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31 フィールドは地と空と

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 ヒューマン、ドワーフ、エルフ、フェアリエン、ケットシー、コボルト。これがフロキリで選択できる六種類の種族だ。ケットシーとコボルトだけは頭部がほぼ獣の姿をしている。尻尾や手など、獣人としての特徴を持った特殊種族だ。能力に差は無いが、ボディがデフォルトでは細身に設定されている。それをあえて太めに設定してオスケモを楽しんだり、身長を小さくしてマスコットのようになることも可能だった。
 ただ、人で言うところの髪の毛だけがヒューマンのそれと全く同じデータを流用しており、日本人にとっては違和感が残る。唐突なヘアスタイルが毛並みに馴染まず浮いているのだ。ロングヘアの猫、モヒカンの犬などは海外サーバーには多く、日本サーバーではあまり見かけない。
 海外製品のfrozen-killing-onlineは、そういった美的センスとそれを実現できるキャラメイクが外国仕様となっている。ヒューマンアバターの顔がどことなく西洋的なのもそのためだ。ガルドはその異世界を満喫できる仕様が気に入っていたが、近年の原点回帰という日本ゲーム市場の流行には逆流しているため急速な過疎化が進んでいた。
 戦闘の難易度の高さ、西洋的なキャラメイク、そして生産やストーリーなど日本人好みのエッセンスが乏しい点などが敗因だろう。だがその要素はガルドにとっては有りがたい。バトルジャンキーの思考は単純明快、とにかく戦いたいのだ。
 この世界は楽しくて仕方がない。
 剣を握りしめる。敵を見据えながらガルドは高揚した気分のまま走り出した。強く踏みしめた足元に茶色の砂煙が舞う。
 戦闘に特化したバトルフィールドは雪の無い砂塵舞うただの茶色い空間だ。それがいい。美しい白いフィールドも舞い降る雪も好きだが、ガルドはこの戦うためだけに用意された戦場も好きだった。


 フィールドの至るところで爆発と金属の衝突がけたたましく音を立てている。その中央エリアで訓練の中心人物が危機であった。迫り来る一筋の閃光をメロが青く光りながらすんでのところで回避し、飛距離が足りずに背中に爆風を受けた。
 「どわー!」
 悲鳴をあげながらこちらに飛んでくる彼を、駆け付けたガルドが正面からがっしりと受け止める。右利きのガルドは両手持ちの大剣を右だけで持ち、左腕でメロの腰をしっかりと抱えた。ガルドの半分ほどの細い腰は、腕を回すと安定感があった。メロが抱き枕のようにすると抱えやすいというのは新たな発見である。
 すぐ後ろから剣の風切り音がする。ガルドは目を向けることなく大剣を後ろに横一閃斬りに振った。
 爽快感のあるパリィの音が背中から聞こえる。何度も繰り返し身体で記憶した片手剣使いの一般的な太刀筋を思い浮かべ、それに適した剣筋でパリィが成功したらしい。
 大会本番では、これを相対するプレイヤーの手癖に変えてやればいい。そう思いながら前方にダッシュ回避。ローリングはしない。メロを抱えたままでは不可能だろう。
 「飛ぶぞ、つかまってろ」
 「早いね!?」
 驚きつつ敵から目を離さないメロを、後衛とはいえ立派な戦士だと内心褒めた。続けてガルドは手慣れた動作で、腰についているアイテム袋の口を大剣を持ったまま小指でくんと引っ張る。
 袋から飛び出すようなアニメーションを交えながら、アイテム欄が瞬時に表示される。眼前に現れた横一列のそれらから「カタパルト」を選択した。
 これは選択直後に使えるものではない。少しばかり操作が必要だった。一瞬で視界が空に上がり、飛ぶ鳥の様な目線へと変わる。フルダイブでは珍しい他人称視点モードだ。
 鳥瞰で自分とその周辺のエリアを見ながら、現地点より敵から距離をとるポイントに着地点を設定する。指定そのものはフルダイブ機における銃撃ゲーム、FPSのエイム視野優先操作に近い。目でターゲットを見ると銃口を持つ腕がそれに合わせて勝手に動くような、独特な操作感覚だ。
 その筋のゲームをほんの十時間程度だが遊んだ経験のあるガルドにとっては、違和感の無い動作だった。
 「なんだろ、すごい安心する~」
 「そうか。ついでにアレ頼めるか」
 早くも状況に適応してリラックスし始めたメロにガルドがアゴで自身の三時方向をしゃくってみせた。豆粒のように遠いが、ターゲットアラームで気付いたのだろう。「はいはーい」とガルドの首に肩を回しながら杖を構える。
 自分達をターゲットロックする小さな雷の球体が四つある。相手魔法プレイヤーの追尾効果持ち単詠唱系魔法スキルだ。
 メロのスキルならば【見切り】スキルで回避するより確実に処理できる。見切りの成功率が「ジャンプ・ダッシュ・攻撃直後・被弾直後・アイテム使用前後」に三割を切ることを考えると、カタパルトでの飛行中も失敗するだろうという予想からだった。

 着地地点を指定し終わったガルドの足元から、ガンメタルのハシゴのような機械が飛び出す。ごてごてした装飾とバネのようなものがいくつもくっついているが、基本構造はハシゴにしか見えない。フロキリにおける特攻アイテム、カタパルトだ。その付け根に申し訳程度の足踏み台が付いている。台はガルドの真下に発生し、せりあがることで自動的に使用プレイヤーの射出準備に取りかかる。
 リボルバーの拳銃のような間の抜けた射出音をあげながら、カタパルトが人間をピンボールのスタート部分のように弾いた。
 「うわぁっ!」
 急速な上昇と共に、ガルドとその小脇に抱えられたメロが空中に飛び上がる。瞬く間に五階建てのビルを越えるような高さまで飛び出した。
 それはまるで、雲の上から釣りざおで引き揚げられたかのような動きだった。
 風を受け、勢いよく飛び立つ二人をレイド班の片手剣士が口を開けて見送る。カタパルトは本来レイドや攻城戦で使用するものだ。対人戦闘で持ち込むアイテムではない。言いたいことはわかる。「なに考えてるんだ」という感じだろう。
 ガルドはその予想と彼らの顔を見て、くつくつと笑った。
 三人称だった視点が自分の目にすうっと戻る。見えたのは心地よい青空ではなく、メロのまだらにブルーに染まっている量の多い髪だった。視界全体、ガルドの顔面が髪の毛に埋まっている。
 風に吹かれ彼の髪が四方八方に広がっているせいだ。前が見えない。首を振ってもとれない。
 「……メロ」
 「うひゃー! 高い! 高い!」
 彼は興奮していた。
 何でも再現が売りの脳波を利用したVRとはいえ、フロキリには戦闘機ゲームに搭載されているような、重力感のフィードバック機能がない。
 空を飛ぶ加速感とGを感じることができない分、風を受けながらメロは景色と追尾弾を見た。
 一瞬の滞空、自由落下が始まる。
 それに合わせ、追尾してくる雷の魔法スキルもカーブしてきた。
 「あ、させないよー」
 装備の効果でチャージ時間が一秒の二割まで短縮された、数少ない単詠唱魔法を連射する。氷をまとったそれは、空まで鋭く追尾してくる雷を正確に穿うがつ。衝突のエフェクトが散るように煌めいた。
 ぶつかり合う魔法同士が落下中のガルドとメロの直上でぶつかる。爆風は小さく、彼らには届かない。
 「っと!」
 ずどんと鈍く重い音を響かせながら、ガルドが地面に着地した。
 瞬時に、着地狙いで斬りかかってきていた片手剣プレイヤーを右手の大剣でパリィ。続けて敵のカウンターが来るのを、メロごと身体をひねって回避する。
 ついでにメロの腰を抱える腕をそのまま上空にブン投げる。
 「そうくる!?」
 思わず相手剣士が悲鳴をあげた。
 「いえーい! 人間大砲だよ!」
 笑いながらメロがふわりとまた空を飛ぶ。人のいない安全エリアに飛ばされながら、メロが一分は掛かる長い召喚魔法のチャージに入った。
 させるかとばかりに片手剣士がメロの方角に進もうとし、眼前でガルドの左足が勢いよく地面を揺らした。
 地割れのような短い轟音と、両手持ちに切り替えた彼の剣構えが迎え撃つ。
 意識して威圧を当てながら、低めに一言呟いた。
 「まとめて来い……」
 空気がぴんと張る。
 脇を抜けても良い状況だが、誰もガルドを無視できなかった。
 片手に銃を構えたスモールシールドのタンクがじりじりと距離を詰め、ガルドの威圧で足を止めた片手剣士が一拍止まった後にスキルモーションに入った。


 とにかくメロは寄られると弱い。距離をとろうにも夜叉彦ほどの加速ができない。どうするか考えたのは、その軽量ボディをいかして「飛ぶ」ことだった。
 マグナの発案から訓練を繰り返し、ガルドとジャスティンはメロを飛ばす技術を着々と身に付けていった。多少乱暴だが、その破天荒さがメロは楽しいのだと言う。
 そのメロは自分で飛ぶ方法に加え、上手い着地方法と、どれだけ離れれば数ある詠唱魔法のどれを行使できるか学んだ。
 ガルドの丸太のような腕から発揮される腕力で飛んだ場合、一分半掛かるチャージが丁度良い。ジャスティンの盾に乗って回転を掛けてからの自力ジャンプでは、一分が固い。この魔法だと間に合わない、あっちでは時間が余るーーあれこれと試すのは楽しかった。
 詠唱しながら出来る動作で回避する訓練も、メロは楽しみながらできていた。

 盾と銃を構えた女性盾役タンクプレイヤーが接近してくる。自分のタンクとガードの二人は何をしているのかと、メロはさらに遠くを目を凝らした。
 黒い大剣を翻すガルドは片手剣士にとどめのスキル攻撃を叩き込んでいるところだった。ジャスティンは遠い。彼らの支援は見込めないが、メロは不敵に笑う。
 この状況こそ、訓練の目的だった。
 ロックオンされた際のアラートがメロの耳奥に響く。
 魔法スキルの詠唱中は【見切り】スキルが使えない。だが、攻撃を避ける方法がないわけではない。
 銃から弾丸が飛び出しメロに迫る。
 「えい」
 杖を肩の高さで維持しながら、ひょいとしゃがんだ。軌道上にはメロの身体はない。
 嬉しそうな笑顔を圧し殺し饅頭のような顔になっているタンクが、今度はしゃがんだメロに当たるように一発打ち込む。彼女はメロを敬愛する鈴音舞踏メンバーであり、他を無視して彼に突貫してきたのもその部分が大きい。
 「どぉー!」
 手を杖から離すとチャージ解除になるため、右手だけはそのままに、左手を地面について前方に回転する。
 足の動きを指示する脳内イメージが乏しかったせいか、脳波感受のコントローラはそれを「でんぐり返し」と処理した。ころんと転がり、柔軟な足首で着地する。
 長時間一対一でいる必要はない。だからこそ、無茶でもなんでも避けながら詠唱をキープする。それが対銃使いのときのメロオリジナル回避法だった。
 「ナイス」
 ぬっと後方からやって来て袈裟斬りにタンクを斬ったのは、片手剣使いとさらに奥の魔法使い・ボートウィグをあっという間に片付けてきたガルドだった。
 「ガルドありがと! 早かったね~」
 「急いだ」
 「あ、もう一発お願いします!」
 「ん? そうか」
 HPゲージが赤点滅で止まってしまっている。斬られたはずのタンクが立ち上がり、ガルドに袈裟斬りのトドメをアンコールした。
 グロさを抑えたデフォルメの流血エフェクトが、背中から定期的にぴゅうぴゅうと吹き出している。にも関わらず笑顔でトドメを注文する様子は、ガルドの攻城戦ではよく見る光景だった。
 大剣をもう一度大きく振るい、叩き斬る。タンクは「満足です!」と言いながらグレーに変化した。
 「フロキリのプレイヤーってドMばっかりだよね。リタイアボタンあるのに」
 「……それは自分達にもブーメランな台詞だ」
 喧嘩していた母から「手術までやって一体何が楽しいの! そんな一銭にもならないような、勉強にも役立たないものを!」と怒られた折に、自分がまさか被虐思考なのかと悩んだガルドであった。
 

 「どうだ?」
 「絶好調だね! 会場で度肝を抜けると思うよ~」
 「フッ……逆にならないことを祈ろう」
 「びっくりするような戦法が繰り出されるのも、若干楽しみではあるけど」
 戦闘エリアからギルドホームに戻ったメンバーは、映像ログを見ながら反省会を開いていた。その場には相手をしていた鈴音とロンベルレイド班の即席チームもいる。
 「はぁー、楽しかった……」
 「先輩どうでした? 閣下に両断されて!」
 映像には、ガルドがトドメを二回刺したタンクの最後が映っている。彼女を先輩と呼んだボートウィグが、あからさまに羨ましそうな表情を浮かべながら聞いた。
 彼女は満面の笑みを浮かべ、鈴音の後輩ボートウィグに語りだす。
 「最高だね! 癖になっちゃうのわかるよ。こう、斬るときにさ。私のボディをじっと見つめてからズバァァーっていくじゃない?」
 「そうそう! その熱視線が……あ、そこですそこ!」
 映像を一時停止し、スローに切り替えてガルドの断ちを見いる二人。
  「いいわぁ……でも自分視点の方がいいね」
 「僕、ストックしてますよ! 今日の撮りたてホヤホヤもあります!」
 「やるわね。でも私だってメロさんの『ハイテンション台詞集』集めてるから!」
 「メロさんいっぱい喋るからいいなぁー。あ、閣下ですけど、斬った瞬間、小声で『しぅっ』ていうじゃないですか。息吸う音なのかな。あれセクシーですよね!」
 「え、マニアックだし気付かなかったんだけど」
 「もっ・たい・ない!」
 「あんたがコア過ぎるんだよ」
 鈴音舞踏の二人が話すのをこっそり聞きながら、ガルドは斬後に息が漏れないようぴったり口を締めることを決めた。


 「ほどほどになさいね、みずきさん」
 「……ん」
 「母さん、許可はしましたけど。本当は辞めて欲しいと思ってますからね?」
 「わかってる」
 「海外の件も、母さんは反対です。父さんが良いと言ってしまったからもう何も言いませんけど。まだチケットとっていないんでしょう?」
 「もうとってる」
 「……やめれないの?」
 「行くから」
 「みずきさん!」
 部屋に入り浸って週末を送っていたガルドだが、空腹に耐えかね階下に降りざるを得ないときもある。夕食の時間帯にリビングに入ると、眉間にシワを寄せた母がソファで新聞を読んでいた。深く腰かけない彼女が背筋をぴしっとしてこちらを見ている。居心地が悪い。
 続けて何事かを母が言うのを、ガルドは聞かずにその場で立って過ごした。
 電子社会になった今も紙の新聞は廃れることがない。その匂いと安っぽい触り心地が嫌いでないガルドも、ああしてソファで読むことがある。もちろん姿勢は深く腰掛け、時おり肘当てに頭を乗せて横になって読むことさえあった。後であれを読もうと目で新聞を追い、それをくしゃりと握る母の存在をはたと思い出した。
 そういえば説教中だった。
 ガルド、つまりみずきの年相応の「逃げ癖」は、大部分がこの母から逃げる際に鍛えたものだった。話を聞かないことで彼女の怒りから逃げる。母の注意を忘れることで問題から逃げる。後回しにすることで目先は逃げる。
 母を忘れることで逃げる。今までそうやってストレスにならないようにしてきた。
 「……もう逃げない」
 自分に言い聞かせるように、みずきは呟いた。
 ぴりぴりした空気の二人に、別の声が掛かる。
 「ほらほら、今日は父さんがたっぷり煮込んだ豚の角煮だぞ?」
 「……ん」
 父の優しい声に、みずきは母をさておきダイニングテーブルに向かった。鍋を見ている父は、「スターアニス、入れすぎちゃったな」などと困った顔をしている。
 「ほんと凝り性」
 「たまの趣味なんだ、凝れば凝るほど楽しいよ。ほら、どうだい?」
 「やわらかい」
 「そうかい? よかった……ほら母さんも」
 そうひと切れの角煮の乗った小皿と箸を差し出す父に、小言の続いていた母も折れた。一口つまむ。
 「……ええ、とてもおいしいですよ」
 「母さん、素直に指摘してくれてもいいんだよ?」
 「あなたの料理はいつも美味しいですよ」
 「お店の料理には果敢に指導入れるのに?」
 「そんなことしてません……」
 「料理人はきっと、有りがたいと思ってるよ。文句じゃなくて講評だからね、母さんのは」
 「そうかしら?……香辛料が全面に出すぎなのと、もう少し甘味が強いと美味しくなるかもしれないわ」
 「ははは、やっぱり入れすぎだったかな。それに砂糖少なかったかぁ、今いれても『さしすせそ』で染み込まないからね。次回かな?」
 優しい表情の夫婦の背中を、みずきは内心肩をすくめながら見つめた。父が居ないと母は生きづらいだろう。父はそんな母を昔から支え、尊敬している様子だった。
 我が家の両親は役割が逆転しているようで、一般の様式に納めようとどちらも努力している。そのため齟齬が出ているのだと思う。父より多く稼ぐ上に仕事人間だが、家事全般下手な母。負けじとせっせと働くが、綺麗好きで料理が得意な父。頑固な母、穏和な父。
 みずきは何度も、父が専業主夫で母が稼げばいいのにと思っている。今もそうだ。役割分担も、精神的なこともそうだった。叱る母、それをたしなめ逃げ道になる父。みずきにとって、母的なことは全て父に求めてきた。
 だが、父を大黒柱に据えている母は「父さんの決めたことに従う」といって、責めていたはずがころりと意見を百八十度変える。その矛盾も好きではなかった。
 炊飯器のチャイムが鳴る。
 「ちょうど炊けたね」
 「やる」
 「ありがとう、はい」
 父が食洗機からしゃもじを取り出し渡す。受け取ったみずきは茶碗を手にジャーを開けた。
 ぱかりという開錠の音の後、ほかほかと粒立ちつややかな白米が顔を出す。
 「いいにおい」
 人間、向き不向きがあるものだ。てきぱきと食器類を出し食卓をセットする父を手伝いながら、みずきは母をちらりと見る。立ってはいたものの、素早い父についていけず「座ってていいよ」と促されてしまう始末だった。
 そんな母は、父よりよく稼ぐ。保険にも詳しく、金銭管理にも鋭い。一家の共有貯金管理を任せていたら、いつのまにか何割かを資金にして投信で増やしてきた。父が苦手な「大黒柱役」をこなしている。
 母は嫌いだ。だが、どうしても大嫌いにはなれなかった。
 「晩御飯にしよう」
 家族三人でこのダイニングを囲むのもずいぶん久しぶりな気がする。父の出張前、母の仕事が忙しかった時期より前、いったいいつのことかと思い出し、それが二ヶ月を越える昔だと気付き戦慄する。
 我が家はどれだけすれ違っているのだろう。口をつけた味噌汁は少ししょっぱかった。
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