霧の王と四季たち

『世界がひと夏で終わるなら』の続編のようなものです。

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霧の王は夏が一等好きで




夏が来れば嬉しそうに



その喉で声を奏でる。




秋が来れば紅葉に戯れ



深い渓谷の水で喉を潤す。



透明で銀色に光をたたえる水は



鏡のように染まった山を写した。



水を飲んでそして、



霧の王は霧を吐いた。




白く白く凍って、雪が降る。



夏とはまた違う微睡みの中に



春の夢を見て、



時折雪原を駆け




春が来れば尾根を巡り



その鼻先を濡らす露に笑う。



そして、冷たい梅雨が来て




それが明ければ、



また夏が来る。



そうしてこの世界は回っていく。



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