嫁入り道具はこの身だけ。されど、心は渡せませぬ。

 その日、出かけなければ良かった―――

 私は何度も後悔しては、嫁入りの道を歩き、唯一の付き人坂本龍之介に泣きついてしまう。
 だって、龍之介は私の想い人。彼だってきっと―――

 貧しいの小国の姫として生まれた主人公のやえは、町を歩いていた大名の高坂右衛門とぶつかってしまい、無礼をお詫びしたやえを好色の右衛門は許さず、やえを嫁にすると言ってきた。やえの家は、身分が上である右衛門の婚約の申し出を断ることができず、やえを差し出すことになった。本来であれば、嫁入り道具を用意して嫁ぐべきだが、武士に給料を払うためそんなお金さえ用意することもできず、嫁入り駕籠に乗って嫁入りすることもできず、やえは龍之介をお供にするようにお願いした。
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