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第2部

第55話 土下座と、許されるための条件

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「本当に、心より、反省しておりますっ!!」

 皆の前で土下座する私。
 物凄ーく冷たい視線を向けられる私。今回に限ってはユキナだけではなく、全員から。

 そう、バレた。
 風俗に行っていたことがバレた。

 あの後リアさんと一緒に帰宅し、フィリアも起きて久しぶりの再会を喜んだりゼアとエメユイと顔合わせをしたり、後日、非常に微妙な顔のユキナとも顔合わせをしたりして、親睦を深める目的で少し高めなお店で食事をとったりした。

 個室でそれなりに騒いでも大丈夫な店と言うこともあってそこそこ会話も弾み、話題はリアさんが今まで何をしていたのかという話になり、それはもう波乱万丈なエピソードを苦しそうな表情で語った後、ふと、

「あら、そういえばアカリちゃんと会ったのって、風俗店の前だったような…?」

 一斉に視線は私に集合。

「…マ…お母さん、その話もうちょっと詳しく教えてくれない?」

「灯、どういうこと?ねぇ。ねぇ、どういうこと?」

「また行ったのね…」

「…見損ないました、アカリ様」

 そういう経緯の元、私渾身の秘技『土下座』を発動したのである。

 ゼアはエメユイと一緒にすごく冷たい視線を向けてくるし、ユキナに関しては「その風俗はどこの店?」と今にも家の力を駆使して潰しに向かいそうな顔してるし、フィリアの表情も大分冷たい。唯一リアさんだけは「あらあら」って感じだが、それ以外は完全に修羅場。

 私、大ピンチ。

「えーと、はい…皆の目を盗んで風俗に行っていたのは本当です。この街に来た日と、昨日と合わせて二回…です。合わせて四時間愉しんじゃいましたぁっ!!」

 しかもその風俗嬢と懇意の仲になる私、マジギルティ。

「二回…目…」

「まさか私たちとはぐれたあの後に…!?」

「風俗のお店ってそんなに楽しい所なの…?ごくり」

「…見損ないました、アカリ様」

 一生エメユイに見損なわれてる私。

「言い訳はしません。私は皆の信頼を裏切るような真似をしてしまい、愛想を尽かされても文句の言えない立場です。煮るなり焼くなり好きにしてくれて構いません」

 それでもっ、私はっ、

「許してくれとは言わないけどっ、私は皆のことが大好きだからっ!!絶対に離れたくないっ!!嫌われてもいいから見捨てないでぇっ!!」

 最低なことをしておきながら、惨めにも涙を流して縋りつく私、マジ惨め。

 今後は二度と風俗店には行かないようにしよう。でもアリスさんとは会いたいから、何とか事情を話してプライベートでえっちしてもらうように頼もう。風俗には金輪際一切合切絶対に行かない。多分。

 ユキナの胸に顔を埋めてわんわん泣きじゃくる。

 皆と離れるなんて絶対に嫌だ。いくら殴られても蹴られてもいいけど、離れるのだけは堪えられない。

 もうどれだけ泣いたか分からない程泣いて、喉も痛いし体の水分がカラカラになってもユキナの背中を必死に抱き締めていると、頭を撫でられた。

 撫でる手はふたつみっつと増えていき、五つにまで増えた。な、何が起きてるんだ?

 顔を上げて見渡してみれば、ゼア、エメユイ、フィリア、リアさんが呆れ笑いを浮かべながら私の頭に手を置いていた。ユキナは…撫でてはくれてるけど超絶怒り顔。

「…見捨てない?」

 私がカスカスの声でそう言うと、フィリアは溜息を吐きながら、

「確かに私たちに黙って風俗行ったって聞いた時ははぁ!?って思ったけど、よく考えたらアカリだし?今更だなって思ったから。それに、私たちのこと嫌いになった訳じゃないんでしょ?」

「ふぃりあぁ~」

「私は元々アカリに会った時点でそういうお店に行く人だって分かってたから、分かってた上で、その…生涯を共にしようと思ったのだから、黙って行ったことについては思う所はあるけれど、まあ、今回は厳重注意で許してあげるわ。十分反省してるみたいだし」

「ぜあぁ~」

「まあ、見損ないはしましたが、アカリ様がそういうお店に行ってたと言うことはゼア様と屋敷で話し合った時に分かっていましたから。ゼア様が許すつもりなら私も許しましょう。アカリ様の珍しく情けない泣き顔を拝見出来たことですし…くふふ」

「え、エメユイ…?」

「私は特別気にならないけど、そうね、黙って行ったってことだから贖罪として今度えっちする時いつもよりいっぱい頑張ってもらおうかしら♡」

「りあさぁん…がんばりましゅぅ…♡」

 優しすぎてまた泣きそうになる。

 フィリア、ゼア、エメユイ、リアさんにお許しを貰ったら、後はユキナだけ。
 ユキナは相も変わらず私のことを物凄い形相で睨んでいる。ただならぬ雰囲気。

「ゆ、ユキナは…」

「…どうして、私に抱き着いてきたの?」

「どうしてって…」

 そういえばなんでだろ。特に何も考えずに気付いたらユキナに抱き着いていた。
 いくらか落ち着いた思考で考えてみると、

「…ユキナには…特に見捨てられたくなかった…から、かな」

 フィリアたちと比べて、ってことではないが、ユキナには何が何でも見捨てられたくないと言う思いが強い。未だにユキナとの思い出は蘇らないけど、もう本能がユキナに依存しているのかもしれない。

「ふーん」

 ユキナは唇を突き出して、ほんのりと頬を染める。

 こういう時だけど、この人は本当に可愛い。あー、出来ることなら前世の幼いころに戻ってロリユキナのこと犯して、中学生の思春期ユキナ犯して、高校生のちょっぴり大人びたユキナ犯して、大学生で学校通いながらいちゃいちゃラブラブ同棲生活送りたいよ~!!

 なんて考えながら皆で黙ってユキナの二の句を待っていたら、満を持して口を開いた。

「許すか許さないかは今後の灯次第で決める…だって、これから一週間は灯は私だけのものになるんでしょ?」

 そうして、私とユキナだけの一週間が始まるのである。
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