フィックスド辺境伯家の秘密（元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎）

とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0010：大切な人のために

　──ここはフィックスド辺境伯家、裏山広場。──

　──ときは、打ち上げが終わった翌日の早朝。──


「先輩、準備はよろしいですか？（キリッとノア）」

「はい。……ペンさん、短い間でしたが、本当にお世話になりました。……美味しいお肉をご馳走してもらって、尚且つ、素晴らしい天幕に泊まらせていただき、感謝感激ですわ！（スッキリした表情のとある女性）」

「いえ、先輩は、命の恩人なので、当たり前のことですよ！　喜んでいただいて、光栄です。（照れてるノア）」

「ふふふ、……朝帰りは、生まれて初めての経験でしたから少しドギマギしましたわ。（嬉しそうな女性）」

「──っ‼︎　すすすみません！　結果的に朝帰りさせてしまうことになってしまって……。嫁ぎ先の家から、何か言われたりはしないでしょうか？（冷や汗ノア）」

「大丈夫です。……嫁ぎ先の旦那様は、毎晩朝帰りをしていらっしゃるみたいですからね。（あたたかく微笑む女性）」

「…………。（心配だ。朝帰りするような輩が、先輩の夫になるだなんて。　困り眉ノア）」

「……けれど、……朝帰りも、悪くありませんわね。とても楽しかった。……ペンさんたちのおかげで、旦那様の気持ちが少しだけわかった氣がします。ペンさん、ありがとうございました。（ペコリ女性）」

「こちらこそです。……先輩のおかげで、仕事を覚えることもできましたし、……なにより、大切なものを見つけることができました。（真剣なノア）」

「ペンさん……。（うるうるな女性）」

「フローレンス領に行っても、お元氣で。（微笑むノア）」

「はい。……ペンさんも、世界一の仕分け職人を目指して頑張ってくださいね！（微笑む女性）」

「はい！（やっぱり先輩は、俺にとっての女神だ‼︎）」

「私は、最後のお仕事を早めに始めようと思いますので、ここで失礼します。（スチャッと荷物を手に持つ女性）」

「あの、俺も今から出勤するつもりだったんで、一緒に行きませんか？　丁度、郵便局の自転車が二台あるので。（自転車置き場を指し示すノア）」

「そうですわね。一緒に行きましょうか‼︎（喜ぶ女性）」

「はい！　……そういえば、局長さんは、とある事情で、昨日の打ち上げ前に、郵便局に帰られたみたいなんです。……もしかしたら、まだ郵便局にいらっしゃるかもしれません。（急いで言うノア）」

「確かに昨日は、何故だか慌てたご様子で、郵便局に戻られましたね。局長さんは、お外でのお仕事の方が多いので、今しか、挨拶できるチャンスは無いのかも。（神妙女性）」

「急ぎましょう‼︎（キリッとノア）」

「ええ！（キリッと女性）」

　──と、そこへモヒカン青年キースがやってきた‼︎──

「アニキ、おはようございます！（毟られた後のキース）」

「おう、キース、……悪いが、俺は、先輩と仕事に出てくるから、昨日言ったことを、よろしく頼む。（小声なノア）」

「了解です！　アニキ、姐さん、良いご武運を‼︎（大袈裟に送り出すキース）」

「ああ、行ってくる‼︎（元気なノア）」

「モヒカン様、行ってきまーす‼︎（ノリノリな女性）」

「いってらっしゃいませー‼︎（独り残るキース）」

　──自転車に乗った二人は、郵便局へ急いだ‼︎──


　◇　　◇　　◇


　──ここはフィックスド辺境伯領一の郵便局裏。──

「「おはようございます、局長さん‼︎（ノアと女性）」」

「二人とも、おはようございます！……レイさんは、今日で最後だったね。（徹夜してる局長）」

「はい。……局長さん、短い間でしたが、本当にお世話になりました。ここで得た思い出は、一生忘れませんわ。（キリッと女性）」

「そう言ってもらえると、とても嬉しいよ。……先に、お給料を渡しておこうね。（微笑みながら、分厚い封筒を女性に渡す局長）」

「────っ⁉︎　こここんなにも、いただいてよろしいのですか⁉︎（びっくりする女性）」

「いいよいいよ。……今回は、新人教育料も入っているからね。フローレンス領に行っても、元氣で頑張ってね。（にこやかな局長）」

「はい！　局長さん、ありがとうございました！（急いで実家へ全額送金しますわよ！　深く礼をする女性）」

「それと、フローレンス領に入る場所に設置された関所の取り締まりが、最近特に厳しいみたいだから、氣をつけてね。（少し心配げな局長）」

「はい。気を引き締めて行きますわ。（実のところ、関所で出すパスポートを持っていない私。……前回は、山中を通ってあちら側に渡ったので、今回も大丈夫だと思いますわ。　普通に法を犯してフローレンス領に入ろうとする女性）」

「私は、ちょっと今から用事があるから、お見送り出来ないけど、レイさんのご武運を願っているよ。（寂しげ局長）」

「局長さん、何から何まで、本当にありがとうございました。（キリッと女性）」

「（局長の背後から）局長、お客様がいらしております。（受付のお姉さん）」

「わかった。……それでは、二人とも、今日は、仕事無しだから、そのまま退社してくださいね。（微笑む局長）」

「「えっ……⁉︎（びっくりノアと女性）」」

「あいにく、仕分けロボが壊れてるから致し方ないんだ。だから、二人で街を楽しんでおいで。（優しい局長）」

「「────っ‼︎　あ、ありがとうございます‼︎」」

　──局長は、受付嬢と一緒に退出した！──

「ペンさん……。（ノアを見つめる女性）」

「先輩……。（頭が真っ白なノア）」

「とととりあえず、実家にお金を送金したいので、銀行に行ってもいいでしょうか？（少し動揺してる女性）」

「そうですね、行きましょう‼︎（キリッとノア）」

　──と、そこへ、パトリック殿下が入ってきた‼︎──

「お嬢さん、まだ此処にいたんだね！　よかったよかった‼︎（かなり慌てた様子のパトリック殿下）」

「どどどうしたんですか、パトリック殿下⁉︎（なんでこんなに慌ててるんだろう？　嫌な予感がするノア）」

「いやさ、ここフィックスド辺境伯領と、フローレンス領の境界沿いに設置されてる関門が、何者かによって、燃やされててね。……お嬢さん、今日フローレンス領に行くって言ってたから心配になっちゃってさ。（曇り顔のパトリック殿下）」

「パトなんとやらさん、お心遣い、ありがとうございます。……実は私、パスポートを持っていないので、山中を通ってフローレンス領に入る予定でしたので、心配ご無用ですわ。（殿下の名前を聞き取れていなくて、殿下のことを一般庶民だと思っている女性）」

「──っ⁉︎　ちょっと待って‼︎　山中の中は、もっと危険だよ⁉︎　今、その関門を燃やした何者かが、山中に逃げ込んでるっていう情報も入ってきてるからね！（顔面蒼白殿下）」

「「────っ⁉︎（青褪めるノアと女性）」」

「お嬢さん、悪いことは言わないから、暫くフローレンス領には、行かない方がいい。（神妙殿下）」

「ですが……。（今日、フローレンス領に入らないと、非常にまずいのです。どうすればいいの⁉︎　悩む女性）」

「………………大丈夫。（覚悟を決めたノア）」

「うん？　どうしたの？（ノアを見る殿下）」

「俺たちが、先輩を、フローレンス領まで送り届けます‼︎（キリッと漢の顔をしたノア）」

「「────っ‼︎（ハッとするパト殿下と女性）」」


「テロを引き起こす輩には、先輩の指一本たりとも触れさせません‼︎　行きましょう！　先輩‼︎（心の中に、あたたかくてやさしい炎を灯すノア）」

「…………はい‼︎（覚悟を決めた女性）」


　──果たして、女性は無事、境界を越えられるのか⁉︎──