていく自分に気づき始めていた。  しかし、二人の淡い想いには、武士と神に仕える巫女という越えがたい身分の壁が立ちはだかる。さらに、環の幼馴染であり、藩の重臣の息子である野心家の藩士・松平義明もまた、その美しさと『天啓の巫女』と噂される小夜の特別な力に興味を抱き、彼女に接近しようと画策し始める。  時を同じくして、彩凪藩と隣国・墨染藩との間では、水利権を巡る緊張が日増しに高まり、藩内には不穏な空気が流れ始めていた。環は、藩士としての務めと、小夜への募る想いとの間で深く葛藤する。やがて彼は、藩の、そして自らの運命を揺るがす大きな渦の中へと、否応なく巻き込まれていくことになるのだった。
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小説 1,936 位 / 201,190件 歴史・時代 18 位 / 2,777件
文字数 43,974 最終更新日 2025.06.16 登録日 2025.05.30
 幼馴染として育ってきた相川湊と広瀬陽菜。気兼ねなく話せる間柄だったはずの二人には、高校卒業を目前にして、いつしか見えない『境界線』が引かれ始めていた。  陽菜に訪れる新しい恋の予感。その輝きを隣で見つめる湊は、今まで言葉にできなかった自身の本当の気持ちと、残酷なまでに直面する。彼の唯一の慰めは、父から譲り受けた古いフィルムカメラ。ファインダーを通して切り取る日常は、陽菜の笑顔も、都会の風景も、どこか切なく色褪せて見えた。  友人たちの言葉、SNSで垣間見える華やかな世界、そして陽菜自身が抱えているかもしれない密かな葛藤。様々な想いが交錯し、湊の心は激しく揺れ動く。  卒業というタイムリミットが迫ってくる。湊が最後にフィルムに焼き付けようと決意したものとは。そして、彼らがそれぞれの『境界線』を越えた先に見る景色とは──。都会の片隅で紡がれる、ほろ苦くも切実な青春の光と影を描く物語。
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小説 201,190 位 / 201,190件 青春 7,371 位 / 7,371件
文字数 29,317 最終更新日 2025.06.02 登録日 2025.05.11
 夢を見る力を持つ少女、カイリ。彼女は幼い頃から、鮮明で不思議な夢を見ることに魅せられていた。ある日、カイリは夢の中で迷い込んだ夢迷宮で、謎の守り人と出会う。守り人から、彼女の持つ特別な力「夢現の共鳴」が、夢の世界と現実世界のバランスを保つ鍵であることを告げられる。  しかし、平和な日常は突如として終わりを告げる。人々の悪夢が現実世界に影響を及ぼし始め、街は混乱と不安に包まれる。カイリは、守り人から託された使命を胸に、悪夢の根源を突き止める旅に出る。  旅の途中、カイリは夢に関する様々な能力を持つ仲間たちと出会う。冷静沈着なハッカーのソラ、経験豊富な元夢警察官のマックス。彼らと共に、カイリは悪夢を生み出す謎の存在に立ち向かう。  次々と現れる強敵たち。人々の悪夢を操る「ナイトメア・クリエイター」、古代の禁断魔法を使う「禁断の魔術師」。カイリは、自身の持つ「夢現の共鳴」の力を覚醒させながら、仲間たちとの絆を深め、困難を乗り越えていく。  やがて、カイリたちは、夢の世界と現実世界を滅亡させようとする、強大な黒幕の存在を知る。その黒幕が企てる恐るべき儀式「魂の夜明け」。カイリは、夢迷宮で得た知識、仲間たちの力、そして自身の成長した力を結集し、最後の戦いに挑む。  夢と現実が交錯する激しい戦いの果てに、カイリは世界の未来を救うことができるのか。夢に導かれた少女の、希望と勇気の物語が、今、幕を開ける。
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小説 201,190 位 / 201,190件 ファンタジー 46,562 位 / 46,562件
文字数 13,317 最終更新日 2025.05.28 登録日 2025.04.20
 舞台は、日本のどこにでもありそうな、しかし活気を失い、ゆっくりと寂れていく海辺の町・夕凪町。高校二年生の佐々木海斗は、この町に漂う閉塞感と、将来への漠然とした不安の中で、無気力な日々を送っていた。都会への憧れを抱きつつも、何かを変えるきっかけを見つけられずにいた。  そんなある日、海斗は幼馴染で地元愛の強い美咲に誘われ、町のNPO法人が企画した『故郷解体ゲーム』という風変わりな町おこしイベントに参加することになる。それは、町の輝かしい歴史だけでなく、あえて『負の遺産』や『タブー』とされてきた過去にも光を当て、議論を巻き起こし、新たな視点を見つけ出そうという斬新な試みだった。  海斗と同じく、それぞれの思いや悩みを抱えた同級生たち――歴史に詳しい翔太、SNSでの発信力を持つ優奈、代々漁師の家系である健太――も集まり、活動が始まる。彼らは、廃墟となった造船所の調査や、町の古老への聞き取りなどを通して、これまで知らなかった故郷の歴史や、そこに生きてきた人々の複雑な感情に触れていく。  しかし、彼らの活動は、穏やかだった町に波紋を広げる。過去の傷に触れることを快く思わない大人たちからの反発、SNSでの予期せぬ炎上や誹謗中傷、そして見えない圧力。綺麗ごとだけでは済まない現実に直面し、時には仲間同士で意見をぶつけ合い、傷つけ合うこともあった。  活動を通して、彼らは町の過去に隠された、決して語られてこなかった大きな秘密の存在に気づき始める。それは、現在の町の姿とも深く結びついている可能性があった。真実を知りたいという思いと、それに伴う恐怖や葛藤。無関心だった海斗の心にも、変化が訪れる。  これは、衰退する故郷を舞台に、不器用な高校生たちが、町のタブーに挑み、現実の厳しさに打ちのめされながらも、仲間との絆を深め、自分たちの手で未来を切り開こうともがく、ほろ苦くも熱い青春の物語。彼らは、隠された真実を明らかにすることができるのか。そして、その先に何を見つけるのだろうか。
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小説 201,190 位 / 201,190件 ライト文芸 8,600 位 / 8,600件
文字数 34,264 最終更新日 2025.04.30 登録日 2025.04.30
かつて音楽の夢を追いながらも挫折し、今はバーの片隅で惰性の演奏を続けるシンガーソングライター、相馬悠真。彼は、一人のピアニストである如月紅音と共に作り上げた楽曲を最後まで完成させられずにいた。彼女の「紅の未来」という未完成の楽譜だけが、手元に残されている。 ある日、悠真は紅音の母親から「彼女が残した音」を託される。埃をかぶったカセットテープに刻まれていたのは、紅音のピアノと、かすかな独り言「この曲、悠真ならどう仕上げる」。その瞬間、彼の中で止まっていた時間が動き出す。 彼は、紅音との出会い、衝突、そして音楽を分かち合った日々を思い返す。雨の夜、ライブバーでの運命的な出会い。価値観の違いから何度も衝突しながらも、夜通しのセッションを重ね、唯一無二の音楽を生み出した日々。そして、最後に託された未完成の楽譜と「あなたが描く未来の方が、ずっと綺麗だから」という言葉。 だが、悠真の前に立ちはだかるのは、カリスマ音楽プロデューサー・佐倉光輝。彼は悠真の才能を見抜き、紅音の音楽を「売れる形」にしようとするが、悠真はそれを拒む。紅音の残した音を、形だけの成功へと変えるわけにはいかない。孤立しながらも、悠真は「紅の未来」の完成を目指す。 迷いの中、幼馴染のプロデューサー・橘凛の導きで、紅音と訪れた海辺のスタジオへ向かう。波音に包まれながら、悠真は紅音の「言葉よりメロディで伝える」という音楽観を理解し、彼女と共に奏でた旋律を辿っていく。そしてついに、未完成だった「紅の未来」が完成する。 迎えたライブ当日。悠真はステージの中央でギターを手にし、「紅の未来」を歌う。彼の音が鳴り響いた瞬間、紅音の旋律が観客の心に届き、彼女が音楽の中で生き続けていることを実感する。
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小説 201,190 位 / 201,190件 ライト文芸 8,600 位 / 8,600件
文字数 6,079 最終更新日 2025.03.22 登録日 2025.02.22
 「僕と君との距離」は、少年・夏輝と精霊の少女・マリーの心温まる物語です。  物語の主人公夏輝は、自然に興味を持ち、森の中を探検する日々を送っていました。ある日、彼は不思議な出会いを果たします。それは、森に住む精霊の少女・マリーでした。彼女は人間との接触を避けていたため、最初は夏輝との接触に戸惑いを見せます。  森に足しげく通いますが、マリーに会うことができないという試練が夏輝に訪れます。諦めきれない夏輝は、必死に聞き込みをしたり、調べ物をしたりしながら、彼女の痕跡を探していきます。  夏輝の純粋な心に触れることで徐々に心を開いていきます。再会を果たし、自らの思いを伝える夏輝。二人は次第に親しくなり、互いの夢や希望を語り合うようになります。夏輝は環境保護に関心を持ち、マリーは人間世界について学びたいと思っています。彼らはそれぞれの目標に向かって努力しながら、愛情を深めていきます。  二人は互いに支え合いながら困難を乗り越え、成長していきます。 物語が進むにつれて、夏輝とマリーは自分たちの愛や夢がどれほど大切であるかを再確認し、それを実現するために共に歩む決意を固めます。最終的には、彼らの絆が森全体や村人たちとの調和を生み出し、新しい未来へとつながっていく姿が描かれます。  「僕と君との距離」は、愛や成長といったテーマを通じて、人間と自然の調和について考えていく物語です。
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小説 29,425 位 / 201,190件 恋愛 12,997 位 / 59,222件
文字数 31,285 最終更新日 2025.01.08 登録日 2025.01.08
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