婚約破棄された令嬢ですが、獣人王に執着されています

名門伯爵家に生まれながら、レティシアは“無能”と蔑まれてきた。
 聖力を持たず、家族からも冷遇され、婚約者であるエドワードからも名前すら呼ばれない日々。それでも彼女は、いつか認めてもらえると信じて耐え続けていた。
 ――だが、その願いは無惨にも踏みにじられる。
 華やかな舞踏会の場で突きつけられたのは、公開での婚約破棄。
 新たな婚約者として選ばれたのは、聖力を持つ美しい令嬢ミレーヌ。嘲笑と侮蔑に包まれながら、すべてを失ったレティシアは、ただ静かにその場を去ろうとする。
 その時だった。
 「――くだらない」
 場の空気を一瞬で支配する、低く冷たい声。
 現れたのは、隣国を統べる“獣人王”ラグナ。圧倒的な力と美貌を持つその男は、誰もが息を呑む中、なぜかレティシアに手を差し伸べる。
 「いらないなら、もらう」
 そう言って彼は、彼女を強引に連れ去った。
 すべてを奪われたはずの人生は、その瞬間から大きく動き出す。
 冷酷無慈悲と恐れられる獣人王は、なぜかレティシアだけには異様な執着を見せ――やがてその感情は、甘く重い“溺愛”へと変わっていく。
 一方で、彼女を捨てた元婚約者は、少しずつ“ある違和感”に気づき始める。
 そして知ることになるのだ。自分が切り捨てた存在の、本当の価値を。
 ――これは、すべてを失った少女が、最強の王に選ばれ、運命を塗り替えていく物語。
 後悔しても、もう遅い。
 彼女はすでに、“別の誰か”のものなのだから。
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