お岩でごだいます
あたくし岩は、口入屋の蓬莱屋たんの口利きであちこちのお店やお屋敷を渡り歩く下女でごだいます。還暦を越えて独り身、好奇心旺盛、お芝居を観るのが一番の愉しみでごだいます。前歯が二本ないものですから、自分では「さ」と申しているのですが、皆たまには浅草が「あたくた」、座長が「だちょう」と聞こえてしまい、申し訳ごだいません。
第一話「玉三郎様(たまたぶろうたま)」
待ちに待ったお芝居の初日。お目当てのたまたぶろうたまがご病気で休演。幕間に食べるつもりのおにぎりを食べ、土砂降りの中を帰りますと、見知らぬ若い男が上がり込んでいたのでごだいます。秀次と名乗り、追われているので匿って欲しいという聞き憶えのある声。その人は、たまたぶろうたまだったのでごだいます。
その日から、その人を秀たんと呼んで、着替えの古着を借り、総菜を二人前買い、一緒にけんちん汁を作るなど、一つ屋根の下で夢のような時を過ごしたのでごだいます。
遊び人の金次こと金たんから、たまたぶろうたまを巡る引き抜き騒動があると聞きました。勝手に年間の公演を組む江戸三座に、たまたぶろうたまは不信を抱き、そこに養い親の柳太郎たんも荷担していると誤解していました。
実は柳太郎たんは、暗躍する尾張の座元から、たまたぶろうたまを守ろうとしたのです。
あたくしは、舞台に戻るよう、こう申し上げたのでごだいます。
「お芝居も人生も幕間が大事」と。
第二話「故郷は佐久(ふるたとはたく)」
次にご紹介いただいたのは日本橋の履物問屋「信州屋」の下女のお仕事でごだいました。
信州屋たんご夫婦には跡継ぎがなく、近く店を畳んで故郷に帰るとか。お江戸は楽園でごだいます、こんなに楽しいお江戸をどうして離れるのでしょう。
ところが、よくよくお話を聞きますと、故郷に帰ってどうするのか何も決まっておらず、奥たまのお気持ちさえ確かめていないのでごだいます。
古着屋で身の回りの物の処分をなたった奥たまをこっそり尾行しますと、奥たまは初老の男と向島の庵に消えました。不貞の香りでごだいます。その晩、奥たまは旦那たまに、故郷には帰らない、江戸に残りたいと伝え、閉店の日の晩、奥たまは家を出ました。
そこに事件です。盗賊に土蔵が破られ無一文に。抜け殻のような旦那たまと、心配して駆けつけた奥たまに、土蔵でみつけた古びた布袋をお見せ致しました。袋の中身は、初めての薮入りの日に行った増上寺の境内の玉砂利でした。お二人の宝物なのでごだいます。きっと、やり直せるはずでごだいます。
第一話「玉三郎様(たまたぶろうたま)」
待ちに待ったお芝居の初日。お目当てのたまたぶろうたまがご病気で休演。幕間に食べるつもりのおにぎりを食べ、土砂降りの中を帰りますと、見知らぬ若い男が上がり込んでいたのでごだいます。秀次と名乗り、追われているので匿って欲しいという聞き憶えのある声。その人は、たまたぶろうたまだったのでごだいます。
その日から、その人を秀たんと呼んで、着替えの古着を借り、総菜を二人前買い、一緒にけんちん汁を作るなど、一つ屋根の下で夢のような時を過ごしたのでごだいます。
遊び人の金次こと金たんから、たまたぶろうたまを巡る引き抜き騒動があると聞きました。勝手に年間の公演を組む江戸三座に、たまたぶろうたまは不信を抱き、そこに養い親の柳太郎たんも荷担していると誤解していました。
実は柳太郎たんは、暗躍する尾張の座元から、たまたぶろうたまを守ろうとしたのです。
あたくしは、舞台に戻るよう、こう申し上げたのでごだいます。
「お芝居も人生も幕間が大事」と。
第二話「故郷は佐久(ふるたとはたく)」
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古着屋で身の回りの物の処分をなたった奥たまをこっそり尾行しますと、奥たまは初老の男と向島の庵に消えました。不貞の香りでごだいます。その晩、奥たまは旦那たまに、故郷には帰らない、江戸に残りたいと伝え、閉店の日の晩、奥たまは家を出ました。
そこに事件です。盗賊に土蔵が破られ無一文に。抜け殻のような旦那たまと、心配して駆けつけた奥たまに、土蔵でみつけた古びた布袋をお見せ致しました。袋の中身は、初めての薮入りの日に行った増上寺の境内の玉砂利でした。お二人の宝物なのでごだいます。きっと、やり直せるはずでごだいます。
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