【完結】魔王城、労働基準法違反につき
「これ、労働基準法違反です」
過労死した人事総務担当の佐倉静香、三十四歳。
死後に案内された職業安定所で紹介された求人は、たった一件だった。
勤務地:魔王城。
勤務時間:応相談。
休日:応相談。
離職率:九割二分。
覚悟を決めて赴任した城で彼女を出迎えたのは、自ら門を開けに来た魔王ヴァルドその人だった。
目の下には深い隈。三日は寝ていない顔で、彼はこう言った。
「門番をしていて、すみません」
魔王は暴君ではなかった。
断れない。抱え込む。全部自分でやろうとする。
そのせいで有能な者から順に辞めていき、城には十二人しか残っていなかった。
——なるほど、これは制度の問題だ。
就業規則を作る。シフトを組む。人員配置を見直す。予算を握って離さない宰相を、数字で追い詰める。
魔王軍再建は、剣ではなく書類ではじまった。
これは、世界を救う物語ではない。
働く人を、定時で帰らせる物語である。
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目の下には深い隈。三日は寝ていない顔で、彼はこう言った。
「門番をしていて、すみません」
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断れない。抱え込む。全部自分でやろうとする。
そのせいで有能な者から順に辞めていき、城には十二人しか残っていなかった。
——なるほど、これは制度の問題だ。
就業規則を作る。シフトを組む。人員配置を見直す。予算を握って離さない宰相を、数字で追い詰める。
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