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ルドリエ

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 側妃として迎えたリスベルテスが今回の一件で独自調査に乗り出してから数日。

「さて、私も私で彼女にだけ任せていないで今の自分にできることをしないとな……」

 ルドリエはルーチンワークをこなすべく鍛錬場を目指す傍ら、廊下を歩きながら一人ごちる。
 リスベルテスのおかげで魅了から解き放たれたルドリエだが、彼女の提案で今後ともしばらくは魅了に取り付かれたをすることになった。
 万が一にも魅了が解かれたことが正妃にバレると事態の究明に支障を来すらしく、ボロが出ないようにわざわざ闇属性のオーラをかけてまで偽装工作をする徹底ぶりだ。

 つまり表面上はこれまでと同じくリスベルテスに辛く当たらねばならないということ。
 この王宮の中において頼れる味方がいない彼女には酷な話なように感じられるが、かえってその方が調査をしやすいと言われるとこちらとしては指示に従うより他ない。

「せめて私だけでも彼女の理解者でなければ」

 幸いなことに魅了にかかった振りをすることは難しくない。
 元々正妃とは普段から顔を合わせる機会が多くないからだ。
 これまではそんな暇があるのなら少しでも魔法の鍛錬に勤しめとの正妃から言いつけられていたので、逆らうことなく自分は言う通りにしてきた。
 一日の大半を自己研鑽に費やし、魔力が切れると疲れてそのまま寝入る日々。
 思えば公務すら投げだしてただ強くなる、そのことだけにいつも気を揉んでいた気がする。
 無意味ではないがまさしく無駄な時間の使い方だった。
 そればかりにかまけていないで王族としてやるべきことがもっと他にもあったというのに。
 
(しかし冷静になって考えてみると、なぜ正妃は私にあのような命令を下したのだろうか?)

 とりあえず魔法の鍛錬を積むメリットとしては魔力の強化に繋がることか。
 もちろん新規魔法を習得するといった意味合いもあるが、自分が目的にしていたのは魔力の総量を底上げすることだったのは間違いない。
 ではなぜ魔力を高める必要があったのか?
 それはきっと――。

「ルドリエ、こんなところでなにをしているの」
「ーっ!?」

 心臓が跳ねた。
 件の正妃が突然目の前に現れたからである。
 考えごとをしていたせいで彼女の出現に少しも気がつかなかった。

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