公爵令嬢ディアセーラの旦那様

cyaru

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ディアセーラが背負った負担度合い

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ブロスカキ公爵が夫人とディアセーラの手を取り入場をすると、あっという間に人々に囲まれた。

その中には帝国の大使の顔もあれば、諸外国の要人の顔もある。
全てに根回し済みのブロスカキ公爵と目が合えば、頷く者やグラスを少し掲げる者もいる。

ジェラティッド王国の国内は花のような形をしている。中央に王都があり、花びらに当たる部分に幾つもの領地が配置されている。
上手く行けば「新生ジェラティッド王国」は中央の王都だけが残り、周りを囲っていた各貴族の領地は帝国であったり隣国の領土となる。
残ったとしても花びら占いでプチプチと千切ったあとの数枚の花びらが残る形となる。そうなれば「領界」が「国境線」になる。

「領界」である事と「国境線」である事には大きな違いがある。
常に他国の侵攻に備える必要が出てくるのだ。一部分だった国境線が大部分となれば蓄えた私財が尽きるのはあっという間だ。それが判っているからこそブロスカキ公爵につく貴族が多かったのだ。


貴族達に囲まれているブロスカキ公爵の元に国王が壇上から降り、歩み寄ってきた。

「来てくれたか。これでこの国は安泰だ」
「陛下、何を持って安泰だと思われるのです?」
「何を?これで事業は上手く行くだろう?取りなしてくれたのだろう?だからこそ隣にいるガラッシ侯爵も昨日から参加をしてくれているのだから」

胸に手を当てて一歩前に出たのは先ほど国王が名を出したガラッシ侯爵だった。

「陛下、何かお間違いでは?昨日から参加をしたのは第二王子デモステネス殿下が「来てくれるだけでいい」と仰ったので来ただけです。確かに事業をするにあたっての式典ですが参加をした事で全てを了承とされるなら私はこの場でお暇させて頂きます」

「なっ、何を言うのだ?いや、その話を出したのは迂闊だった。後で席を設けよう」

「後も何も。私は意外と忙しいのです。今後3、4年は孫を抱く時間も削っての事業がありますので予定を無理に入れるとなると差し障りがある事もご承知頂けるのでしょうか?」

ザザッと音がして国王が周りをみると、ブロスカキ公爵、ガラッシ侯爵の後ろに多くの貴族、そして来賓の面々が見える。国王の周りに残っている貴族の数は少ない。
よくよく見れば側妃の実家もブロスカキ公爵の後ろに顔が見える。

「謀ったのか!ブロスカキ!ガラッシ!」

「これは異な事を仰る。私達が何時陛下を謀ったと仰るのです」

「ここに来たのは事業を円滑にするため、そしてブロスカキ!かの一件は水に流すという事だろう」

「ご冗談を。陛下、かの一件、蒸し返されたのはどちらでしょうか?」

「えっ?どちらとは…待て。王弟は幽閉した。責任を取らせた…何かあったのか?」

「何かあったとはこれは驚きです。どんなに多忙であろうと全ての責任は上に立つ者が負う事で何事も思い切り出来るのです。王太子命令まで出し、娘婿を拉致。お約束の日にも釈放をされずどうしたものかと。ご説明願えますか?」

「陛下、このガラッシからも問わせて頂きます。港湾整備の事業を承諾した際、私は条件を付けた筈です。ブロスカキ公爵令嬢が輿入れし王太子妃、ひいては王妃になる事が大前提ですと。婚約破棄と言う事は王妃、王太子妃には間違いなくならない、いえ、なれませんよね?前提を覆したのは王家。だから私は式典と言われても欠席をしたのです。昨日、今日と参加をしたのは先ほども申しました通り「来るだけでいい」との事でしたので。陛下のお言葉を借りるならこちらこそ謀られた…と申し上げますが如何でしょう?」


国王は第二王子のデモステネスを向かわせ頭を下げさせる事でガラッシ侯爵をこの場に呼ぶ。その事で事業については契約通りであると知らしめられると考えた。
勿論、事業をする上での前提は判っていた。だが貴族であれば「参加した」という事で諦めをつけると考えてしまった。

ガラッシ侯爵はそれまでも頑として領地に手を入れる事を許して来なかった家である。首を縦に振ったのは前提ありきだったが、丸め込めると安易に考えてしまった。

だが、ブロスカキ公爵のほうは合点がいかない。
ベネディクトは監視はさせていたが城からは出ておらず、ディアセーラの事は諦めたと思っていたし、ペルセスも釈放されたものだと思っていた。確認を怠ってしまったのはベネディクトの婚約破棄で本来ならディアセーラが担う分を2人の王子と婚約者だけでは補いきれず、国王も王妃も側妃でさえも没頭せねばならなかった。
裏を返せば8人が分担してあっぷあっぷしている事をディアセーラ一人に背負わしていた事に他ならない。


その場にいた貴族たちもゆっくりと国王の周りを離れブロスカキ公爵の側に移動していく。王家についていても崩れかけた泥船に乗船しているようなものだ。
彼らにも家族、一族があり領民がいる。生き残りやすい方に動くのは仕方のない事である。


だが、そんな空気を変えたのは本元の元凶であるベネディクトだった。



☆彡☆彡☆彡

次回 10時10分公開です (*^-^*)
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