Company 第一部 霧の港

第一部「霧の港」
1866年、長崎。坂本龍馬は波止場で、消えた英国商船の積荷目録に赤い印を見つける。港湾図、各藩の財政情報、石炭の補給地点——表向きは商いの記録だが、何かが引っかかった。
石炭商の娘、汐は言った。「英国人は、銃より先に港を見ます」
龍馬は笑って流した。
やがて近郊の港が死に始める。保険の査定が変わり、修繕が止まり、借金が積もり、土地が外国商社に渡る。汐の父、徳蔵は燃える倉庫を前に座り込んだまま、動かなかった。
東インド会社の男、アレクサンダー・グレイは言った。「支配ではない。効率化です」
龍馬は反論できなかった。だが体だけは理解していた。
「……戦をしとるんじゃない」「刀も銃も要らん。帳簿と保険と、航路図があれば、国が取れる」
幕末劇が、経済・情報戦へと変貌する。
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