君の心臓が止まるその日まで。僕の全財産をかけて、君の『生きた音』を録音する。

世界は、暴力的なノイズで満ちている。

映画の音を作る天才フォーリーアーティスト・久条蓮(くじょう れん)は、ある事故を境に「聴覚過敏」を患い、絶望の中にいた。
アスファルトを削るタイヤ音、雨の打撃音、人の話し声。

日常のすべてが凶器となって脳を破壊する日々。

そんな彼が、轟音渦巻く駅のホームで出会ったのは、余命半年の少女・歌音(カノン)。

彼女の心臓は、壊れかけていた。

不規則で、弱々しく、いつ止まってもおかしくない重度の「不整脈」。

だが、その「死に近い音」だけが、蓮の耳に届く世界で唯一の「静寂(すくい)」だった。

「君の心臓の音を、死ぬまで録音させてほしい」

「いいですよ。その代わり、私の最後のわがまま、全部叶えてくださいね」

これは、音に呪われた男と、死に向かって命を燃やす少女が奏でる、残酷で美しい恋の記録。

やがて訪れる永遠の静寂。

その時、彼が最後に録音した「音」とは――。
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