54 / 224
~誘い~
おつまみ
しおりを挟む
カタカタ… …
カタカタ… …
「ふうっ… …首、痛い…」
私は急ぎの仕事を終えて…首をゆっくりと回し、オフィスに掛かっている壁時計を見上げた。
午後6時を過ぎている。
そろそろ、帰ろう…
ぐずぐずしていると、以前、残業中に何度かあったように、細野さんが部屋に来てしまうかもしれない…。
今朝の様子から、杉崎さんとの出張の話を、詳しく聞きたがっているのは明白だ…。
彼女のことだから、既に聞く対象を私一人に絞っているに違いない…。
真っ直ぐな視線で彼女に出張のことを問われれば、うまく誤魔化したり、話を逸らしたりできる自信はゼロに等しい。
「… 帰ろう… 」
主任や石田さん、杉崎さんの姿は見えず…ずっと向こうの島に、数人の社員が残っているだけだった。
デスクの上を手早く片付けながら、ほうと、ため息をつく…。
拓海が帰ってから、1週間少し… 体調に変化はない。
拓海とあんなことになった後、私は軽い混乱状態に陥って、
しばらく、何をする気にもなれなかった…。
1日経って、やっと気づいたようにパソコンで色々と情報を調べてある程度知識を得たものの、
臆病な私は、行動することすらできなかった。
結局、そのまま… そのまま、今に至る…。
まさか…たった一度だけで、そんなことはないと信じたい…。
具体的に周期などを調べるのも怖かった…
「お先に失礼いたします。」
向こうの席の社員には聞こえないとはわかっていたものの、私は小さな声で挨拶し、部屋を出ようとした。
その瞬間、目の前に、大きな影が広がる。
「あ… … すぎ、さきさん…」
もう、とっくに帰ったと思っていた杉崎さんが目の前に立っていた。
いつもの優しい視線が、私を真っすぐに見下ろす。
「あれ… もしかして、…もう、帰るとこ… ?」
まともに顔を見ることができない…思わず下を向いてしまい、視界に入るものを見つめる…。
杉崎さんは、白い袋を手にしていた。
帰ったのではなく、近くのコンビニに行っていたのかもしれない…。
でも、机上は明らかに片付いていた… 不可解に思いながらも、声を発する。
「… …は、はい… 杉崎さんは… ?」
なぜだろう… やはり、声が震えてしまう… 過度の緊張……
鼓動が早くなる…。
「水無月さん、集中して仕事してたみたいだから…もう、こんな時間だし…お腹空いてるかなって、ちょっとつまみ的なもの、買って来たんだけど…」
「あ… そ、 …そうでしたか…わざわざ、すみません… 」
杉崎さんのそんな気遣いが嬉しいと思うと同時に、申し訳ないと思った。
「うん… あ、でもちょっと、タイミング悪かったね…」
「… あの …えっと… 」
何といえば良いかわからない… 言葉が見つからない私は、また、口ごもってしまう。
「… 水無月さん…あの、この後すぐ帰る…?
何か予定、あったり…するのかな…」
「… え… 」
自然と、鼓動が早くなる…
「もし、何もないなら…良かったら、夕飯でも一緒に…どうかな…?」
「… … は、い … …」
本能だろうか…
杉崎さんに誘われて、断れるはずがない…。
私は、頭で考えるより先に、そう…承諾の返事をしていた…。
カタカタ… …
「ふうっ… …首、痛い…」
私は急ぎの仕事を終えて…首をゆっくりと回し、オフィスに掛かっている壁時計を見上げた。
午後6時を過ぎている。
そろそろ、帰ろう…
ぐずぐずしていると、以前、残業中に何度かあったように、細野さんが部屋に来てしまうかもしれない…。
今朝の様子から、杉崎さんとの出張の話を、詳しく聞きたがっているのは明白だ…。
彼女のことだから、既に聞く対象を私一人に絞っているに違いない…。
真っ直ぐな視線で彼女に出張のことを問われれば、うまく誤魔化したり、話を逸らしたりできる自信はゼロに等しい。
「… 帰ろう… 」
主任や石田さん、杉崎さんの姿は見えず…ずっと向こうの島に、数人の社員が残っているだけだった。
デスクの上を手早く片付けながら、ほうと、ため息をつく…。
拓海が帰ってから、1週間少し… 体調に変化はない。
拓海とあんなことになった後、私は軽い混乱状態に陥って、
しばらく、何をする気にもなれなかった…。
1日経って、やっと気づいたようにパソコンで色々と情報を調べてある程度知識を得たものの、
臆病な私は、行動することすらできなかった。
結局、そのまま… そのまま、今に至る…。
まさか…たった一度だけで、そんなことはないと信じたい…。
具体的に周期などを調べるのも怖かった…
「お先に失礼いたします。」
向こうの席の社員には聞こえないとはわかっていたものの、私は小さな声で挨拶し、部屋を出ようとした。
その瞬間、目の前に、大きな影が広がる。
「あ… … すぎ、さきさん…」
もう、とっくに帰ったと思っていた杉崎さんが目の前に立っていた。
いつもの優しい視線が、私を真っすぐに見下ろす。
「あれ… もしかして、…もう、帰るとこ… ?」
まともに顔を見ることができない…思わず下を向いてしまい、視界に入るものを見つめる…。
杉崎さんは、白い袋を手にしていた。
帰ったのではなく、近くのコンビニに行っていたのかもしれない…。
でも、机上は明らかに片付いていた… 不可解に思いながらも、声を発する。
「… …は、はい… 杉崎さんは… ?」
なぜだろう… やはり、声が震えてしまう… 過度の緊張……
鼓動が早くなる…。
「水無月さん、集中して仕事してたみたいだから…もう、こんな時間だし…お腹空いてるかなって、ちょっとつまみ的なもの、買って来たんだけど…」
「あ… そ、 …そうでしたか…わざわざ、すみません… 」
杉崎さんのそんな気遣いが嬉しいと思うと同時に、申し訳ないと思った。
「うん… あ、でもちょっと、タイミング悪かったね…」
「… あの …えっと… 」
何といえば良いかわからない… 言葉が見つからない私は、また、口ごもってしまう。
「… 水無月さん…あの、この後すぐ帰る…?
何か予定、あったり…するのかな…」
「… え… 」
自然と、鼓動が早くなる…
「もし、何もないなら…良かったら、夕飯でも一緒に…どうかな…?」
「… … は、い … …」
本能だろうか…
杉崎さんに誘われて、断れるはずがない…。
私は、頭で考えるより先に、そう…承諾の返事をしていた…。
10
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる