マジな恋愛はアラフィフから

5.痣

真剣な表情に拒めず一応話だけは聞くことにした。愛華に13時になってもメールしなかったら連絡して欲しいとお願いしてあり一応対策はしてある。
紳士的なジークさんが無体な事はしないと思うが…

「貴女と私はマルラン王国の貴族。母同士が幼馴染でお互い子供が産まれ異性なら婚姻、同性なら自分達と同じ様に幼馴染にと決めていた。そこに貴女と私が生まれて、直ぐに親同士が決め仮婚約をしました」
「マルラン王国？」

歴史に詳しい訳では無いが過去にそんな国あっただろうか⁈私が知らないだけかもしれない。

「マルラン王国って今で言うと何処の国になるんですか？」
「この地球にはありません」
「へ？」
「この地球とは違う異世界にある国です。つまり貴女と私は転生者です」

「…」

ヤバイ…紳士で身分のある人だか妄想癖があったのか…これは愛華に連絡した方が…
テーブルの下でスマホを操作しようとしたら、料理が運ばれて来た、

「お昼まだでしょう⁈食べながら話しましょう」

目の前に美味しそうなフレンチのコースが出てきた。空腹に勝てず食べちゃう私って…卑しい…
他愛もない話をし食べていたら13時になった様で愛華から連絡が入った。

「出ていただいていいですよ」
「あっはい…」

出ない方が不自然だから出た。やっばり愛華からで助けてサイン出したけど、全く気付いていない。

『今何してるの？』
「お昼食べてる」
『何食べてんの？』
「フレンチの…」
『いいなぁ！』

能天気な愛華は私の気持ちを察してくれない。それどころか…

『ジークさんヤバイかもって変な事言うから連絡したけど大丈夫そうじゃん。なら私娘と買い物行くわ。また色々聞くわ！じゃーね！』

相変わらず一方的に喋って愛華は電話を切った。
溜息を吐いてテーブルにスマホを置いて、前を向いたら真剣な顔のジークさんが食事を中断して私を見つめている。

「えっと…愛華からで…」
「はい。聞こえてました」
「あ……」

愛華は無駄に声がデカいから！助けてもらう筈がピンチになった。

“がたっ”いきなり立ち上がったジークさんが私の横に来て私の左手を取り、ジークさんの指が手の甲の痣に触れると全身が温かくなる。不思議な感覚に戸惑っていると

「貴女の亡くっなった夫の左胸に2本の傷跡は有りませんでしたか⁈」
「えっ！なんで知ってるんですか？もしかして賢斗と面識があるの？」


そう。ジークさんが言った通り亡くなった賢斗の左胸に縦の5㎝程の傷跡が２本ある。小さい頃に怪我した時の傷跡。

『でも何故ジークさんが知っているの？』

疑問に思っていたら昔の事を思い出し、賢斗も私の左手の痣によく触れてた。まるで大切なものを扱うように…

『なんでいつもこの痣触れるの？』
って聞いたら
『この痣はチャンスを与えてくれ、俺に幸福を運んでくれた大切なものなんだ』
『何それ？意味不明！』
『咲は知らなくていいの！俺の唯一の秘密だから』

そう話してくれた事がある。結局、賢斗はこの秘密を教えてくれる事はなかった。


「やはり…卑怯者が転生しても貴女に付き纏っていたと思うと腹が立つ」

表情が険しくなるジークさん。思わず手を引っ込めた。すると傷付いて悲しそうな表情をするジークさん。この状況にどうしていい分からず視線逸らしたら、ジークさんは徐にスーツの上着を脱ぎネクタイを解き、ワイシャツのボタンを外し出した。

「わぁ！何やってんですか！人を呼びますよ！」

顔を背けた。ジークさんが近付いて来るのが分かる。まじヤバイ！テーブルのスマホが目に入る。
助けを呼ばないと110⁈それとも愛華⁈

また左手を取られてジークさん見たら悲しそう…
「うっ！」ジークさんの腹筋が目に入る。
シックスパック！賢斗も鍛えていて細マッチョだったけど、ジークさんは更に凄い！

「話しをしても信じてもらえない様なので、思い出してもらうのが早そうですね…」
「なっ何を⁈」

ジークさんはシャツを脱いで私の左手をジークさんの左胸当てた。すると驚く事に

「ジークさん！貴方の胸にも賢斗と同じ傷跡？いや違うこれは痣？」

次の瞬間体に電気が走った様に震える。何これ？
映像を早送りで見ている様に頭の中に見た事もない景色や人が映し出されている。誰かに抱き締められた。その男性はジークさんに似ている。

「アルフレッド！」

知らないはずなのにこの男性の名前が出てきた。一気に情報が溢れて来て頭が痛くなり気が遠くなっていく…

「思い出してくれたかぃ？愛しいエミリア…」

泣きそうな顔したジークさんのを見て何故か懐かしく思った直後に気を失った。