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17.どんな状況でも
しおりを挟む一体どうなっているんだ!!
こんな話は聞いていない。王子は信頼厚い人格者、伯爵の息子は将来を期待され、それに応える実力を持った将来有望な後継者。そう聞いていたのに。なんだあれは!!
学園に戻った俺は、怒りのあまり、激しい音を立てて、学長室の扉を開いていた。
「学園長!!」
怒鳴り込んだ俺を、学園長はニヤニヤしながら迎える。
「もう気づいたか。ヴァデス」
こいつ……俺が何でここに来たのか気づいている。最初から、俺があの二人のところへ行くことまで計算尽くで、俺を野放しにしたんだ。
くそ……またはめられた!
「どういうつもりだ……学園長」
「落ち着け。座って話をしようじゃないか」
「ふざけるな!! なんだあのクズどもは!! ゴミしかいないじゃないか!!」
「だからお前を入れたんじゃないか」
「……俺にあのクズどもの相手をさせる気か?」
「落ち着いてくれ。王子は、単に少し野心家で、破壊の魔法に夢中なだけだ」
「少し野心家だと!? 父親の命を狙う奴がか!?」
「それに、ゲキファの方は、純粋にお前を好きなだけだ」
「何が純粋だ!! 俺は美味い飯と研究所があればそれでいい!」
「まあまあ。あれの相手をしてくれるなら、学費は免除するから。俺たちも、正直、あの二人には手を焼いていた。二人とも、他の学生に危害を加えるわけでもなければ、問題を起こすわけでもない。むしろ、退学など考えられないほど優秀なんだ。だが、コレリールの方は、公爵と組んで陛下の命を狙っているし、ゲキファに至っては、君を復学させろとうるさい上に、あのまま放っておけば、公爵の方に手を回し貴族たちを取り込んで、俺や王を訴追する作戦まで立てようとしていたらしい」
「ぐ…………」
それは俺も困るな……なんて面倒臭い奴らだ。
「もちろん、どちらも表立って問題になることは決してない。はっきり言って、どうしようか困っていたんだ」
「……それで、俺を迎えて、適当に子守でもさせようと言うのか?」
「君は察しが良くて助かるよ」
「ふざけるな!! あんな奴らのお守りをするために来たんじゃないぞ!!」
「落ち着いて。君にとっても、チャンスだろ? そもそも二人に近づきに来たんじゃないのか?」
「それは……」
確かにそうだ。だが、だからと言ってこんな奴らに利用されるのは腹立たしい。
いや、待て。むしろチャンスか?
「お前は、このために俺を迎え入れたと言うのか?」
「そうだよ。あの二人の相手をしてもらうために来てもらった。だけどそれだけじゃない。使役の魔法の研究が進んでいないのは本当だ」
「……俺が二人に近づいたら困るんじゃないか?」
「君が二人に近づいたところで、君の目的を達成させないだけの策は打てるつもりだ」
「挑発か?」
「勘繰りすぎだ。単に、君が何をしても勝てると思っているから入れた。それだけだ」
「やっぱり挑発に聞こえるぞ。まさか、街でヴェアが俺の前に現れたのも、お前が命じたからか?」
「いいや。それは本当にただの偶然だ。君を迎えるいい作戦はないかと考えている時に、君が飛び込んできてくれたのだから、運命だと思ったが」
それで、うまく行ったと俺を利用する気か。
罠に嵌ったようで腹が立つ。しかし、ここで降りれば、俺の願いは叶わないし、なにより、このニヤニヤ笑っている男を前に背を向けたくない。
「……分かった。貴様の策に乗ってやる」
「妙に気前がいいね。何か企んでる?」
「そっちこそ、勘繰りすぎだ。俺の目的は変わらない。研究所を再興させる。お前を引き摺り下ろしてな」
みていろ。俺はどんな状況になろうとも、俺の研究所を再興してやるんだからな!!
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