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私達は日が暮れてからローザリア様の救出作戦を決行しました。夜なら髪や肌でどうこう言われても関係ありません。

ガーネット様が音を消す魔法を行使されていて、足音ひとつ立てずに王宮の外壁の下までたどり着きました。

全ての門には見張りの兵士が複数人立っていますが、ユリシーズ様が示した隠し通路は幸いなことにそこから少し距離があります。

しかし、兵士はなかなかしっかり警戒していて通路に飛び込むタイミングがありません。
ユリシーズ様が兵士の交代時に隙ができると言うので、物陰から様子を伺いながら待っています。

兵士が動き始めました。兵士全員が門の陰に隠れました。

「今だっ」

ユリシーズ様の合図で全員外壁に空いた穴の中に飛び込みます。
魔法で音はしないので、気づかれなかったと思います。

「ここから右に進むと西の離れだ。いくぞ」

気が逸っているのでしょう。ユリシーズ様が勝手に進み始めました。相変わらず考え無しというか、勝手なことをされるものです。
幸い見回りの兵士の姿は見えませんので、私達も後に続きました。 

西の離れはすぐに見えてきました。私があそこに捕らえられてからそんなにたっていませんが、随分と昔の事のように思えます。

更に建物に近づくと男女の話し声が聞こえてきました。

「…………が無い………と…………して……の……………お……」

「…や……」

何がなんだかですが、ローザリア様が誰かと話しているのでしょう。中でドタドタと音がし始めました。

「きゃあっ!」

ローザリア様の悲鳴がはっきりと聞こえて、大きな音がしました。

「ローザリア!」

ユリシーズ様が飛び出したその時です。松明が灯され、私達の姿が明るく照らし出されました。

「気付いていないとでも思ったのか?侵入者だ!全員西の離れまで来い!」

現れたのはベルンハルトでした。
武器を構えたままこちらの様子を窺っています。
次第に人と明かりが集まってきました。

「陛下に言われて張っていたら本当に現れるとは」

「ベルンハルト、そんな事より離れからローザリアの悲鳴が聞こえたんだ。助けに行かないと!」

ユリシーズ様がベルンハルトに訴えかけます。武装した兵士が集まっていて離れにも行けそうにありません。

「ユリシーズ様、あの致命傷で生きておられるとは魔族の力でも借りたのでしょうか。現在、離れでは陛下と大聖女が夜伽の最中です。入ることはなりません」

ベルンハルトは少し驚いた様子でしたが、淡々とユリシーズ様に応じました。
夜伽の最中なら仕方ありませんね。ローザリア様がアルフレッド様と結ばれるのであれば早く退散いたしませんと。

「ローザリアがそのようなことを受け入れるはずがない!」

「確かに、本人ははっきりと陛下にお断りしていましたよ。それから前国王の死についてユリシーズ様を庇っておられましたよ。それで西の離れに」

ローザリア様は激昂していろいろと暴露してしまったようですね。そうなると周りが見えない人っぽいですから。

「ならばそこを通せ!俺は助けに行く!」

「先日半殺しにして差し上げたのに、覚えていないんですかね。皆、相手は魔族だ。最初から殺すつもりでいけ」

場の殺気が膨れ上がりました。私にはわかりませんけど、そう表現するのに相応しい場面です。

「全員、身体強化を許可する。ガーネットと張り合える相手だ。決して油断するな」

オブシディアン様が指示を出しました。

でも何か様子がおかしいです。ガーネット様や諜報員の方が浮き足立っています。

「身体強化魔法が発動しません!」

ローザリア様の力が戻ったのでしょうか。魔族の魔法が発動しなくなりました。
離れの中では何が起こっているのでしょうか。

「仕方ない。我々が道を切り開くから建物に向かいなさい。大聖女の力が戻っているのかもしれない。様子を見てきてほしい」

「こんなにたくさん、本当に大丈夫なんですか?」

既に周りを囲まれつつあります。オブシディアン様に万が一のことがあってはと思わずにいられません。

「君達がいる方が困るのだ。庇いながらだと対応が難しい」

そう言われては言われた通りにするしかありません。
しかしローザリア様が力を取り戻したとなると、アルフレッド様側に取り込まれてしまった可能性があります。
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