おかえり、死んだはずの兄さん
——十年前に死んだ兄が、そこにいた。
祖母の訃報を受け、十年ぶりに故郷の帰守村へ戻ってきた枢信(かなめしん)。
山奥にひっそりと存在するその村には、古くから奇妙な風習が残されていた。
死んだ者が帰ってきても、決して驚いてはいけない。
そして、帰ってきた者に「一緒に帰ろう」と言われても、決して頷いてはいけない。
そんな村で信を出迎えたのは、十年前に死んだはずの兄、燐だった。
「おかえり、信。ずっと待ってたよ」
二十二歳の姿のまま、少しも変わらない兄。
優しく微笑み、昔と同じように信の頭を撫でる燐を、家族も村人たちも当然のように受け入れていた。
けれど、誰も兄の死について語ろうとしない。
やがて信は、村に隠された生贄の風習と、兄が死んだ本当の理由を知ることになる。
そして、兄が生前から胸の奥に隠し続けていた、弟への許されない想いも。
「信……今度こそ、誰にも渡さないから」
兄は本当に帰ってきたのか?
それとも、兄の姿をした別の何かなのか?
逃げ道を失っていく村で、信は兄の優しさと、その裏に潜む恐ろしい執着に囚われていく。
これは、死んでも弟を手放せなかった兄と、そんな兄を置いていけなかった弟の物語――たとえ二度と、朝が来なくなったとしても。
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