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「なんとなく魔力を感じたから、魔族が王都に侵入してきたことには気付いていたんだけど、まさか魔族の狙いが僕個人とは思わなかったな」

アルフレッド様がこちらの接近を察知して罠を張っていたようです。慎重に動いていたつもりが、筒抜けだったようですね。

今回はローザリア様を救出しに来ただけだったので、こちらもかなり誤算でした。戦闘は覚悟していたものの、正面からやり合うなんて思いもよりませんでした。

今もあまり良い状況とは言えません。
アルフレッド様が魔法を使うなんて想定外ですから。

外では未だに戦闘が続いているようです。
オブシディアン様達が身体強化できていればすぐに片が付くはずだったのですが。

「とりあえずここにいる君達を全員消して、ベルンハルト達が魔族と戦っている間に僕は一旦逃げるとしようかな」

いつの間にか回り込まれ、入り口をアルフレッド様に塞がれていました。一応留置所なので、入り口以外からは逃げられないのです。

このまま助けが来なければ、本当にアルフレッド様の攻撃魔法で全員殺されてしまいそうです。
アルフレッド様もそれがわかっているから余裕だったのでしょうけど。

『ホーリーランス』

アルフレッド様が魔法を連発しました。
撃ち出される光の槍は狙いはともかく目に見えない速さで飛んできます。至近距離だと確実に被弾するので私達は距離を取って何度か回避していたのですが、つまずいて転げたローザリア様を庇ったユリシーズ様が再び腕を貫かれました。

私は駆け寄ってユリシーズ様に『キュア』します。

「すまないベアトリス。でも腕くらいならどうということはないから無理をしないでくれ」

ユリシーズ様がそう言いますが、ユリシーズ様がいなくなると私とローザリア様だけになって益々八方塞がりですし、見捨てるのは目覚めが悪いではありませんか。

「また撃ってきます!」

ローザリア様の声で、またすぐに私達がいた場所に魔法が飛んでくるのを避けました。

「いちいち回復されては面倒だね」

攻撃が私の方に集中してきました。そうなると私の身体能力では避けきることができません。
次第に足がもつれてきました。

遂に光の槍が私を襲い、片耳のイヤリングが弾け飛びました。
オブシディアン様がくれたマジックアイテムです。

私は驚いて座り込んでしまいました。腰が抜けてしまったようです。

「あれ?今当たったよね。おかしいな」

アルフレッド様は座り込んだ私にもう一度魔法を放ちました。
もう片方のイヤリングも弾けました。
もう一回撃たれたらやられてしまいます。

「君には魔法が効かないのかなあ?なら普通に殺してあげるよ」

アルフレッド様が剣を抜いて私に近づいてきます。魔法も恐いですが、鋭利な剣を向けられるのは本当に恐いです。

「そうはさせるか!」

ユリシーズ様も剣を抜いて横からアルフレッド様に斬りかかりましたが、光の槍を受けて再び倒れてしまいました。

そのままアルフレッド様は私の前まで来ました。

「魔族の力は僕が封じているから外の助けは期待できないよ。これで終わりだね」

アルフレッド様が私に剣を振り上げるので、私は恐くて何もできず目を閉じてしまいました。

『こらこら、目を閉じたら駄目じゃないか』

頭の中で声がしました。
すぐに私の魔力がぐんぐん奪われて胸のペンダントに吸い取られます。

金属のぶつかる音がしたので目を開けると、豪奢な軍服風の姿の青い髪の男性がアルフレッド様の剣を受けていました。

「魔王様!」

「私がペンダントを通じて見ていたから良いものを、君はもっと早く私を呼ぶべきだよ。というより忘れていたんじゃないか?」

正直ペンダントの存在を忘れておりました。
それに助けてくれると言ってましたけど、魔王様がわざわざ現れてまでくださるアクセサリーとは思いませんでした。

「ま、魔王だって?なんでそんなものがここに」

アルフレッド様が震えています。魔力を感じることができる今の彼なら、受ける重圧感で底知れない存在が目の前にいることがわかっているはずです。

「魔王様ありがとうございます。アルフレッド様が魔法を使うなんて予想外の事態で。外も大丈夫でしょうか」

「オブシディアンは後で叱っておくよ。律儀に君との約束を守って未だに手加減しているようだから。ガーネットは大変そうだけど」

魔王様がそこまで言うなら外も大丈夫なのでしょう。

「いきなり現れて何がなんだがわからないけど邪魔なんだよ!」

激昂するアルフレッド様が両手を合わせて祈り始めました。何か今までと違う事をするつもりのようです。

『インペリアルクロス』

アルフレッド様が聞き慣れない魔法を詠唱すると、魔王様を中心に建物を覆う程の光の柱が噴き上げました。
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