幽霊令嬢は黒猫王子に懐かれる
私の名前は《クララ=カスタマート》。田舎にひっそりと佇む男爵家の令嬢。
そんな私が今日は、豪奢なシャンデリアが眩しく輝く夜会に出席していた。隣には、私の婚約者である《ライアン=オデレリオ》がいる。
「婚約おめでとうございます、ライアン様、クララ嬢」
聞こえてくるのは、私達の結婚を祝う言葉の数々。その一つ一つが、今の私には胸を締めつける呪いみたいに響く。
「ありがとうございます。ずっとクララに片思いしていたんです。婚約を受け入れてもらえた時は、本当に夢みたいでした」
「まぁ。こんな立派な伯爵令息にそこまで想われるなんて羨ましいわ、クララ」
――羨ましいのなら、代わってほしい。
ライアンが優しいのは、周囲の視線がある時だけ。
だって私は――彼が心から愛している人の、身代わりでしかないのだから。
「おい、少しはまともに婚約者を演じられないのか。辛気臭い顔しやがって……《シャーリィ》とは大違いだな」
私がずっと大切だと思っていた友達の名前。
「俺がお前みたいな『幽霊令嬢』と形だけでも結婚してやるんだ。少しは感謝するんだな」
幽霊令嬢。
誰にも必要とされない。誰の記憶にも残らない。家族には虐げられ、好きな人には利用され、大切だと思っていた友達にも裏切られた。これからもずっと、私なんていないものとして扱われていく。まるで幽霊みたいに。
――そんな私の前に、一匹の黒猫が現れた。
辛い時や寂しい時、いつもそばにいてくれた黒猫さん。まさか、その黒猫が――。
「僕が、助けてあげようか?」
《アレクトロ王国》の第五王子――《エレフィン=アレクトロ》様。
青と金、二つの色を宿した美しい瞳を持つ王子様。
「これからは僕がクララを守ってあげる。言っておくけど……君が、この手を取ったんだからね」
この人が――私が「黒猫さん」と呼んでいたあの猫だったなんて。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
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