《灰海境域:ホワイトティンゴ》

――灰の海と呼ばれた境域は、かつて文明が沈んだ地。
だが今、企業が掘り返すのは“資源”ではなく、“過去の亡霊”だった。

コードネーム《ホワイトティンゴ》。
企業所属の試作機体にして、かつて“死んだはず”のレイヴンの名。
搭乗していたのは、第三中隊の名物隊長――女性傭兵《ツバメ》。
戦場で散ったその姿に、仲間たちは一度“黙祷”を捧げた。
……が、問題はここからだ。

最近、境域で活動する機体に“彼女の動き”と酷似した挙動が記録された。
白い外殻、旧式に見せかけた動き、そして――“人間臭い”反応。

誰が乗っている? ツバメなのか?
それとも、既に死んだ彼女を“演じている”何者かか?

顔は映らず、IDは全域でブラックリスト指定。
正体を探るたびに、さらに“誰かの記憶”を呼び起こすだけ。

企業の命令はこうだ――
「灰海防壁を突破し、《ホワイトティンゴ》を捕獲せよ。
ただし、その中身には触れるな。……死人が何を考えていようと関係ない」

誰が“ツバメ”で、誰が“レイジ”なのか。
命も過去も、演じることさえ“企業資産”と見なされる世界。
だが、それでも。
彼(or 彼女)は引き金を引く。黙祷なんてクソ喰らえだ。

《灰海境域:ホワイトティンゴ》
これは、名前を奪われた傭兵たちが、それでも名を遺す戦場譚。
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