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第19話 探索者ジート視点:追跡者
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「爺さん、何者だ?」
赤髪の男は怪訝な顔をしてジートを見る。
相手は一人。こういう状況には慣れているのか、ジートは至って冷静に答える。
「その白い制服を見て、気が付かない探索者はおるまいて。わからん奴はダンジョンのモグリよ」
ハッハ! と、ジートは笑いながらあごヒゲを撫でる。
二人だけの静かな空間に笑い声が響く。
「モグリねえ。俺たちは滅多なことじゃ12層から降りないんだがな。下層の探索者が俺たちのことを知ってるとは思えないが」
「あらら、知らないの君。今はSNSってのが流行ってるんだよ、情報なんてあっという間に駆け巡る」
小馬鹿にするようなジートの言葉には付き合わず、男は続ける。
「御託はいい 。別に俺たちのことを知っているってんならそれはそれで話が早い。俺たちが用があるのは後ろのガキンチョだってことはわかってんだろ、その様子だと」
ジートは肯定の意味を込めて肩をすくめる。
「だったら、そこをどけ。俺たちが用があるのはデュラルハンとの接触者だけだ。引退間近の爺さんに危害を加える気はサラサラない」
「怖い怖い。お前たち、あまりいい噂は聞かんぞ? イカレた連中が集まっとると」
「攻略のためさ。気概のある連中が集まってると言って欲しいね。俺たちはこの国のためを思ってダンジョンの最速攻略を目指している。これだけの規模の異空間だ、最下層にはどれだけのものが眠っているかは想像すらできねえ。だったら、他のやばい奴らには渡せないだろ」
ジートは短くため息をつく。
「そのためなら、多少の犠牲は厭わないというわけか」
「大事の前の小事。うちのリーダーが口酸っぱく言ってるよ。俺も概ね賛成」
「やれやれ。若いと血の気が多くていかんな」
「なんとでも。王……デュラルハンの情報とそこで得た全てを提供してもらってよ、俺たちが有効活用してこそ時代は変わるってわけだ。初心者に独占させておくのはちょいとだるい」
「残念ながら、あの子なら情報をより有効活用できるだろうさ。お前たちよりよっぽどセンスが良い」
「おいおい、こっちはレベルカンストしてるんだぜ、爺さん。ただのノービスと一緒にして欲しくねえな。王を殺すのは俺たちだ」
同時に、二人は武器を抜く。
赤髪の男は腰にぶら下げた剣を。
ジートは背中に据えた弓を。
お互いに、ここから先は何を言おうと戦闘になると理解しているのだ。
「ま、少しは時間稼いでみるか」
「耄碌したか、爺さん。見る目も、戦う相手を選ぶ目も失ったか!」
「爺なりにやりようはあるのよ。私は、純粋にダンジョンを楽しむ若者を応援したい派だからな。血なまぐさいのはもう懲り懲りってわけ」
「まあ、その方が話が早え! キサラのバックアップがないくらいが丁度いい! ハンデ無しでやってやるよ!」
瞬間、お互いがニヤリと笑ったところで、戦いの火蓋が切って落とされる。
赤髪の男は地面を蹴ると、まっすぐにジートの方へと詰め寄る。
その速度は、リトの<突進>をゆうに超える。
レベルによる肉体能力の上昇と、スキルの合わせ技による高速移動!
剣と弓では分が悪い、真っ向勝負では遠距離武器の弓に勝ち目はない。
――なんということは、ジートは当然理解していた。
ジートは男の攻撃を迎え撃つように弓の弦を引くのではなく、懐から一枚の黄みがかった札を取り出す。
「魔術符だと!?」
「<呪封四柱>。供犠、右腕」
瞬間、上空に出現した魔法陣から、四本の柱が降り注ぐ。
それは赤髪の男の周りに突き立つと、無数の鎖を出現させ、男の体を縛り付ける。
「右腕封印による強制拘束……! てめえ、そのナリで”呪術師”か……!」
「弓はフェイク。引っかかるんだよねえ、若いのは特に。見た目で人を判断するなよ、少年」
赤髪の男は怪訝な顔をしてジートを見る。
相手は一人。こういう状況には慣れているのか、ジートは至って冷静に答える。
「その白い制服を見て、気が付かない探索者はおるまいて。わからん奴はダンジョンのモグリよ」
ハッハ! と、ジートは笑いながらあごヒゲを撫でる。
二人だけの静かな空間に笑い声が響く。
「モグリねえ。俺たちは滅多なことじゃ12層から降りないんだがな。下層の探索者が俺たちのことを知ってるとは思えないが」
「あらら、知らないの君。今はSNSってのが流行ってるんだよ、情報なんてあっという間に駆け巡る」
小馬鹿にするようなジートの言葉には付き合わず、男は続ける。
「御託はいい 。別に俺たちのことを知っているってんならそれはそれで話が早い。俺たちが用があるのは後ろのガキンチョだってことはわかってんだろ、その様子だと」
ジートは肯定の意味を込めて肩をすくめる。
「だったら、そこをどけ。俺たちが用があるのはデュラルハンとの接触者だけだ。引退間近の爺さんに危害を加える気はサラサラない」
「怖い怖い。お前たち、あまりいい噂は聞かんぞ? イカレた連中が集まっとると」
「攻略のためさ。気概のある連中が集まってると言って欲しいね。俺たちはこの国のためを思ってダンジョンの最速攻略を目指している。これだけの規模の異空間だ、最下層にはどれだけのものが眠っているかは想像すらできねえ。だったら、他のやばい奴らには渡せないだろ」
ジートは短くため息をつく。
「そのためなら、多少の犠牲は厭わないというわけか」
「大事の前の小事。うちのリーダーが口酸っぱく言ってるよ。俺も概ね賛成」
「やれやれ。若いと血の気が多くていかんな」
「なんとでも。王……デュラルハンの情報とそこで得た全てを提供してもらってよ、俺たちが有効活用してこそ時代は変わるってわけだ。初心者に独占させておくのはちょいとだるい」
「残念ながら、あの子なら情報をより有効活用できるだろうさ。お前たちよりよっぽどセンスが良い」
「おいおい、こっちはレベルカンストしてるんだぜ、爺さん。ただのノービスと一緒にして欲しくねえな。王を殺すのは俺たちだ」
同時に、二人は武器を抜く。
赤髪の男は腰にぶら下げた剣を。
ジートは背中に据えた弓を。
お互いに、ここから先は何を言おうと戦闘になると理解しているのだ。
「ま、少しは時間稼いでみるか」
「耄碌したか、爺さん。見る目も、戦う相手を選ぶ目も失ったか!」
「爺なりにやりようはあるのよ。私は、純粋にダンジョンを楽しむ若者を応援したい派だからな。血なまぐさいのはもう懲り懲りってわけ」
「まあ、その方が話が早え! キサラのバックアップがないくらいが丁度いい! ハンデ無しでやってやるよ!」
瞬間、お互いがニヤリと笑ったところで、戦いの火蓋が切って落とされる。
赤髪の男は地面を蹴ると、まっすぐにジートの方へと詰め寄る。
その速度は、リトの<突進>をゆうに超える。
レベルによる肉体能力の上昇と、スキルの合わせ技による高速移動!
剣と弓では分が悪い、真っ向勝負では遠距離武器の弓に勝ち目はない。
――なんということは、ジートは当然理解していた。
ジートは男の攻撃を迎え撃つように弓の弦を引くのではなく、懐から一枚の黄みがかった札を取り出す。
「魔術符だと!?」
「<呪封四柱>。供犠、右腕」
瞬間、上空に出現した魔法陣から、四本の柱が降り注ぐ。
それは赤髪の男の周りに突き立つと、無数の鎖を出現させ、男の体を縛り付ける。
「右腕封印による強制拘束……! てめえ、そのナリで”呪術師”か……!」
「弓はフェイク。引っかかるんだよねえ、若いのは特に。見た目で人を判断するなよ、少年」
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