地の果てまで、悪役令息
「レオンハルト・ヴァルツ。今宵をもって、あなたとの婚約を破棄いたします」
王宮の夜会で、第一王女エルネスタから婚約破棄を告げられた侯爵令息レオンハルト。
理由は、男爵令息ミシェルへの嫌がらせと殺害未遂。死んだ鼠、落下した植木鉢、細工された馬車の車軸。並べられた証拠には、いずれもヴァルツ侯爵家の影があった。
だが、レオンハルトには身に覚えがない。
証拠の弱さを指摘し、この断罪が仕組まれたものだと見抜いた彼は、煙幕を残して王宮から逃亡する。
その行く先をことごとく先回りするのは、王女付き筆頭騎士ユリウス・クレイツ。
レオンハルトとエルネスタより一歳年上の幼馴染であり、幼い頃からレオンハルトの命令に従い、その無謀を補い、剣では一度も負けなかった男。今では法と規律を重んじ、「白い剣」と称えられる正義の騎士である。
ユリウスは知っている。
レオンハルトがどこへ逃げるか。
何を捨て、何だけは守ろうとするか。
どの道を選び、最後に誰のもとへ戻るのか。
王都全体を使った追跡の末、レオンハルトは審理の場へ立たされる。
被害者であるミシェルの証言によって殺害未遂の証拠は崩れ始めるが、レオンハルトは無実の善人ではなかった。密輸、贈賄、司法への圧力、そして現女王を排除するための準備。冤罪の奥から、彼が自ら選んだ罪が姿を現す。
すべては、男であることを隠して王女として生きるエルネスタ——エルネストを王にするためだった。
自らの王のため、悪役であることを選んだレオンハルト。
正義を掲げながら、思惑を隠し彼を追うユリウス。
そして、全てを手に入れるために微笑みをたたえるエルネスト。
同じ未来を見て育ち、やがて異なる未来を選んだ三人の幼馴染。
断罪の夜に始まった追跡は、やがて法と王位、忠誠と執着、そして「誰が誰のものなのか」を巡る争いへ変わっていく。
これは、自分を知り尽くした男から逃れるため、名前も身分も、それまでの自分さえ捨てて地の果てを目指す悪役令息の物語。
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