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技を伝授した
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ジョージに変化が出て来たのは、いつぐらいからだったろうか。思い起こしてみると、エリーゼが侍女になってからだったように思う。
いろいろと思い出してみたのだが、ジョージから身に覚えのない叱責を受けるようになった。最初に侍女虐めをするな、と言われて、次に妃を虐めるなと言われて、それから、後宮の門の衛兵と話すなと言われて、あと何だったか?
紛失事件も多かった。ジョージからもらった指輪や腕輪をなくしたし、ジョージのために刺繍したハンカチがなくなったり、養蚕工場の売上金がごっそりなくなった事件もあった。
でも、正直、ジョージなんてもうどうでもいいし、マリアンヌなんかはもっとどうでもいい。後宮の生活はつまらない。六人も妻がいて、毎年のように妻を入れ替える浮気男でDVな野郎と、女だらけの場所で生活して、いったい何が楽しいのか。
(ここからうまく抜けられないかな)
私はどのようすれば、後宮から後腐れなく抜けられるかを考えるようになっていた。
侍女の休憩室で色々と考えていると、メリッサが入って来た。
「エリーゼ、マリアンヌ様がお呼びよ。私にお前が手を出したことを報告しておいたわ。せいぜいしぼられるといいわ。うぐっ」
私はメリッサに蹴りを入れた。
「お前のような役立たずをマリアンヌが大切にするとでも思っているの? マリアンヌよりも、いつもそばにいる私に媚びを売っておいた方がいいわよ。もう少し頭を使わないと、あなた、水死体になるわよ」
実際に水死体になるのだから、主人の選択を誤らないようにした方がいいと思う。
私は真珠殿に向かった。
寝殿に入ると、マリアンヌが少しイラついた様子で、私に噛み付いてきた。
「お姉様、メリッサを叩きのめしたようね。どういうつもり!?」
「はい、任務の邪魔をするものですから」
「え? 邪魔を?」
「能力の低いものは、能力の高いものの足を引っ張るものです。私がいい仕事をして、王妃様の信頼を得る作業をメリッサは邪魔するのですよ」
「メリッサからはお姉様の作業は全てメリッサがやっていると報告を受けているわよ」
「私に家事が出来るわけございません。メリッサの方が上手ですので、メリッサが私の代わりに仕事した方が、王妃様からの覚えがよくなります」
マリアンヌが図星を突かれた表情になった。
「……それはそうね。お姉様に家事は無理よね」
日本の知識で料理はいけそうな気がするが、掃除機も洗濯機もない世界での家事は、私には本当に無理だ。
「それに、メリッサは性格が悪く、王妃様が可愛がっておられるローズやカレンにも理不尽な暴力を振るいます。メリッサをやっつけると、ローズやカレンから慕われ、ひいては、王妃様から信頼を得やすくなります。メリッサの使い方としては間違っていないと思います」
「分かったわ。それで、何か情報を得られたの?」
「はい。陛下の性的趣向を調べて参りました。今夜の夜伽にて早速お試しください」
私はジョージが悦ぶいくつかの十八禁技をマリアンヌに説明した。マリアンヌは顔を赤らめながらも、真剣に聞いて、メモまで取っている。
「どうでしょうか。メリッサの邪魔がなければ、もっと有用な情報をお持ちできます」
「ま、まあ、そうかもね。分かったわ。メリッサはお姉様の好きなようにしていいわ」
(よし、メリッサはこれで片付いたわ。次は王妃にジョージを諦めてもらおう)
「ありがとうございます。それでは失礼します」
私はジョージに愛想を尽かしているので、ジョージがマリアンヌと仲良くなるのは一向に構わないのだが、王妃は苦しむことになるだろう。だが、私のように目が覚めるはずだ。
私はせっかく手に入れた第二の人生を楽しみたい。ジョージとかマリアンヌとかどうでもいいし、後宮などという異様な世界で一生を終えるようなことは絶対にしたくはない。
ただ、王妃のことが気がかりだ。一人残していけば、殺されてしまうだろう。そこは何とかしてあげたいと思った。
いろいろと思い出してみたのだが、ジョージから身に覚えのない叱責を受けるようになった。最初に侍女虐めをするな、と言われて、次に妃を虐めるなと言われて、それから、後宮の門の衛兵と話すなと言われて、あと何だったか?
紛失事件も多かった。ジョージからもらった指輪や腕輪をなくしたし、ジョージのために刺繍したハンカチがなくなったり、養蚕工場の売上金がごっそりなくなった事件もあった。
でも、正直、ジョージなんてもうどうでもいいし、マリアンヌなんかはもっとどうでもいい。後宮の生活はつまらない。六人も妻がいて、毎年のように妻を入れ替える浮気男でDVな野郎と、女だらけの場所で生活して、いったい何が楽しいのか。
(ここからうまく抜けられないかな)
私はどのようすれば、後宮から後腐れなく抜けられるかを考えるようになっていた。
侍女の休憩室で色々と考えていると、メリッサが入って来た。
「エリーゼ、マリアンヌ様がお呼びよ。私にお前が手を出したことを報告しておいたわ。せいぜいしぼられるといいわ。うぐっ」
私はメリッサに蹴りを入れた。
「お前のような役立たずをマリアンヌが大切にするとでも思っているの? マリアンヌよりも、いつもそばにいる私に媚びを売っておいた方がいいわよ。もう少し頭を使わないと、あなた、水死体になるわよ」
実際に水死体になるのだから、主人の選択を誤らないようにした方がいいと思う。
私は真珠殿に向かった。
寝殿に入ると、マリアンヌが少しイラついた様子で、私に噛み付いてきた。
「お姉様、メリッサを叩きのめしたようね。どういうつもり!?」
「はい、任務の邪魔をするものですから」
「え? 邪魔を?」
「能力の低いものは、能力の高いものの足を引っ張るものです。私がいい仕事をして、王妃様の信頼を得る作業をメリッサは邪魔するのですよ」
「メリッサからはお姉様の作業は全てメリッサがやっていると報告を受けているわよ」
「私に家事が出来るわけございません。メリッサの方が上手ですので、メリッサが私の代わりに仕事した方が、王妃様からの覚えがよくなります」
マリアンヌが図星を突かれた表情になった。
「……それはそうね。お姉様に家事は無理よね」
日本の知識で料理はいけそうな気がするが、掃除機も洗濯機もない世界での家事は、私には本当に無理だ。
「それに、メリッサは性格が悪く、王妃様が可愛がっておられるローズやカレンにも理不尽な暴力を振るいます。メリッサをやっつけると、ローズやカレンから慕われ、ひいては、王妃様から信頼を得やすくなります。メリッサの使い方としては間違っていないと思います」
「分かったわ。それで、何か情報を得られたの?」
「はい。陛下の性的趣向を調べて参りました。今夜の夜伽にて早速お試しください」
私はジョージが悦ぶいくつかの十八禁技をマリアンヌに説明した。マリアンヌは顔を赤らめながらも、真剣に聞いて、メモまで取っている。
「どうでしょうか。メリッサの邪魔がなければ、もっと有用な情報をお持ちできます」
「ま、まあ、そうかもね。分かったわ。メリッサはお姉様の好きなようにしていいわ」
(よし、メリッサはこれで片付いたわ。次は王妃にジョージを諦めてもらおう)
「ありがとうございます。それでは失礼します」
私はジョージに愛想を尽かしているので、ジョージがマリアンヌと仲良くなるのは一向に構わないのだが、王妃は苦しむことになるだろう。だが、私のように目が覚めるはずだ。
私はせっかく手に入れた第二の人生を楽しみたい。ジョージとかマリアンヌとかどうでもいいし、後宮などという異様な世界で一生を終えるようなことは絶対にしたくはない。
ただ、王妃のことが気がかりだ。一人残していけば、殺されてしまうだろう。そこは何とかしてあげたいと思った。
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