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12.手痛い失敗(モブ視点)

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「……やられたか」
「イルヴァン様、これは一体どういうことなのですか?」

 王城の客室にて、イルヴァンとクルメリアは話し合っていた。
 彼らが議論をしているのは、マルテリアが生き残っているということについてだ。彼女を暗殺するつもりだった二人にとって、それはまずいことだった。

「弟のウルドがやったんだ。奴からすれば、マルテリアは僕を糾弾する切り札になる。そのために助けたのだろうさ」
「そのくらいのこと、予想できなかったのですか?」
「予想していたとも。だから、あいつの私兵は抑えていた……まさか、あいつ自身が出張って来るとは思っていなかった」

 イルヴァンは、悔しそうに顔を歪めていた。
 彼にとって、王族とは上に立つ者であった。故に、ウルドが自身で動くことをまったく予想することができなかったのだ。
 それによって、彼はしてやられた。その事実に、イルヴァンは憤っていた。弟に裏をかかれることは、イルヴァンにとっては屈辱的なことだったのだ。

「今からでも、あの女を始末すればいいではありませんか」
「馬鹿なことを言うな! こちらが狙ったという事実がある以上、ウルドはあの女に護衛を集中させる。それを狙いに行った所で被害を受けるのはこちらの方だ。故にまだ確証がない内に仕留めなければならなかったのだ。そのくらいのこともわからないのか」
「なっ……失敗したのは、あなたの責任でしょう」

 イルヴァンの言葉に、クルメリアは怒っていた。
 二人は、利害が一致したことによって婚約を結ぶことにした者達である。故に愛などはなく、計画が失敗したことによって、ぶつかり合うことになっているのだ。

「……言っておくが、これから計画を大幅に変えることはできない。僕とお前の力で王位を勝ち取る」
「本当に成功するのですか?」
「成功させるのだ。成功させなければ、これまで僕達がしてきた努力は水の泡になる」
「……それは確かに、屈辱的なことですが」

 イルヴァンとクルメリアは、ここに至るまでに色々なことをしてきた。
 王位を得られなければ、それらは意味がないものとなる。それは二人にとって、何よりも避けたいことだった。
 故に二人は、再び手を取り合った。既に二人は、別れることができない程に結びついていたのである。

「問題となるのは、父上の機嫌だ。王位継承には、やはり父上の影響が大きい。何かしらの働きかけをする必要があるな……」
「まったく、ここまで来て親の機嫌取りですか……」

 二人は王位を掴むために、再び行動を始めるのだった。
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