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グレーが乗り越えるべき壁
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「……………………なんでこんなことに」
俺とグレーはウルティマという町を目指して、ディルガイナを出発した。
俺はディルガイナから出たことがないため、【テレポート】は使えない。
また、グレーはディルガイナから出たことはあるものの魔力総量が二なので使えるはずもない。
「アレンのペースは遅すぎるからな。こっちの方が効率がいい」
四つん這いになってその背中に俺を乗せているグレーはそう言った。
元々はウルティマまで二日をかけて到着するという計画。
しかし、グレーが俺を背中に乗せてまるで本物の狼のように走り始めたので、たったの五時間程度でウルティマが見え始めた。
馬車やもしかしたら二次形態のドラと同じスピードぐらい出ていたのではなかろうか。
そして、俺たちはウルティマに到着する。
ウルティマは俺が住んでいた集落を彷彿させるような木材などで出来ている小さな町だった。
右奥には金色に輝く宮殿、魔獣の王都であるストレイドが見えた。
すると、門兵であろう一体の魔獣が俺たちの前に立ちはだかる。
「おい! 貴様ら何者だ!」
俺はグレーの背中から降り、地に足をつける。
そして、その声を荒げている狼の魔獣に視線を移した。
四足歩行の狼は口に槍をくわえてその刃をこちらに向けている。
(もしかしたら、早速戦闘に…………)
本当なら話し合いだけで終了させたかったのだが、やはり魔王の言う通りそう簡単にはいかないのかもしれない。
俺は気を引き締め、腰の鞘に手を駆けようとした時、
「俺だ。親父に会いに来た」
グレーがゆっくりと立ち上がり、俺の前に立つ。
すると、門兵の男性はすぐに構えを解き、中へ入る道を開けた。
「申し訳ございませんでした。グレー様。どうぞお通りください」
その言葉を聞くとグレーはずかずかと町の中へと入っていった。
俺も門兵に軽く頭を下げてそのグレーの後ろについていく。
「……………………そういうことね」
俺はグレーに聞こえないよう独り言のように言う。
この魔獣たちはグレーの同族である餓狼族だろう。
そして、そのグレーの険しい表情からも分かるように何かしらのしがらみがある。そう考えていいだろう。
町の中にはいたるところに餓狼族が見え、魔族と同じように普通に生活をしていた。
少し野性的ではあるものの、魔族と共存するのには何の障害もないだろう。
そして、グレーはこの町の最奥にある、魔王城と比べれば城とは言えないものの、この町の中では城のような場所にグレーと俺は辿り着く。
「「お帰りなさいませ! 若!」」
「…………ああ。ただいま」
その城の警備員がグレーに向かって深く頭を下げる。
しかし、グレーはその人たちの方を見向きもせず、ぶっきらぼうに一言だけ返した。
ズカズカと城の奥へと入っていき、一つの巨大な部屋にたどり着いた。
「おお! 帰ってきたか! バカ息子!」
一番奥の部屋に入ると、そこには大きく寝そべっている巨大な喰狼族がいた。
そしてその両隣に強靭な餓狼族が二人。
グレーはその喰狼族を睨みつけながら怒りを心のうちに沈め淡々と言う。
「単刀直入に言う。魔王様の邪魔をするな」
「はん? 魔王様だと? あんなガリ雑魚魔族に様なんてつけてんのかおめぇ?」
「それはあの方が寛大だからだ。調子乗ってると親父が食われるぞ」
グレーは煽るように言ったつもりはないのだろう。
本心から忠告して言った言葉だ。
しかし、その群れのボスであろう喰狼族はゆっくりと四足歩行になるため立ち上がり、こちらに向かって殺気を飛ばしてくる。
「調子乗んなよ! 不良品が! 仕方なく名前を授けてやった恩を忘れたのか!」
唾をまき散らしながら喰狼族グレーに吠える。
しかし、グレーは全くひるむことなく言い返す。
「調子に乗ってんのは親父だ。八魔獣のくせに外の世界を知ろうとしない。だから母さんだって――」
「おい。不良品。そこまで言うなら面かせ」
「ああ。望むところだ」
二人の間で見えないはずの電撃をバチバチとぶつけ合っているのが分かる。
俺は喰狼族の後ろにいた執事のようなる餓狼族にグレーとは別の場所へと案内される。
俺はそれに素直に従って執事の後ろをついていった。
***********************
「懐かしいだろぉ? お前がいつもボコボコにやられてサーナに泣きじゃくってた場所だぞ」
「……………………俺だって七年、何もしてこなかったわけじゃない。親父が侮った魔族の力、見せてやる」
俺と喰狼族は学園にある訓練場のようなドーム状の建物の中心に立つ。
アレンはどこかに連れて行かれたようだが、族長の息子である俺の連れだ。
そこまで乱暴には扱われないはず。もしかしたら、この戦いを二階からで見ているかもしれない。
二階にはたくさんの餓狼族が見物に来ている。
「じゃあ始めるか。不良品」
「俺の行動が正しいって証明してやるよ!」
こうして、俺にとっては何十回目の親子喧嘩が始まった。
俺とグレーはウルティマという町を目指して、ディルガイナを出発した。
俺はディルガイナから出たことがないため、【テレポート】は使えない。
また、グレーはディルガイナから出たことはあるものの魔力総量が二なので使えるはずもない。
「アレンのペースは遅すぎるからな。こっちの方が効率がいい」
四つん這いになってその背中に俺を乗せているグレーはそう言った。
元々はウルティマまで二日をかけて到着するという計画。
しかし、グレーが俺を背中に乗せてまるで本物の狼のように走り始めたので、たったの五時間程度でウルティマが見え始めた。
馬車やもしかしたら二次形態のドラと同じスピードぐらい出ていたのではなかろうか。
そして、俺たちはウルティマに到着する。
ウルティマは俺が住んでいた集落を彷彿させるような木材などで出来ている小さな町だった。
右奥には金色に輝く宮殿、魔獣の王都であるストレイドが見えた。
すると、門兵であろう一体の魔獣が俺たちの前に立ちはだかる。
「おい! 貴様ら何者だ!」
俺はグレーの背中から降り、地に足をつける。
そして、その声を荒げている狼の魔獣に視線を移した。
四足歩行の狼は口に槍をくわえてその刃をこちらに向けている。
(もしかしたら、早速戦闘に…………)
本当なら話し合いだけで終了させたかったのだが、やはり魔王の言う通りそう簡単にはいかないのかもしれない。
俺は気を引き締め、腰の鞘に手を駆けようとした時、
「俺だ。親父に会いに来た」
グレーがゆっくりと立ち上がり、俺の前に立つ。
すると、門兵の男性はすぐに構えを解き、中へ入る道を開けた。
「申し訳ございませんでした。グレー様。どうぞお通りください」
その言葉を聞くとグレーはずかずかと町の中へと入っていった。
俺も門兵に軽く頭を下げてそのグレーの後ろについていく。
「……………………そういうことね」
俺はグレーに聞こえないよう独り言のように言う。
この魔獣たちはグレーの同族である餓狼族だろう。
そして、そのグレーの険しい表情からも分かるように何かしらのしがらみがある。そう考えていいだろう。
町の中にはいたるところに餓狼族が見え、魔族と同じように普通に生活をしていた。
少し野性的ではあるものの、魔族と共存するのには何の障害もないだろう。
そして、グレーはこの町の最奥にある、魔王城と比べれば城とは言えないものの、この町の中では城のような場所にグレーと俺は辿り着く。
「「お帰りなさいませ! 若!」」
「…………ああ。ただいま」
その城の警備員がグレーに向かって深く頭を下げる。
しかし、グレーはその人たちの方を見向きもせず、ぶっきらぼうに一言だけ返した。
ズカズカと城の奥へと入っていき、一つの巨大な部屋にたどり着いた。
「おお! 帰ってきたか! バカ息子!」
一番奥の部屋に入ると、そこには大きく寝そべっている巨大な喰狼族がいた。
そしてその両隣に強靭な餓狼族が二人。
グレーはその喰狼族を睨みつけながら怒りを心のうちに沈め淡々と言う。
「単刀直入に言う。魔王様の邪魔をするな」
「はん? 魔王様だと? あんなガリ雑魚魔族に様なんてつけてんのかおめぇ?」
「それはあの方が寛大だからだ。調子乗ってると親父が食われるぞ」
グレーは煽るように言ったつもりはないのだろう。
本心から忠告して言った言葉だ。
しかし、その群れのボスであろう喰狼族はゆっくりと四足歩行になるため立ち上がり、こちらに向かって殺気を飛ばしてくる。
「調子乗んなよ! 不良品が! 仕方なく名前を授けてやった恩を忘れたのか!」
唾をまき散らしながら喰狼族グレーに吠える。
しかし、グレーは全くひるむことなく言い返す。
「調子に乗ってんのは親父だ。八魔獣のくせに外の世界を知ろうとしない。だから母さんだって――」
「おい。不良品。そこまで言うなら面かせ」
「ああ。望むところだ」
二人の間で見えないはずの電撃をバチバチとぶつけ合っているのが分かる。
俺は喰狼族の後ろにいた執事のようなる餓狼族にグレーとは別の場所へと案内される。
俺はそれに素直に従って執事の後ろをついていった。
***********************
「懐かしいだろぉ? お前がいつもボコボコにやられてサーナに泣きじゃくってた場所だぞ」
「……………………俺だって七年、何もしてこなかったわけじゃない。親父が侮った魔族の力、見せてやる」
俺と喰狼族は学園にある訓練場のようなドーム状の建物の中心に立つ。
アレンはどこかに連れて行かれたようだが、族長の息子である俺の連れだ。
そこまで乱暴には扱われないはず。もしかしたら、この戦いを二階からで見ているかもしれない。
二階にはたくさんの餓狼族が見物に来ている。
「じゃあ始めるか。不良品」
「俺の行動が正しいって証明してやるよ!」
こうして、俺にとっては何十回目の親子喧嘩が始まった。
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