『スライム』しか召喚できない召喚士LV1★☆☆☆☆☆☆が初ダンジョンで脱出不能のデストラップ『深過ぎる穴』に落ちました

第54話 ボックススライム

「この合成って、何だろう？」

　次に倒すスライムを選んでいるけど、ボックススライムが気になる。
　合成って聞いたことがないけど、ボックスなら箱だ。箱スライムだ。

「箱なら楽勝かも。カエル油で燃やしちゃえ！」

　盾の上にカエル油を27個も並べて準備万端だ。
　放り投げて、岩の雨と炎の球で倒してやる。
「召喚！」と唱えると、魔法陣から木製の宝箱が現れた。

「あれ？　動かないぞ？」

　魔法陣から現れたボックススライムがピクリとも動かない。
　プラチナスライムと同じで、動けないスライムなのかもしれない。
　とりあえずカエル油を放り投げて、燃やしてみようかな？

「えいッ！」と少し離れた位置から、盾の上のカエル油を放り投げた。
　ボックススライムにカエル油の球が落ちていく。
　けれども、「いただきます！」とボックススライムの蓋ふたが開いた。
　牙のついた蓋を動かして、犬みたいに走り回って、バクバクとカエル油を全部食べてしまった。

「もぐもぐ……もぐもぐ……うーん、合成終わり」
「えっ？」

　カエル油を食べて、合成終わり？　どういう意味だろう？
　違う違う！　とにかく今は戦わないと！

「お前も合成してやる！」

　牙をガチガチ鳴らして、ボックススライムが向かって来た。
　何だか合成ってヤバイ気がする。合成されたら、間違いなく死んじゃうぞ。
　アイテムポーチから剣を抜いて、ボックススライムの右側の空間を狙った。

「《疾風突き！》」

　ドォーン！　と加速して、何もない空間に剣先が引っ張られていく。
　あんな牙見せられて、正面から突きなんて怖くて出来ない。腕ガブリで、右腕が食いちぎられる。
「やあッ！」と加速の勢いを利用して、左手の盾で殴りつけた。

　ドゴォン！

「がふつ！　何すんだ！」

　強烈な一撃だと思ったのに、ちょっと怯んだだけだった。
　頑丈な宝箱だ。すぐに噛みつこうと飛びかかって来た。
「なぐぐぐっ！」と盾で受け止めると、素早く剣を振り上げた。

「《メタル斬り！》」

　ドゴォン！　蓋の頭に剣を振り落として、蓋を強引に閉じさせた。
　噛みつき攻撃を封じたぞ。

「んぐぐぐっ、この野朗ッ！」

　やっぱり頑丈だ。木箱なのに剣で切っても、ちょっと傷ついただけだ。
　でも、動き自体は分かりやすい。盾でしっかり受け止めれば、反撃し放題だ。

「よぉーし！　かかって来い！」

　飛びかかって来るボックススライムに盾と剣をしっかり構えた。
　何度だって受け止めて、何度だって切ってやるぞ！

　……
　…

「ハァハァ！　プラチナスライムに比べたら、楽勝すぎだよ！」

　倒すのに半日はかかると思っていたのに、たったの2時間で倒しちゃった。
　僕の盾防御からの剣反撃が完璧すぎたみたい。

【濃縮カエル油：通常のカエル油の27倍の濃度。取り扱い注意】

　それはそうとボックススライムを倒したら、こんなの落としたぞ。