上 下
37 / 90
監禁十日目

監禁十日目⑤ 生殖

しおりを挟む
 早く楽になりたい。早く楽にしてやりたい。早く、早く、早く。楽に……
 紅子は再び、優夜の乳首を舐め、反対側を指で撫で始めた。脳から快楽の何かが分泌されたかのように、頭が真っ白になっていく。何も考えられない。

 顔を上げた紅子の頬は紅潮していた。
「もう……ダメ。我慢できない」
 そう言うと、優夜に股がり、優夜のペニスを自分へと挿入した。


 コンドームも、愛もないセックス。それは優夜にとって初めてのことであった。それがまさかこんな地下室に監禁され、見知らぬ痴女の女にレイプ紛いにやられることになるなんて……

「ああん! 気持ちいい!」
 先程より強く、高く、紅子の声が部屋に木霊した。紅子は騎乗位の姿勢で、動けない優夜の代わりに腰を動かし続けた。

 頭の中が白く染まっていく。まるで、雪が降り積もり、全てを覆い隠してしまうように。紅子が支える手の片方を優夜の首に当て、力を入れた。

「ああ! ああんっ!」
 紅子は我を忘れたように叫び続けている。そして、支えてた手を片方放し、その手を優夜の首に当てた。そこに力が入る。
 気道が塞がれ、無意識に身体に力が入る。逃れようと暴れると、紅子の喘ぎ声は更に強まった。
「なんて、気持ちいいんでしょう」
 次第に薄くなる脳の酸素。頭の中は更に白く、ただ白くなっていく。もうダメだ。

 染まる白。そして、はぁはぁと息を切らしながら、二人は、その動きを止めた。心臓と、優夜のペニスだけが脈を打っていた。紅子は精子を絞り出すように、射精してからも腰を動かした。
 ──イッてしまった。しかも、生で……

 次第に晴れてきた思考。その雪融け水はパニックに近い感情の洪水となって優夜を襲った。

 ──生で?
 ──妊娠は?
 ──病気は?
 ──責任は?

 冷静さがまだ戻らない。
 ただ感情が、次々に浮かび、心に刺さるだけであった。

 紅子は優夜からおりると、満足そうに言った。
「はぁ……はぁ……気持ち良かったです」
「な、なんでこんなことするんだよ。これじゃ、レイプじゃないか」

「……優夜様。セックスなんて、誰もがしている行為じゃありませんか。食事と何が違いますか?セックスは高尚なものではなく、ただの生殖行為です」
「そんなわけないだろ!」
「いえ。ただそれだけです。そこに人間が意味を持たせているだけ。野生の動物が、そんなに称えながらセックスしていますか? 野生動物にとってセックスとは生存本能なのです」


 何を言いたいのか理解できない。ただ、間違いない事実は今俺は紅子の中で果てたということ、それだけだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貧弱の英雄

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:42

雨上がりの虹と

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,364pt お気に入り:33

最推しの義兄を愛でるため、長生きします!

BL / 連載中 24h.ポイント:28,043pt お気に入り:12,904

俺もクズだが悪いのはお前らだ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:6,113

お飾り王妃の死後~王の後悔~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,789pt お気に入り:7,306

ヴァレン兄さん、ねじが余ってます 2

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:47

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:32,486pt お気に入り:11,559

処理中です...