月面に、金木犀は咲かない
「月面基地に、四平方メートルの庭を設計せよ」
全国高校未来居住デザインコンテストに挑む高校生・多々良実景は、食料、酸素、水、電力……すべてを数字で考えた“効率的な庭”を作り上げる。
だが審査員から投げかけられたのは、たった一つの問いだった。
「あなたは、毎日ここへ来たいと思いますか?」
役に立たないものは必要ない。
そう信じていた実景の考えを変えたのは、校庭に咲く小さなキンモクセイと、三十年以上、誰にも知られずその開花を記録し続けてきた一人の校務員だった。
花言葉は「謙虚」、そして「初恋」。
月には四季がない。
それでも、人が月で暮らすなら、季節を待つ場所が必要なのではないか。
効率では測れない“人間が生きるために必要なもの”を探しながら、少女は忘れていた自分自身の夢と向き合っていく。
これは、月に花を咲かせる物語ではない。
いつか月で暮らす誰かへ、地球の秋を届けようとする物語。
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