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ルージュは伯爵家へ嫁いで数年、愛娘リズと共に穏やかで幸せな日々を過ごしていた。 しかし夫ハワードは、「レオンの誕生日の相談だ」と言い、幼馴染エレノアとの関わりを深めていく。 実の娘であるリズよりも、幼馴染の息子レオンを気にかける夫の姿に、ルージュの心には少しずつ寂しさが積もっていった。 家族の健康を願い、薬を手作りするルージュ。その努力はハワードや義両親から「地味な作業」と軽く扱われる。 そんなルージュを離婚へと決意させる、決定的な出来事が起こる――。
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「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」 竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。 ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。 夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。 竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。 離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。 三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。 怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。 そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
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「聖女エルシーを、国外追放とする」 罪状は、真冬の夜に許可なく子どもを治したこと。追放に賛同する署名は、四十三家。 わたしは弁明のかわりに、署名簿をじっと見つめました。 「お名前を、覚えておこうと思いまして」 誰も知らないことがひとつあります。聖女の祝福は「渡したら終わり」ではなく、細い糸でわたしと繋がり続けている。——手繰り寄せれば、戻るのです。 退去の期限は三十日。回るには、じゅうぶんですわ。 豊穣も、商運も、健守も。十年分の台帳と照らし合わせて、署名した家から順番に、一軒ずつ。 「ごきげんよう。祝福を、返していただきに参りました」 ただし——子どもと病人にかかっているものは、一件も引きません。回収とは、そういうふうに、するものですから。
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