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前編
3 妹の婚約
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あれから、妹の誕生日が過ぎてから少しして、妹とこの国唯一の王子との婚約の話がまとまりつつある。
妹の誕生日が二人の顔合わせの意味もあったのだろう。
公爵家当主のあの男は、王子との婚約を来客者に自慢げに話していた。
この公爵家は、時々王家から降嫁してくる事があるほどの家だ。
この家から王家に嫁ぐことも正当な流れだけど、問題があるとも無いとも言える。
ここの当主であるあの男は他家の、侯爵家からの婿養子だ。
私を生んだだけのあの女は、公爵家の1人娘だったから婿をとる必要があった。
そして、あの女は我儘に育てられてもいる。何でも自分が一番でなければ気が済まない人だ。
だからあの人は、他の公爵家から嫁いだ王妃とは仲が悪い。
自分が王妃でないのも気にくわないし、婿である夫が元侯爵家なのも気に入らない。
だからなんの罪悪感もなく嫌がらせの為に、国王との密通、体だけの関係に及んだのだろう。
その結果、生まれたのが私だ。
妹も、よその本命の伯爵家の男との子供だけど、でも、婚約者の王子は王妃も浮気をして生まれた子だから、あの2人が結婚しても王家の血を受け継いだ直系の者は生まれてこない。
この国の先の事なんか、私が思う義理はないけど、みんな似た者同士だったということだ。
汚い大人達。
誰も知らない事実ではあるけど。
私は視る事ができるから知っている。
私には関係のない婚約話だとは思っていたけど、妹の婚約が決まったことにより、私に転機が訪れた。
私の存在が公にされることになった。
ただし、髪を黒く染めて。
何故黒かって、スカーレットが黒じゃないと塗りつぶせなかったからだ。
最初からそのつもりで、キーラという名前にしたのかと思う。
こんな真っ黒い髪は、この国では他国の元奴隷か、それに近い平民の中にしかいない。
黒い髪の子供の存在の方が公爵家にとって外聞が悪いのではないかと思うけど、戯れでできた子供として引き取ったと、そういうことにするらしい。
どこまでも私の存在を疎ましく、地に堕としたいらしいな。
それを告げたあの男の顔が矮小に歪んでいた。
妻であるあの女と、同級生である国王に対する劣等感から生まれるものが、全て私に負の捌け口として向けられていた。
小さくて、どうしようもない男だった。
だから、妻であるあの女にも見向きもされない。
私を虐げることでしか、己のプライドを保てないのだから。
今日もまた、裸にされてこの背中に鞭を打たれている。
「お前と、私の可愛いローザの血が半分でも繋がっているのが信じられん。この、卑しいお前の血とな!!」
唾を飛ばしながら、恍惚の表情で鞭を振るい続ける姿は滑稽だ。
お前となんか、この家の誰一人として血の繋がりがないだろう。
意識を失う寸前に、心の中でそう嘲笑っていた。
妹の誕生日が二人の顔合わせの意味もあったのだろう。
公爵家当主のあの男は、王子との婚約を来客者に自慢げに話していた。
この公爵家は、時々王家から降嫁してくる事があるほどの家だ。
この家から王家に嫁ぐことも正当な流れだけど、問題があるとも無いとも言える。
ここの当主であるあの男は他家の、侯爵家からの婿養子だ。
私を生んだだけのあの女は、公爵家の1人娘だったから婿をとる必要があった。
そして、あの女は我儘に育てられてもいる。何でも自分が一番でなければ気が済まない人だ。
だからあの人は、他の公爵家から嫁いだ王妃とは仲が悪い。
自分が王妃でないのも気にくわないし、婿である夫が元侯爵家なのも気に入らない。
だからなんの罪悪感もなく嫌がらせの為に、国王との密通、体だけの関係に及んだのだろう。
その結果、生まれたのが私だ。
妹も、よその本命の伯爵家の男との子供だけど、でも、婚約者の王子は王妃も浮気をして生まれた子だから、あの2人が結婚しても王家の血を受け継いだ直系の者は生まれてこない。
この国の先の事なんか、私が思う義理はないけど、みんな似た者同士だったということだ。
汚い大人達。
誰も知らない事実ではあるけど。
私は視る事ができるから知っている。
私には関係のない婚約話だとは思っていたけど、妹の婚約が決まったことにより、私に転機が訪れた。
私の存在が公にされることになった。
ただし、髪を黒く染めて。
何故黒かって、スカーレットが黒じゃないと塗りつぶせなかったからだ。
最初からそのつもりで、キーラという名前にしたのかと思う。
こんな真っ黒い髪は、この国では他国の元奴隷か、それに近い平民の中にしかいない。
黒い髪の子供の存在の方が公爵家にとって外聞が悪いのではないかと思うけど、戯れでできた子供として引き取ったと、そういうことにするらしい。
どこまでも私の存在を疎ましく、地に堕としたいらしいな。
それを告げたあの男の顔が矮小に歪んでいた。
妻であるあの女と、同級生である国王に対する劣等感から生まれるものが、全て私に負の捌け口として向けられていた。
小さくて、どうしようもない男だった。
だから、妻であるあの女にも見向きもされない。
私を虐げることでしか、己のプライドを保てないのだから。
今日もまた、裸にされてこの背中に鞭を打たれている。
「お前と、私の可愛いローザの血が半分でも繋がっているのが信じられん。この、卑しいお前の血とな!!」
唾を飛ばしながら、恍惚の表情で鞭を振るい続ける姿は滑稽だ。
お前となんか、この家の誰一人として血の繋がりがないだろう。
意識を失う寸前に、心の中でそう嘲笑っていた。
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