側妃への恋文まで書かされたので、代筆は今日でやめます
「アデリーヌ。これを、いつもの調子で頼む」
差し出された紙にはこう書いてございました。――側妃に迎えたい令嬢へ贈る、愛の手紙の下書き。
わたくし、七年間、殿下のお手紙をすべて代筆してまいりましたの。詫び状も、外交の親書も、お礼状も。筆跡も言い回しも、殿下ご本人よりずっと殿下らしく書けますのよ。
ですが、これは。
「――かしこまりました。これで、最後にいたしますわ」
その晩、婚約は破棄されましたわ。おめでとうございます。
翌朝から、殿下はご自分でお書きになりましたの。誤字も、敬称の間違いも、そのままに。隣国の陛下のお名前を、一文字違えて。
そして側妃候補のあの方は、やがて気づいてしまわれますのよ。ご自分が恋をしていたのは、手紙の中の、いない人だったということに。
わたくしは、何もしておりませんわ。だって、あれは――わたくしの言葉では、ございませんもの。
差し出された紙にはこう書いてございました。――側妃に迎えたい令嬢へ贈る、愛の手紙の下書き。
わたくし、七年間、殿下のお手紙をすべて代筆してまいりましたの。詫び状も、外交の親書も、お礼状も。筆跡も言い回しも、殿下ご本人よりずっと殿下らしく書けますのよ。
ですが、これは。
「――かしこまりました。これで、最後にいたしますわ」
その晩、婚約は破棄されましたわ。おめでとうございます。
翌朝から、殿下はご自分でお書きになりましたの。誤字も、敬称の間違いも、そのままに。隣国の陛下のお名前を、一文字違えて。
そして側妃候補のあの方は、やがて気づいてしまわれますのよ。ご自分が恋をしていたのは、手紙の中の、いない人だったということに。
わたくしは、何もしておりませんわ。だって、あれは――わたくしの言葉では、ございませんもの。
あなたにおすすめの小説
伯爵様から愛妾を迎えるから出て行けと言われたので喜んで離縁しました!
伯爵夫人であるヴァランティーヌは、夫のエリファスから冷遇され、家政婦のように扱われる日々を送っていた。ある日、エリファスは美しい女性クロティルドを本邸に連れ帰り、「彼女を愛妾にする。お前との婚姻は終わりだ」と冷酷に離縁を言い渡す。ヴァランティーヌは引き留めることもせず、静かにそれを受け入れて館を去った。
自由の身となった彼女を待っていたのは、以前から彼女の類まれなる意匠の才能と清らかな心を慕っていた、隣国の若き公爵カジミールだった。カジミールの領地で温かく迎えられ、本来の輝きを取り戻していくヴァランティーヌ。
一方、彼女を失った伯爵邸は、ヴァランティーヌの細やかな差配がなくなったことで急速に機能不全に陥り、没落の一途をたどる。激しい後悔に苛まれたエリファスは彼女を連れ戻そうとするが、そこには驚くべき真実と、完璧なまでの「ざまぁ」が待ち受けていた。
【完結】子が出来ない事を理由に侯爵家から離縁されたので、再婚相手の公爵家で頑張ります。
侯爵夫人のソフィーは、子が出来ない事を理由に夫である、アーデルハイト・シュタイナー侯爵から離縁を言い渡されてしまう。
ソフィーが実家のミルフォード伯爵家に戻ったのも束の間、ソフィーにミハエル・ブルーローズ公爵から婚姻の申し込みが来る。
しかしそれは『契約結婚』だった。
ミハエルはソフィーの自由と安全を保障し、ソフィーはブルーローズ公爵家の為に仕事をする。
契約結婚を受け入れたソフィーは自身の能力を存分に発揮し、公爵領の発展に貢献して行くのだった。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
妻は病弱だと夫が言いふらしていたので、お言葉に甘えて療養に出かけます 〜あなたがついた三つの嘘、ひとつ残らず叶えて差し上げますね〜
伯爵夫人ミレイユは、結婚してから一度も夜会に出たことがない。夫のディートリヒが「妻は病弱で外に出られない」と社交界に言いふらしていたからだ。本当のミレイユは風邪ひとつ引かない体で、ただ屋敷に閉じ込められていただけだった。
夫の隣で夜会に出ているのは従妹のカミラ。夫は彼女に「妻とはもうすぐ離縁する」と囁き、周囲には「妻は浪費家で困っている」とこぼしていた。
そのすべてを知った日、ミレイユは静かに微笑んだ。
「旦那様がそうおっしゃるなら、お言葉に甘えて療養に参りますね」
向かった先は王家の保養地。そこを治める公爵ルシアンは、診察を終えて首をかしげた。
「どこも悪くありませんね。悪いのは、あなたを閉じ込めていた場所のほうだ」
病弱なはずの伯爵夫人は、保養地で誰より元気に過ごす。浪費家のはずの伯爵夫人は、盛大に「散財」を始める。ただしその使い道は、夫が隠していたある書類の買い集めだった。
嘘がひとつ本当になるたびに、夫の言葉は社交界で信用を失っていく。そして最後に残った嘘は「もうすぐ離縁する」。
旦那様、あなたがついた三つの嘘、ひとつ残らず叶えて差し上げます。
私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。
でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。
誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。
両親はひたすらに妹をスルー。
「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」
「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」
無理よ。
だって私、大公様の妻になるんだもの。
大忙しよ。
終わりにします
「終わりにします」
その言葉とともに、侯爵令嬢シルヴィアは毒を飲んだ。
婚約者は妹を選び、父は妹だけを信じた。
誰にも必要とされなかった人生を終えたはずなのに、目を覚ますと三か月前へと時間は巻き戻っていた。
もう、誰かに愛されるためだけに生きるのはやめよう。
そう決めた彼女は、静かに運命を書き換えていく。
これは、一度死んだ少女が、自分自身の人生を取り戻すための物語。
『君は強いから大丈夫』と婚約者に言われたので家を出ました。今さら探しに来ても遅いです
「君は強いから大丈夫だろ?」
隣領から来た貴族の娘を紹介した婚約者は、私にそう言った。
平民ながら魔力が多く、魔法学校に特待生として通っていた私は、在学中に領主の息子に見初められた。
「君の力なら、この街を守れる。一緒に守ろう」
そう言われて彼の領地に来て、婚約した。
それから数年。
街にはほとんど魔物が近づかなくなり、平和な日々が続いていた。
――あの日までは。
隣領から来た貴族の娘を紹介した婚約者は、私にこう言った。
「君は強いから大丈夫だろ?」
その言葉を聞いた瞬間、私はようやく気づく。
彼にとって私は、何だったのか。
だから私は、静かに街を出ることにした。
……今さら探しに来ても遅いです。