百年を待つ
見沼の畔に棲む竜神には、誰にも語ったことのない、二つの恋の記憶がある。
遠い昔、身分違いの恋に自ら幕を引いた娘。戦火の中、彼の手を拒み、見沼に散っていった寿能城の姫。二度の喪失を抱えたまま、彼はただ、水底で長い時を過ごしていた。
そんなある夏、幼い少女と出会う。彼女の翳りに、遠い記憶の面影を重ねかけた竜神は、しかし出雲での過酷な日々を見守るうちに、面影ではなく、彼女自身に焦がれていることに気づいていく。
奪わず、急かさず、ただ待つこと。二度の喪失の果てに辿り着いた、不器用な愛し方で。
これは、『蛍を待つ』の"彼"が辿ってきた、誰も知らない道のりの物語。
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