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第七章
141.ロレンツォ公はフレンドリーなのに、おっさんの方は態度きつくね?
しおりを挟むサライは白目を向いた。
「その絵を、母親は僕と一緒にオレノ村に置いていったって訳か」
「そそ、そういうことになる。で?マエストロの奴、今後、どうするって?」
「死神野郎にはもう任せておけないってイラついていたな。ロレンツォ公はフレンドリーなのに、おっさんの方は態度きつくね?」
「大学時代から水と油。喧嘩するほどなんとやらってやつだった。けど、ロレンツォ公がRCを辞めたあたりから関係は悪化。理由は意見の相違ってヤツ」
「どんな?」
「贋作組織の残党との戦いをどう終わらせるかで。基本、レナトゥス・マテリア・インベストリアのことは、RCが仕切っているし、事件が起これば出張ってくるけど、イタリアで起こった事件だけはロレンツォ公に指揮権がある。だから、RCでそこそこの地位にあるマエストロとイタリアのラスボスみたいなロレンツォ公はぶつかりあっちゃうって訳」
「僕にはどうでもいいことだな」
「マエストロの奴、葬式や家の相続のことはやってくれるって言ってくれたろ?」
「全てが終わったら、あいつとは縁を切るつもりだ。毎回、鳥肌が立ちすぎて、それで死んでしまいそうだ」
「なら、事件の解決を急ごうじゃないか」
「ああ。そうだな」
ノート型パソコンに手を伸ばす。
オレノ村の自宅リビングのコルクボードに止めてあった数字を検索した跡があった。
顔をしかめながら、キーボードに指を滑らす。
熱にうなされている間、ずっと気になっていたことがあったのだ。
「何を調べようとしているんだ?」
「自宅で死んでいた高位のドメニコ会派の修道士七人。誰かにおびき寄せられていそいそとやって来たのなら、やりとりの記録が残っているはずだろうから」
電話。
もしくはメール。
「……何も、無い?」
七人は、フィレンツェのサン・マルコ修道院所属だったようだ。
ロレンツォの館から北へ二ブロックほどいったところにある。歩いて数分の距離だ。
画像で建物を確認。
ファザードには、聖マルコの象徴である右翼の獅子。壁はリボンやガーランド(花綱)で飾られていて、可愛らしい印象がある。
「元は、側にあるサン・マルコ美術館が本拠地だったが、十八世紀に今の位置に移動。怪僧サヴォナローラが寝起きした部屋はそのまま保管されている。ふうん、なるほど」
彼らの携帯履歴を探っても、絵に関する会話は無し。
死亡後に解約されていたって、サライにはお手の物だ。
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