『幸福とは、名を持たぬ呼吸である』

「幸福とは何か? 愛とは、誰の言葉で定義されるのか?」



異世界に転移した九重ヨウマは、九星気学と易学を操る“占い師”にして、“作家崩れ”の青年。
だが彼には致命的な欠陥があった――「自分の幸福を理解していない」。
それでも彼は、路地裏の屋台で人々に言葉を売る。
「選べ」「休め」「君の迷いは礼儀だ」――銅貨三枚で“少し軽くなる言葉”を。
やがてその行為が神殿法に触れ、「幸福を販売した罪」として告発される。

神殿裁定の場でヨウマは詭弁を展開する。
「幸福は感情ではなく、言葉の形式だ」と。
九星羅盤と文学を武器に、太宰治を思わせる皮肉と諦念で、彼は神を論破してみせる。
――「吾輩は猫である。名前はまだ無い」
漱石の一節を掲げながら、彼は言葉の価値を問い直す。
幸福を定義するのは神か、人か、それとも“形式”そのものか。

異世界×哲学×文豪リスペクト。
“希死念慮を抱く占い師”が、言葉で生を延命する。
虚無の中でそれでも生きる術を描く、異色の文芸ファンタジー。
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