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第七話 脅し

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 ラナと婚約した私は直ぐに動き始める。

 この世界から帰る方法を探しに。

 国王とは不可侵を結んでいるが、精々2ヶ月ぐらいが限度だろう。

 だから、私はこの世界からの帰還方法を探す。

 その為、私はラナと一緒に王立図書館で帰還方法を探す。

 ラナはこの王立図書館で働いているので、関連しそうな本の位置が分かっている。

 なので、ラナに協力してもらい、関連しそうな本をかき集める。

 かき集めた本をラナと手分けして、調べていく。

 調べていると1つだけ見つけることが出来たのだ。

 魔王を倒すと神からの報奨が貰えるか。

 そう言えば、私の他に異世界人がいた筈だ。

 まぁ、どうでもいいか。

 私は直ぐに魔王討伐に出掛ける。

 移動は使い捨ての転移石だ。

 これで、直接行ける筈。

 ラナを家まで送った後、私は使い捨ての転移石を使用する。

 すると、見たことがない城の中に転移出来たのだ。

 タイミングが良かったのか、悪かったのか。

 なんと私と一緒に召喚された異世界人と魔王との決戦が終えた後だったのだ。

 異世界人は地に伏せ、魔王が無傷で立っている。

 魔王は私に気が付き、戦闘態勢を取ったが遅すぎた。

 次の瞬間には何も残らずに消えていた。

 この場に到着した時に既に正拳突きの構えをしていたのだ。

 それで、魔王が戦闘態勢を取る前に正拳突きをしただけだ。

 いきなりのことに血に伏せた異世界人達は唖然としている。

 突然、城の上が光が出現し、光が晴れると神だと思われる男が現れた。

 私は何の躊躇をせずに神の横ギリギリを狙い、正拳突きを放った。

 すると、上空に浮かんでいる神の右側を吹き飛ばした。

 神は顔を青ざめながら、吹き飛ばした右側の方に視線を向けていた。

 「これは脅しだ。貴方が神ならば威力は充分に分かる筈だ」

 「な、何が要求だ?」

 「まぁ、いくつかある。でも、安心してくれ。この世界をくれとかそんな馬鹿みたいな要求じゃない」

 「言ってくれ」

 「まず、1つ目は私とラナを私が元いた世界に無事に帰すこと。あ、ちなみに私が召喚された日にだな」

 「わ、分かった。次は?」

 「2つ目はラナに元いた世界での身分証だ。まぁ、イギリス出身が理想的だ。ついでにラナにも言語理解のスキルをくれ。あれ、意外と便利だから」
 
 「それも可能だが、1つ聞かせてくれ。ラナというのは王立図書館で司書していて、孤児で、貴方の婚約者か?」

 「当たり前だろう。それ以外に誰がいる?」

 「ただの確認だ。気を悪くしたら、謝罪する」

 「気を悪くはしてない。確認は大事だからな。それで、3つ目だが、2度と私とラナをこの世界に召喚するな。これで以上だ。どうだ?」

 「全て何も問題が無いが、本当にこれでいいのか?貴方は神を殺す力を手に入れたというのに」

 「神を殺すことに何の意味がある?私はただ帰りたかっただけだ。魔王を倒したのはここに神を呼ぶためだからな」

 私は魔法袋の中から使い捨ての転移石を取り出す。

 「さて、2時間後に私とラナを元の世界に。それでは」

 私は使い捨ての転移石を握り潰すと、光に包まれたのだ。

 光が晴れると私はラナの家に戻っていたのだ。

 ラナに先程のことを伝え、この世界を出る準備をしてもらう。

 持っていく物はラナ用の魔法袋の中に入れたのだ。

 準備が終わったら、私達は外に出る。

 ラナは今まで住んできた家、いや、世界に向けて頭を下げたのだ。

 私もそれに続いて頭を下げる。
 
 結構クソみたいな世界だったが、ラナと出会えたことを感謝するために。

 私達が頭を上げると同時に2時間が経ち、私達の体を光が包んだ。

 その光は目が開けられない程の眩しさになっていく。
 
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