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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Karma-因果応報-/5
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可能性から導き出したら、今ここにいるはずのない人物を見つけて、冷静な水色の人はついっと細められた。
「ラジュ天使……なぜ、こちらにらっしゃるのですか?」
シュトライツ王国にいるはずではと、崇剛は思った。
相変わらず何を考えているのかわからないようににっこり微笑んで、ラジュは珍しく素直に情報を渡してきた。
「あちらは囮みたいなものですから~、うふふふふっ」
「そうですか」
崇剛は間を置くための言葉を使い、廊下を歩きながら情報を整理する。
シュトライツ王国に、ラジュ天使は行っていたのは見せかけだったのかもしれない。
そうなると、シュトライツ王国は崩壊するという可能性が98.78%でしたが――
可能性の数値は変わりませんが、本来の目的はそちらではなく……。
別の非常に大きなことが起きているという可能性が出てきた。
邪神界が正神界に故意に動かされている疑いがある。今回の出来事は、雨が降るほどの駆け引きが神レベルで交差しているようだった。
はるか未来を見ることができる神によって、緻密に計算された戦略と戦術。裏の裏をかく作戦は何重にも張られているのかもしれない。
天使であっても、大きな計画のひとつの歯車でしかない。人間にはすぐにはわからないほど複雑化している。
しかも、物事はまだ動いている。可能性の数値は簡単にひっくり返ることもあり得る。予断を許さない状況だった。
天使とともに二階の廊下を優雅に歩いてゆくと、崇剛が出した可能性の数値が低いものが現実となった。
「なぜ、我も起こすのじゃ? 誠、面白き夢を見ておったのに……」
瑠璃は眠たそうな目をこすりながら、空中を横滑りしてきた。
元の前世を見るための審神者。それは、天使のラジュがひとりいれば問題はない。昼夜逆転している聖女は必要ない。それなのに、天使は守護霊を無理やり起こしていた。
ラジュはいつもと違って、聖女へ優しく微笑んで、珍しくまともな言葉を口にした。
「私は途中で戻るかもしれませんからね」
崇剛の心の内に、ひとつの可能性が浮かび上がった。冷静な水色の瞳は細められる。
ラジュ天使が正神界を裏切っている――
すなわち、ラジュ天使の居場所は、邪神界である。
あの赤目でボブ髪の男は、正神界ではなく敵側だった。ラジュが反逆者。晴天の霹靂だ。
聖女は眠気がひどく、崇剛の心の声を聞くこともなく、ラジュの言った言葉をそのまま受け取った。
「そうかの。ラジュも忙しそうじゃの」
崇剛はいつもの癖で、あごに指の関節を当てて、思考し始める。
(ラジュ天使が邪神界側へ情報を漏洩させた……。その日付が、三月二十四日――かもしれない)
守護天使とともに過ごしてきた、三十二年の月日が走馬灯のように浮かんでは消えてゆく。最後は離反にたどり着いてしまった。
それでも、冷静な頭脳で動揺するわけでもなく、さっき交わされた会話と今までの事実、とある可能性の数値を変化させて、デジタルな頭脳へ、崇剛は無感情に上書き保存した。
やがて、診療室のドアの前へ三人はやってきた。崇剛、瑠璃、ラジュは扉を見つめ、一旦立ち止まる。
未来をある程度先まで見える、瑠璃とラジュはこの部屋の中で何が起きるのかすでにわかっていた。
瞬をこさせないように、涼介に命令を下した崇剛もだった。
どんな戦いが診療室という戦場で待ち受けているのか考えると、三人ともどうやってもため息が出てしまうのだ。
それでも、進むしかない。
全てを記憶する冷静な頭脳の持ち主――聖霊師は包帯を巻いた治りかけの傷がある手で、懐中時計をズボンのポケットからそっと取り出した。
神経質な顔の前へ持ってきて、久しぶりの再会を果たし、肉眼で時刻を確認した。
「五月二日、月曜日、十時一分十二秒――。さあ、仕事です」
崇剛の神経質な手でドアが押されると、真っ白な頭と腰が曲がってしまったのかと思うほど、猫背の男の後ろ姿が目に入った。
崇剛、瑠璃、ラジュにとっては過去に何度か体験している症状だった。特に驚くこともない。
「ラジュ天使……なぜ、こちらにらっしゃるのですか?」
シュトライツ王国にいるはずではと、崇剛は思った。
相変わらず何を考えているのかわからないようににっこり微笑んで、ラジュは珍しく素直に情報を渡してきた。
「あちらは囮みたいなものですから~、うふふふふっ」
「そうですか」
崇剛は間を置くための言葉を使い、廊下を歩きながら情報を整理する。
シュトライツ王国に、ラジュ天使は行っていたのは見せかけだったのかもしれない。
そうなると、シュトライツ王国は崩壊するという可能性が98.78%でしたが――
可能性の数値は変わりませんが、本来の目的はそちらではなく……。
別の非常に大きなことが起きているという可能性が出てきた。
邪神界が正神界に故意に動かされている疑いがある。今回の出来事は、雨が降るほどの駆け引きが神レベルで交差しているようだった。
はるか未来を見ることができる神によって、緻密に計算された戦略と戦術。裏の裏をかく作戦は何重にも張られているのかもしれない。
天使であっても、大きな計画のひとつの歯車でしかない。人間にはすぐにはわからないほど複雑化している。
しかも、物事はまだ動いている。可能性の数値は簡単にひっくり返ることもあり得る。予断を許さない状況だった。
天使とともに二階の廊下を優雅に歩いてゆくと、崇剛が出した可能性の数値が低いものが現実となった。
「なぜ、我も起こすのじゃ? 誠、面白き夢を見ておったのに……」
瑠璃は眠たそうな目をこすりながら、空中を横滑りしてきた。
元の前世を見るための審神者。それは、天使のラジュがひとりいれば問題はない。昼夜逆転している聖女は必要ない。それなのに、天使は守護霊を無理やり起こしていた。
ラジュはいつもと違って、聖女へ優しく微笑んで、珍しくまともな言葉を口にした。
「私は途中で戻るかもしれませんからね」
崇剛の心の内に、ひとつの可能性が浮かび上がった。冷静な水色の瞳は細められる。
ラジュ天使が正神界を裏切っている――
すなわち、ラジュ天使の居場所は、邪神界である。
あの赤目でボブ髪の男は、正神界ではなく敵側だった。ラジュが反逆者。晴天の霹靂だ。
聖女は眠気がひどく、崇剛の心の声を聞くこともなく、ラジュの言った言葉をそのまま受け取った。
「そうかの。ラジュも忙しそうじゃの」
崇剛はいつもの癖で、あごに指の関節を当てて、思考し始める。
(ラジュ天使が邪神界側へ情報を漏洩させた……。その日付が、三月二十四日――かもしれない)
守護天使とともに過ごしてきた、三十二年の月日が走馬灯のように浮かんでは消えてゆく。最後は離反にたどり着いてしまった。
それでも、冷静な頭脳で動揺するわけでもなく、さっき交わされた会話と今までの事実、とある可能性の数値を変化させて、デジタルな頭脳へ、崇剛は無感情に上書き保存した。
やがて、診療室のドアの前へ三人はやってきた。崇剛、瑠璃、ラジュは扉を見つめ、一旦立ち止まる。
未来をある程度先まで見える、瑠璃とラジュはこの部屋の中で何が起きるのかすでにわかっていた。
瞬をこさせないように、涼介に命令を下した崇剛もだった。
どんな戦いが診療室という戦場で待ち受けているのか考えると、三人ともどうやってもため息が出てしまうのだ。
それでも、進むしかない。
全てを記憶する冷静な頭脳の持ち主――聖霊師は包帯を巻いた治りかけの傷がある手で、懐中時計をズボンのポケットからそっと取り出した。
神経質な顔の前へ持ってきて、久しぶりの再会を果たし、肉眼で時刻を確認した。
「五月二日、月曜日、十時一分十二秒――。さあ、仕事です」
崇剛の神経質な手でドアが押されると、真っ白な頭と腰が曲がってしまったのかと思うほど、猫背の男の後ろ姿が目に入った。
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