フィックスド辺境伯家の秘密(元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎)

星 佑紀

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とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0002:勝負とパトリックの思惑

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 ──ここはフィックスド辺境伯家、裏山の中腹。──

 ──裏山の中腹には、キャンプができそうな広場があり、中央を避けるように立派な天幕が所狭しと並んでいる。──

 ──そして広場の中央には、若い青年達がわらわらと集まり、中心地にいるとある二人を囲んで見守っていた。──


「三本勝負でケリをつけようか。(バサっと上着を脱いで酔いしれた表情のパトリック)」

「いや、ちょっと待ってください‼︎ この、を外してもらっていいですか?(まだパトリックの謎の能力によって縛られているモヒカン青年)」

「ええええー、でもさ、……それを外すと、襲ってくるでしょう?(モヒカン君の生まれ持ったポテンシャルは計り知れないからな。 慎重なパトリック)」

「当たり前です‼︎ 命をかけた勝負なんですから‼︎ そうですよね、アニキ?(パトリックに噛み付くモヒカン青年)」

「えっと、……副長は、一旦落ち着け。……そしてパトリック、……副長の力を緩めてやってください。(二人の間に入ってアタフタしてるノア)」

「…………わかったよ。(素直に力を解くパトリック)」

 ──モヒカン青年は自由になった‼︎ ──

「アニキ、ありがとうございます‼︎(モヒカン青年)」

「……無茶しないようにな。(内心、モヒカン青年のことを心配してるノア)」

「よしっ、じゃあ、モヒカン君、勝負だよ‼︎」

「望むところです‼︎(張り切るモヒカン青年)」

 ──モヒカン青年とパトリックは、決闘を始めるため、お互いに睨み合いながら、中心の仕切り線に立った‼︎ ──

「……では二人とも、お互いにほどほどのところで止めてくださいね。レディ、ゴー‼︎(決闘の開始を告げるノア)」

 ──言うや否やパトリックの瞳孔がピカッと煌めく‼︎ーー

 ──モヒカン青年の身体は見えない力によってガバッと抑えられ、そのままうつ伏せになって気絶してしまった⁉︎ ──

「「「────っ⁉︎(ぽかーーんな仲間たち)」」」

「えええー、いやーー、暴力こわいーー。(謎の怯えた表情でモヒカン青年の周りをうろちょろするパトリック)」

「……。(いやいや、副長を気絶させたのは、パトリックさんですよね⁉︎ パトリックに心の中でツッコむノア)」

「ああーー、今日一番に怖かったよーー。(謎の怯えた表情で、モヒカン青年を抱き上げて、広場の隅っこに移動し、大木の麓にモヒカン青年を下ろしてから、見えない縄でモヒカン青年を大木に縛りつけるパトリック)」

「…………。(ぽかーーんなノア)」

「アニキ‼︎ モヒカン君は、戦闘不能だから、僕の勝ちでいいかな‼︎(しゃがんだままノアへ進言するパトリック)」

「…………。(ええええええ⁉︎ 悩むノア)」

「ほら、モヒカン君の安全を考えて、とりあえず僕の勝ちにしておこう‼︎(モヒカン青年のモヒカンをわちゃわちゃ触りながら言うパトリック)」

「……そうですね。(後で副長には、俺から謝っておけばいいか。 パトリックの流れに抗うと大変なことになりそうだから、とりあえずパトリックの言いなりになるノア)」

「ッシャアーー‼︎(立ち上がりガッツポーズをキメる)」

「パトリックさん、今回は、あなたの勝ちでいいですけどね、次からはフェアな感じでお願いしますよ。(副長のメンツがあるからな。 ちゃんと仲間のことを考えてるノア)」

「(トコトコノアのところまで歩いてきて)わかってますよ、アニキ‼︎(ノアの肩に手を置くパトリック)」

「俺は、仲間同士の争いは大嫌いですからね。頼みますよ、パトリックさん。(自身の肩に置かれてるパトリックの手を振り落としたいが怖くてできないノア)」

「任せてくださいよ、アニキ‼︎ 僕、いろいろ、みんなのこと考えているんで‼︎(にんまりパトリック)」

「……何を考えているんですか?(パトリックがとても聞いて欲しそうな顔をしてたから、空氣を読んだノア)」

「よくぞ聞いてくれましたね‼︎ みんなをただの暴走族から、ヒーローにイメージチェンジさせることができる、とっておきの秘策ですよ‼︎(とても悪い顔なパトリック)」

「………………?(困惑ノア)」

「………………?(ぽかーーんな仲間達)」


 ◇  ◇  ◇


「じゃあみんな、今から一枚の紙を配るから、なくさないでね‼︎(ニタニタ悪そうな顔で小さな紙を配るパトリック)」

「……。(パトリックにされるがままな仲間達)」

「はい、アニキはこれね‼︎(ノアに小さな紙を配るパト)」

「ああ、ありが……。(紙の文面を見て驚愕ノア)」

 ──文面は『高級アルバイターの紹介状』である。──

「──っ‼︎ パトリックさん、この紙は⁉︎(慄くノア)」

「これは、そこに書かれている会社に顔パスで働きにいける紹介状だよ‼︎(ウインクするパトリック)」

「────っ⁉︎(びっくりする仲間達)」

「なななんで、これを俺らに⁉︎(挙動不審なノア)」

「……実はね、人手が足らないんだ。(パトリック)」

「そんなバカな⁉︎ ……大学校出身じゃないと、会社から門前払いされるって、俺たちは知っていますからね⁉︎(パトリックの言うことを信じてないノア)」

「そこなんだよね。……ホント、馬鹿な大人ばかりで、悩みの種なんだよ。……でも、大丈夫。みんなは、僕の会社に所属しているという名目で、出向してもらうだけだから、門前払いはされないよ。僕を信じてほしい。(やや疲れた表情のパトリック)」

「…………パトリックさんの会社に所属ってことは、派遣社員ということですか? それって派遣切りにあうのではないですか?(かなり慎重なノア)」

「さすがアニキ、……世間の問題点をよくぞ指摘してくれたね‼︎ その問題もちゃんとクリアしているよ! 僕と提携を結んでる他社だけに関して言えば、契約半ばで勝手に切るような会社ではないから、安心してほしい。それに、この紹介状に書かれている通り、『高級』な仕事人だからね! お給料も高めに設定してるし、それに、僕の会社が仲介手数料を取ったりは一切しないから、各会社から出たお給料は、全てみんなの手元に残るよ‼︎(なかなか良いことしか言わない、パトリック)」

「…………。(なんか怪しい。 疑ってるノア)」

「……アニキ、パトリックさんを信じてみませんか?(とある青年)」

「────っ⁉︎(ええええ⁉︎ どどどうした⁉︎ ノア)」

「俺たち、一生で一度だけでいいんで一般の人たちと同じように働いてみたいんです‼︎(ノアに訴えかける青年)」

「そうですよ、アニキ‼︎ このままずっと、アニキに頼りっぱなしなんて、いやです‼︎ アニキの役に立てるように、俺たちも頑張りますから、やらせてください‼︎(青年)」

「みんな……。(涙腺を刺激されるノア)」

「……アニキ、やっちゃいましょうや‼︎(ノアの肩に手を置くパトリック)」

「……お願いします、パトリックさん。(みんなの熱意に折れたノア)」

「そうこなくっちゃね‼︎(きゅるるんパトリック)」

「ですが、俺の仲間に何かしらの危害があれば、辞めさせてもらいますから、そのつもりでお願いします。(仲間想いなノア)」

「わかってるよ。……あと、文字の読み書きが出来る人はいるかな?(パトリック)」

 ──と、そこにいる全員が手を挙げた‼︎ ──

「ほええー、識字率百パーセントとは、すごいな‼︎(感心するパトリック)」

「アニキが教えてくれましたからね‼︎(ドヤる青年)」

「アニキの教え方は上手いんですよ‼︎(ドヤる青年)」

「………。(照れて俯くノア)」

「うんうん、いいよ、いいよ‼︎ 今すぐに手続きしに行けるよ! このまま勢いに任せて行こうよ、アニキ‼︎(テンション爆上がりなパトリック)」

「……そうですね。早く行って、試してみましょう。皆、街に行く身支度をしてきてくれ‼︎(ノア)」

「ラジャーーーー‼︎(ノアの仲間達)」

 ──ノアの仲間達は各々の天幕へ入って行った‼︎ ──

「勿論特攻服でも大丈夫だからね‼︎(きゅるるんパト)」

「いえ、ごく普通の服もあるので、俺も着替えてきます。(パトリックから逃げようとするノア)」

「(ガシッとノアの両肩を掴んで)大丈夫、大丈夫‼︎ ノアの出向場所は、特攻服オッケーだから、このままでいいよ‼︎(ノアに馴れ馴れしいパトリック)」

「…………そうですか? なら、特攻服のままで行きますね。……あと、副長の分の紹介状は、俺が持っておきましょうか?(怪訝ながらも、パトリックと会話するノア)」

「ううん、僕が直接渡しておくから、心配しないでね‼︎(彼は要注意人物だからな。 不穏なことを考えてるパト)」

「…………?(なんか怪しい。 ノア)」

「とりあえず今日は、一人ずつ挨拶周りしていくからね、気楽にしてね‼︎(ごまかすパトリック)」

「……皆のことをよろしくお願いします。(ペコリノア)」

「うんうん、よろしく、よろしく‼︎(パト)」


 ──ノアと愉快な仲間達、就職する‼︎ ──



【おまけ】

 ──数刻後。──

 ──とある大木の麓にて。──

「……おのれ、パトリック・め。……もう少しだったのに、俺の邪魔をしやがって……。諸共、してくれるわ‼︎(鬼のような形相のモヒカン青年)」

 ──ノアの知らないところで、何かが起こっている⁉︎ ──
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