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もう子供ではない

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アマリアは社交シーズンを王都で過ごし、冬を領地で過ごすという1年を過ごしている。

ヘンドリックは年間を通してほとんどを王都で過ごし、短い間だけコンラッドを連れて領地に行き、共に帰っている。

コンラッドは寄宿学校で1年の大半を過ごし、外出で戻ってくることもほとんどない。寄宿学校の長期休みで帰ってくるが、夏は領地のことを知るためにと数人の使用人と共に行かされたり、親戚の家に滞在したりして、公爵邸で過ごす時間はほとんどなかった。冬の休みにヘンドリックと共に領地に訪れた時に過ごす1週間程度の間だけ、はりぼての家族をしているようなものだった。



コンラッドは14歳になっていた。アカデミーでの成績はとても優秀で、16歳で卒業する行程を、あと1年で卒業できると言われるほとに勤勉で真面目な学生として過ごしている。

それをアマリアはとても誇らしく思っているが、コンラッドとの距離は既に埋められないほどに大きく開いてしまっていた。

コンラッドは黒目黒髪の、まさしく公爵家の血を引く容姿だった。目の形や鼻筋、輪郭まで、ヘンドリックの幼い頃を彷彿とさせると、親類縁者達から何度も聞かされてきた。

アマリアは我が子ながら、自分に似た要素が何一つないことに苦笑しながらも、誰よりも大切に想うヘンドリックの生き写しのようなコンラッドを誇らしく思っていた。

しかし、心で愛しい、大切だと思っていても、どう表せばいいのかわからずにいた。

そして、他人行儀のような態度になるコンラッドに困惑しながらも、使用人たちから「もうコンラッド様も難しいお年頃になられましたから。そっとしておかれるのがよろしいかと」と忠告され、アマリアは曖昧に頷くしかなかった。



「あの子も、もう子供ではないのね…」



居室で紅茶を手に、深いため息をつくと、そばに控えていたハンナが頷いた。



「さようですね。アカデミーを卒業されましたら、社交デビューも待っていますし、いよいよ本格的に婚約者様を選ぶお話が出ますね」



「!!」



アマリアは驚きのあまり、カップを落としてしまいそうになった。



「奥様、危ないところでした」



「あ、ごめんなさいね。びっくりしてしまって…。そう、もうそんな年なのね。公爵家の跡取りですもの。それにヘンドリックに劣らず優秀といわれていれば、候補のご令嬢方も多くいるでしょうね」



「はい、おそらくは。でも、家と家のつながりのための婚姻になるでしょうから、旦那様がきちんとお選びになると思います」



「でも…私達がそうではなかったのに、コンラッドにそうさせるのは、少し…」



「いいえ、奥様。旦那様はそれでも最善の方をお選びになるはずです」



いつもとは別人のような言い切り方に、アマリアも「そうね」と応えて、息子の未来に思いを馳せていた。
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