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10 ゆっくり

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「今日はゆっくり、してあげてちょうだい」

「は…?」

「ゆっくりされると、我慢できなくなって女の方からねだるって聞いたのよ。見てみたいわ」

「っ…」

「つまりね、今日はミリアがねだるまでは、イってもイかせてもダメよ?」

「…っ…」

リチャード様が、奥歯を噛みしめる音が聞こえた。

「さあ、始めなさい」

………嫌だけれど、今すぐ私が自分からねだりさえすれば…

私のそんな考えを見透かしたように、姫様が私に笑みを向けた。

「もちろん、欲しくないのに口先だけでそんなことを言ったら…どうなるかわかっているわよね?」

ぞっとした。
姫様は本当に、何を要求してくるか想像がつかないから怖い。

「だから当然、ギリギリまで我慢するのよ?私の可愛いミリア」

ペットに首輪を、決して外れないように丁寧に嵌める。そんな手つきを思わせる姫様の言葉。
姫様は…私のつたない芝居など、見抜いてしまうだろう。そしてそうなったら、次に何をされるか分からない。
私も、そしてリチャード様も。

「っ…は…い………」

姫様の、言う通りにするしかない…。

「いい子ね、ミリア」

優しげな姫様の声。
支配者の声。

リチャード様もそれを感じとったのだろうか。深いあきらめのため息を吐いた。

リチャード様が、いつものように私に覆い被さってきた。大きな手が、身体の上を滑る。
ゆっくり、優しく。

「んっ…ふっ…」

演技は許されない。
だから、その手に意識を集中する。
なるべく快感を拾って、早く限界がくるように。そうすればその分早く、終わるから。

「ミリア…」

リチャード様が、そんな私の意図を感じとったのか、耳元で囁いた。
私は、リチャード様のこの声にとても弱い。

もっと、呼んでください

目で訴えた。
通じたのだろうか。
それとも偶然だろうか。
リチャード様が、私の名を繰り返し呼ぶ。

「ミリア…ミリア…」

リチャード様に、こんな風に呼ばれると、思わず好意を持たれていると勘違いしそうになるから本当はよくないのだけれど。それでも嬉しく思ってしまうのを止められない。

リチャード様…

口の中で、小さく呟く。リチャード様には聞こえないように。
リチャード様は、きっと私に名前など呼ばれたくないだろうから。

いつもは、できるだけ我慢するのだけれど、今日は快感を高めるためだと自分に言い訳して、何度もそっと繰り返す。
愛しい人の名を。

時折、リチャード様が私の肌を吸う。
跡を、つけていく。
まるで、所有したいと、自分のものだと主張されているようで嬉しくなってしまう。
リチャード様にそんな意図などないと、分かっているのに…。

「ミリア…」

身体の熱が、だいぶ高まってきたところで、乳首を吸われた。
声が、出てしまった。

「ミリア…」

リチャード様は頭を私の耳元に移動させた。
そしてまた、私の名前を呼ぶ。

リチャード様の手が、お腹をゆっくりと滑り降りていく。
そして、そこに到達した。
耳元で繰り返されるリチャード様の息遣いに、ブルリと身体が震える。

「ミリア…」

リチャード様が、私のそこを指で開いた。そんなところを大きく広げられ、恥ずかしくてたまらない。

「ミリア…」

リチャード様の指が、中をかすめる。

「んっ…」

声が、漏れた。
でも、リチャード様はそれ以上の刺激は与えずに、ただそこを開いたままじっとしている。
なんだか酷くもどかしい。
呼吸を落ち着かせようとしたら、耳を噛まれた。

「違うだろう、ミリア。感じろ…」

同時に、広げられたそこを、またほんの少しだけ触られた。

「んあっ…」

「そうだ。その調子だ」

そして陰核をやんわりと押し潰される。

「んっ…ふぅっ…」

リチャード様の、もう片方の手が、私のお腹を撫で回す。いつも、リチャード様のモノが入っている辺りを、今日は外側から上下に撫でられる。
いつもの動きを、外側から模倣される。

「リチャードっ…様っ…それっ…」

「こうして欲しいか?…中から…いつものように……」

欲しく…ない訳ではない。けれど、まだ、欲しくてたまらないというほどでもなかった。
姫様は、欲しくて我慢できなくなって、それでねだる。そういうのが見たいと言った。この程度で欲しいなどと言ったら、何をされるか…

首を緩く横に振った。

「…っ……」

リチャード様が、少し怒ったような顔をした。でも、姫様への恐怖の方がずっと強い。

リチャード様が、耳の上の方を口に含んだ。耳の形を確かめるように、くぼみの一つ一つに舌を差し込んで丹念に溝を辿っていく。段々下へと。
ぐちゃぐちゃという音が、異様に近くに聞こえて、頭がおかしくなりそうになる。

「リチャード様っ…それ…」

言いかけた口に指を差し入れられ、舌を押さえつけられてしまった。
声が…出せない…やはり…私などに…名前を呼ばれたくないから…

気分が、沈みそうになった。とても深いところまで。
でもそんな暇など、与えられなかった。

口に入れられているのとは反対の手が、胸を伝い腹を撫で、脚の付け根へと降りていく。口から一度、指が引き抜かれた。
何かを言おうとしたその時、

リチャード様の指が、私の口とあそこに同時に入ってきた。
両手のタイミングを合わせて抜き差しされる。
口の中に指が入るのと同時に、あそこにも指が差し挿れられる。あそこから抜かれるのと同時に、口からも抜かれる。けれど完全には抜かずに、また挿入ってくる。
それが、繰り返される。

口の中は、喉の方まで。深くまで。
下はごく浅いところで。ごく浅いところばかり。
ゆっくりと。

指を咥えさせられている口から、呻き声が漏れた。
もう、かなり欲しくなってきていた。あともう少しされたら、我慢できなくなる…

ふぅ…

リチャード様が、ため息を吐いた。それが妙に色っぽく聞こえて、顔が赤くなる。

「ミリア…」

リチャード様は、いったん手を止め服を脱いだ。
リチャード様のモノが、指で濡らされたそこに添わせるように当てられた。

熱…い…

そこにはそれ以上は何もせずに、両手で乳首をつままれる。ごく優しく。
乳首の先を、親指の腹で撫でるようにそっと刺激される。右も。左も。

頭の中が、熱くなる。

「ミリア…」

促すように呼ばれた。
そして、リチャード様の舌が、耳の穴を犯し始めた。ぐちゃりぐちゃりという音に、腰が蕩けていく。

もう、ねだってもいい筈だ。
こんなにも欲しくなっているのだから。姫様だって、きっと納得してくれる筈…

「リチャードっ…様っ…もうっ…中に…くださいっ…私のっ…中にっ…リチャード様のっ…挿れてくだっ…」

言い終わるより先に、挿入ってきた。

「…ああっ…あうっ…んっ…ぁあっ…リチャ…あっ…ぁあっ…」

イきそ…う

奥まで挿れられただけでそう思った時

「まだイかせちゃダメよ、リチャード」

姫様の言葉に、リチャード様の動きが止まった。

「もっとミリアがねだる声を聞きたい気分だわ」

「…」

「ねだらせなさい。リチャード」

鋭い命令。

「…っ…」

リチャード様は、気持ちを落ちつかせるかのように大きく息を吐いた。

そして腰の動きは止めたまま、指でそっと私のお腹を撫で始めた。リチャード様のモノが挿入っている辺りを。

「リチャード…様っ…」

もう片方の手が、乳首をきゅっと優しくつまんだ。…つまんだだけでなく、軽く爪で弾かれる。ごく優しく。中が、リチャード様のモノを締めつけてしまう。

「…っ…あっ…あっ…ぁあっ…んっ…」

指で弄られているのとは反対側の乳首を、そっと舐められた。

「…っ…ぁああああっ…」

「ねだれ、ミリア」

全身を、支配されたと感じるほどの命令口調。
もう、我慢できなかった。
できなかった。

「リチャード様っ…動いてっ…も…動いてっ…私の中っ…突いてっ…いっぱい突いてくださっ…」

視界の端で、姫様が頷いた。
とても満足気に。

リチャード様は息を吐いて、大きく腰を動かし始めた。ぐちゃぐちゃと、自分の身体が立てる卑猥な音に耳を犯される。

「こんなのがいいのか。いやらしい」

突然のリチャード様の、思いもよらない囁きに、モノを締めつけてイってしまった。

ショックだった。
リチャード様にそんなことを言われたことも勿論だけれど、それ以上に、そんな言葉でイってしまった自分が信じられなかった。
けれど、

「ねだれ、ミリア」

リチャード様にもう一度命令されたら、止まれなくなった。
先ほど受けたショックなど、どうでもよくなってしまった。

欲しかった。
欲しかった。
もっと、リチャード様が与えてくれる刺激が。

「あっ…もっと…もっとっ…イかせて…くださいっ…もっとっ…中っ…ぐちゃぐちゃに…してくださっ…」


それ以外のことなんて、どうでもよくなってしまった。


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