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衝突
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「きゃああ!」
あやめの悲鳴が響いたと同時に、彼女は急ブレーキをかけながらハンドルを切った。ぐんと遠心力で体がシートに押し付けられる。
耳を塞ぎたくなるようなブレーキ音が響き渡り、私は目を強く閉じた。右手を強く握ってきたソウスケの体温だけが、なぜかしっかりと伝わってきた。
体が打ち付けられたのを自覚すると、ふわりと浮遊感に襲われる。それが車が横転したことによるものだと、この時はまだ気づいていない。
思考は何も回らなかった。ただ一瞬の出来事で、怖いとだけ思った瞬間、私は意識を手放した。
「……き」
聞き慣れた声がする。
「……き、きろ」
ううん、と自分の口から声が漏れた。
しかし次の瞬間、頬に痛みが走る。その衝撃で、閉じていた瞼はびっくりして開かれたのだ。
「 ?! 」
「沙希、起きたか!」
目の前にあるのはサラサラの黒髪に白い肌をした美青年だった。脳がまだ目覚めていないのか一瞬ぽかんとしてしまうも、すぐにソウスケなのだと思い出す。
「あ。ソウスケ……?」
「沙希起きろ、沙希自身は無傷なんだからな」
やや座った目でソウスケに言われた瞬間、さっき車の中で起こった出来事が一気に思い出された。そうだ、事故にあったんだった! はっとして体を起こす。
私はアスファルトに寝かされていた。ひんやりした凸凹の地面を臀部に感じる。そして目に入ってきたのは、道路のど真ん中で黒い車が横転し止まっている姿だった。
「……あ?」
「やられたな」
「あやめ!」
青ざめてその名を叫ぶ。周りにはあやめの姿はなかった。車のそばにいるのは私とソウスケのみ。少し離れたところに、たまたま通りがかっただけと見られる車たちが立ち往生していた。
私は慌てて立ち上がり、車へ近寄る。車は運転席側を下に横転していた。正面へ回り込んでみると、車の前面はペシャンコに潰れていた。ハンドルを切った後、派手にガードレールにぶつかったらしい、それを見て一気に青ざめる。
フロントガラスから中を覗き込んだ。エアバックに埋もれて目を閉じているあやめが見える。ぐったりと窓ガラスに体を押し付けている。
「あやめ!」
呼びかけるも返事はない。私は隣にいるソウスケに言った。
あやめの悲鳴が響いたと同時に、彼女は急ブレーキをかけながらハンドルを切った。ぐんと遠心力で体がシートに押し付けられる。
耳を塞ぎたくなるようなブレーキ音が響き渡り、私は目を強く閉じた。右手を強く握ってきたソウスケの体温だけが、なぜかしっかりと伝わってきた。
体が打ち付けられたのを自覚すると、ふわりと浮遊感に襲われる。それが車が横転したことによるものだと、この時はまだ気づいていない。
思考は何も回らなかった。ただ一瞬の出来事で、怖いとだけ思った瞬間、私は意識を手放した。
「……き」
聞き慣れた声がする。
「……き、きろ」
ううん、と自分の口から声が漏れた。
しかし次の瞬間、頬に痛みが走る。その衝撃で、閉じていた瞼はびっくりして開かれたのだ。
「 ?! 」
「沙希、起きたか!」
目の前にあるのはサラサラの黒髪に白い肌をした美青年だった。脳がまだ目覚めていないのか一瞬ぽかんとしてしまうも、すぐにソウスケなのだと思い出す。
「あ。ソウスケ……?」
「沙希起きろ、沙希自身は無傷なんだからな」
やや座った目でソウスケに言われた瞬間、さっき車の中で起こった出来事が一気に思い出された。そうだ、事故にあったんだった! はっとして体を起こす。
私はアスファルトに寝かされていた。ひんやりした凸凹の地面を臀部に感じる。そして目に入ってきたのは、道路のど真ん中で黒い車が横転し止まっている姿だった。
「……あ?」
「やられたな」
「あやめ!」
青ざめてその名を叫ぶ。周りにはあやめの姿はなかった。車のそばにいるのは私とソウスケのみ。少し離れたところに、たまたま通りがかっただけと見られる車たちが立ち往生していた。
私は慌てて立ち上がり、車へ近寄る。車は運転席側を下に横転していた。正面へ回り込んでみると、車の前面はペシャンコに潰れていた。ハンドルを切った後、派手にガードレールにぶつかったらしい、それを見て一気に青ざめる。
フロントガラスから中を覗き込んだ。エアバックに埋もれて目を閉じているあやめが見える。ぐったりと窓ガラスに体を押し付けている。
「あやめ!」
呼びかけるも返事はない。私は隣にいるソウスケに言った。
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