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第十七話 過ぎたこと

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 サキュバスを倒してから夜が明け、日曜日になる。

 朝食を食べた後、食器を片付けてからリビングでゆっくりする。

 今日は何も予定がないので何をしようかと考えているとチャイムがなったのだ。

 宅急便でも来たのかと思いながら、立ち上がろうとすると先にラナが立ち上がる。

 「僕が出るよ。樹とお義母さんは座っていて」

 そう言い、ラナはリビングを早足で出て行く。

 私と母さんはラナに任せることにしたのだ。

 少ししてからラナがリビングに戻ってきたのだが、気まずそうな表情を浮かべていたのだ。

 「えっと、樹とお義母さんを訪ねて来ている人達がいるんだけど。どうする?」

 訪ねて来ている人達?

 まさか。

 私は予想を立てながら母さんと一緒に玄関に向かう。

 玄関にいる人達を見て、母さんは驚きと困惑が混ざった表情を浮かべていたのだ。

 やっぱりか。

 魅了魔法がきれて、私達のところにやってきたのか。

 私達から離れた者達とその家族。

 ラナが気まずそうな表情を浮かべていたのがよく分かる。

 取り敢えず、玄関にずっと居てもらうのも近所迷惑になるので、仕方なく家の中に入れる。

 結構の数がいるのでリビングに案内したが、全員分の椅子はないので立って貰っている。

 離れた者達の家族はラナに視線を向けていたのだ。

 「本題に入る少し前にいいか?えっと、そこの少女は?」

 そうか。

 離れた者達の家族はラナのことを知らないのか。

 「あ、そっか。僕が認知されているのは学校の中だけか。えっと、僕は樹の婚約者のラナ・シーアナと言います」

 ラナは離れた者達に頭を下げる。

 ラナの説明を求められたが、本題ではないので説明を拒否し、ここに来た理由を聞く。

 離れた者達と離れた者達の家族は順番に話し始めたのだ。

 話を纏めると約1年ぐらい操られていたというもの。

 そして、それについての謝罪とのこと。

 話を聞き終わった母さんは怒りを露わにしていたのだ。

 「今更、信じられないわ。それに何?操られてとか普通に考えて有り得ないでしょ。そんな非現実的なこと」

 母さんは私とラナの方を向く。

 「ねぇ、樹、ラナちゃん」
 
 私達は微妙な顔をするしか無かったのだ。

 私とラナの場合は魅了魔法という非現実的なことを知っているからな。

 「母さん。もう過ぎたことなのだから、気にしてない」

 そう、もう過ぎたことだ。

 もう遅いのだ。

 元に戻ることはない。

 それだけの時間が経ってしまったのだ。

 昔には戻れない。

 これが現実だ。

 それに私は離れた者達と離れた者達の家族との記憶は殆ど消えてしまった。

 だから、怒る気も責めるつもりもない。

 もう興味がないのだ。

 私から離れ、異世界で何も無い真っ白な空間で千年間に消えてしまった程度の関係だ。

 ドライかもしれないが、本当に大切な記憶なら母さんとラナの記憶同様に残った筈だ。

 残らなかったのが、示している。

 大したことではない人達だったと。

 その後、私、いや、私と母さんは離れた者達と離れた者達の家族を家から追い出す。

 もう用事が無いでしょと言い。

 追い出すときに少しだけラナの方を見てみると、誰かに視線を向けていたのだ。

 それは誰かは分からないが。

 何かしらしようと思っているんだろう。

 ラナは優しいからな。

 私にとってはどうでもいいが、もしラナが私にお願いするなら答えるだろう。

 ラナのお願いなら何でも叶えたいからな。
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