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16.なんだこいつ!
しおりを挟む怒鳴りつけてやると、ゲキファは、そう言う意味じゃないんだけど、とつぶやいた。
相手の話したいことが、表立って言えないようなことであることくらい、俺だって承知の上だ。だから、わざわざこうしてこんな人通りの少ない路地へ来てやったんだ。
俺がこれだけ気を遣ってやってるのに、何をもたもたしているんだ!!
どうせ父親に恨みを持つ俺を排除しに来たんだろう。喧嘩がしたいなら早く言え! 俺が満足するまで付き合ってやる。
けれどそいつは、俺から目をそらして、気まずそうに言った。
「……ごめん。強引な真似して……」
「謝る暇があるなら話せ。どういうつもりだ?」
「……俺…………ヴァデスのこと、ずっと好きだったんだ」
「そんなことか」
だろうと思った。
やはり喧嘩か。悪いがここで引き下がってやるつもりはない。俺は貴様らをいいように利用して研究所とツナ缶を……
…………いや、待て。何て言った? 俺の予想とは、まるで違うことを言わなかったか?
俺はてっきり、父のためお前を排除する、とか言い出すのかと思ったのに。
好き??
そいつは、俺の手を取り、ぎゅーーっと握る。
「そ、そんなことじゃないっ……! 俺、ずっと、ヴァデスが好きだった」
「……何を言っているんだ? 俺を好き?? たいして話したこともないのに?」
「話したことなくないんだけど……俺が話しても、ヴァデスはあんまり聞いてなかっただけで……」
「お前が俺のツナ缶をジロジロ見ていたからだ。そんなに俺のツナ缶が羨ましかったのか?」
「……俺はツナ缶なんて見てないよ。ヴァデスを見ていたんだ」
「……さっきから何を言っているんだ? 俺は男だぞ。男が好きなら、他へ行け。俺は恋愛など、全く興味がない。あるのはツナ缶と旨いフライドチキンだけだ」
「…………知ってる。ヴァデスが、学園に入り込もうとしていたのも」
「……なぜそれを知っている??」
おかしいぞ。俺は俺の計画を、誰にも話したことがないのに。この男が知っているはずがない。
追求すると、ゲキファは顔をそむけてしまう。
こいつ……
「貴様……俺を見張っていたな!?」
「えっ……!? ち、違う! ヴァデスが父を恨んでるみたいだったから……声をかけづらくて……」
「やはりか……そんなことを言って油断させ、父親の敵である俺を排除する気だろう!」
「違うっっ!! 本当にっ……俺はヴァデスを」
「しつこいぞ!! 貴様のような未熟なものが、俺を騙せると思うな!!」
俺は、自らの体に魔法をかけて、夜空に飛び上がった。付き合っていられるか!
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