婚約者に「黙っていろ」と言われたので、無口な侯爵と本音で喧嘩します
「披露会では一言も喋るな。君が口を開くと、まとまる話も壊れる」
婚約披露会の直前、伯爵令息ドリアンにそう言い渡されたメルヴィル家の令嬢クラリス。進行表の花嫁の返答欄には、彼女の名前ではなく「代理人」と刷られていた。署名した覚えのない代理申請書が、すでに登録官へ出されていたのだ。
父の借金のために結ばれた婚約。父にまで「黙っていろ」と腕をつかまれ、声を出せずにいたクラリスの前に進み出たのは、宮廷で「無口な侯爵」と呼ばれるレナート・ヴァイスだった。
「私は、その花嫁の返事をまだ聞いていない」
自分の声で婚約の登録を止めたクラリスだったが、助けられ方には納得がいかない。礼と文句を一緒にぶつける彼女に、口数の少ない侯爵はまっすぐに返す。
「君の声が聞きたいからだ」
偽の診断書、借金の即時返済、そして判断能力を疑う訴え。声を奪おうとする人々の前で、クラリスは自分の返事を自分で決めていく。
言葉を惜しむ侯爵と、言いたいことを言い返す令嬢が、本音でぶつかりながら惹かれ合う物語。
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