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91. 初めてのデート
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*長文回です
職場を出て地下街を通り、デパートの地下出入り口へと着く。同じように仕事帰りっぽい様子の人たちで食料品街、いわゆるデパ地下は混雑していた。泰樹くんは明らかに来慣れていない俺の腰に手を回した状態で、はぐれないように惣菜売り場へと引っ張っていく。
出入り口周辺が一番混んでいたようで、ある程度中へ進むと泰樹くんに引っ張ってもらわなくても大丈夫になった。それでも泰樹くんは俺の腰を引き寄せたままで、俺の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれているみたいだった。
(でも、人前でこんなにくっつくのは、ちょっと困るんだけど……!)
ちらちらとすれ違う人たちからの視線を感じる。この子は自分がどれだけ目立つのかわかっていないのでは? 何より、俺は、宏樹とだってこんなに密着して出歩いたことなんてない。人前でこうも密着されると、何というか照れるし、もし病院職員とか患者さんに見られたらと思うと焦りが出る。
体をよじって離れようとしても、節ばった手は俺の腰からまったく動かない。抗議の意味を込めて泰樹くんを見上げると、彼は少し屈んで俺に耳打ちをした。
「真緒ちゃん」
「な、何?」
「はぐれるのは嫌だから、離さないからね」
「…………はい。」
「今日は俺のお祝いなんだよね。真緒ちゃんとデートできて嬉しいよ」
語尾が弾んで、泰樹くんはすこぶる機嫌が良さそうだった。垂れ気味の目を細めて、口角はがっつり上がっている。
いや、それよりもデート。デート?
今この子、デートって言いましたか。デート。デート? デートって何だっけ!?
仕事帰りに待ち合わせて、
いつもは行かないお店に行って、
くっついて歩く……
……うん、デートだ。よく本で読むようなデートだ?!
宏樹とは七歳で婚約してからというものの、デートなんて名前のつくことはしたことがなかった。お互いの家で、食事をしたりお菓子を食べたり、宿題をしたり。何なら時折家族も交えてのその数時間は健全そのもので楽しかったけれど、やっぱりあれはデートじゃない。
じゃあ、この泰樹くんとの〝お出かけ〟が、俺にとって初めてのデート……ということになるんだろうか……?
「あ。まだ早かったか」
ぐるぐる考え込んでいる俺を尻目に、泰樹くんは明後日の方向を見ながらつぶやいた。
「早かったって、何が?」
「――ほら。上見て、上」
「上?」
泰樹くんが指さした方向を見れば、来週から最上階の催事スペースで始まる予定のバレンタインフェアのポスターが吊られている。
「……バレンタインって、もうそんな季節か」
ここしばらくのバタバタ続きで、すっかり季節感が抜けていた。
毎年、私生活では宏樹と兄、それと守谷先生には欠かさずチョコを贈っている。宏樹と兄は贈らないとすぐに拗ねてうるさいし、守谷先生は「別に良かったのに」と言いながら受け取ってくれる。
逆に職場では俺は「男性」だからもらう立場だ。職員同士、個人では贈り合ったりはしないけれど、男性女性、アルファやベータ、オメガ関係なくみんな数百円ずつ出し合って、患者さんに配ったりしている。
「泰樹くんもチョコ好き?」
「好きですよ。甘いのも苦いのも、チョコに関しては好き嫌いはないです」
「へぇ。それは贈る側としては助かるな」
「……真緒ちゃん。もしかしてだけど、俺に、くれるんです?」
「俺からはいらない?」
いるって言われたらあげようかな、と何となく聞いただけの、俺の意地が悪い問いかけに、泰樹くんはぴたっと足を止めた。一瞬だけ、俺の腰から手が離れて直立っていう感じの姿勢で動かなくなって、それから顔を真っ赤にして、ぐるん、と俺の方に体ごと向いた。
「いっ!……いる、いります、欲しいです。できれば会えなかった分も……!」
「会えなかった分?」
「俺が中学に入ってから、去年までの分です」
「ええ? それはちょっと多すぎじゃない?」
「大丈夫です。毎日ゆっくり味わって食べます、絶対に無駄にしません」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
一度に何個チョコをもらうつもりなんだ、と突っ込みたいところを飲み込んだ。泰樹くん一人に何個もチョコを渡したことが兄にバレたら、厄介なことになりそうな気がする。
百九十近い上背の男が通路の真ん中で立ち止まれば迷惑になる。ひとまず俺は尻尾をブンブン振り回している(であろう)泰樹くんの手を取り、今度は逆に俺が引っ張るようにして惣菜売り場へと向かった。
「真緒ちゃんはチョコ好き?」
「うん、好き」
「…………それ、もっかい言って」
「え?」
「いや、何でもないです」
「?」
俺は普通に手を握っただけなのに、歩いているうちにいつの間にか指と指と絡める繋ぎ方にされたことは、お祝いということで気にしないことにした。
惣菜売り場は、男性客より女性客の方が多い。
前にテレビのデパ地下特集で見た目当ての店舗へ行くと、やっぱりそこもショーケースの前にずらりと人が並んでいて、どんな惣菜があるのかわかりづらい。
注文した人は支払いを終えるとすぐに横にずれてくれるんだけど、その空いたスペースにすかさず他の人が入って、俺はなかなかショーケースの前に行けない。女性を押しのけてまで入るのも微妙だし、どうしたものか……と思っていたら。
ちょうど支払いを終えた前の人のスペースが空いたその隙に、泰樹くんがその大きな体をすべらせるように割り入った。
「真緒ちゃん。ほら、おいで」
呼ばれた俺が泰樹くんのすぐ後ろに出ると、すぐに俺と入れ替わった。そのまま俺の背中と泰樹くんのお腹がくっついた状態になる。周りの女性客から俺と泰樹くんの顔を二度見、三度見される。
「真緒ちゃん、どれにする?」
「今日は泰樹くんのお祝いなんだから、泰樹くんの好きなやつがいいな」
「どれもみんなおいしそうだよね。今日は、俺と真緒ちゃんと、あとはヒロの三人?」
頷くと「三人なら結構食べるよね」と言って、量を増やすか品数を増やすかで迷うねと二人で笑う。俺と宏樹はアラサーだけど、祝われる当人はまだ二十歳。食べ盛りだ。このお店だけで買うわけじゃないけれど、おいしそうな実物を目の前にすると食欲が湧いてきて、あれもこれも食べたくなってしまう。
「取り敢えず、この人気ナンバーワンのPOPのやつは鉄板じゃない?」
「うん。あと俺は肉も食べたいです」
「肉……、ローストビーフか、グリルチキン?」
「精力つけときたいんで、ビーフにしましょう」
「せっ……」
泰樹くんの返答に、周りにいた女性客が「っふ!!」と咳き込んだ。何なら俺自身も咳き込んだ。
多分泰樹くんは「栄養」だとか「元気になる」とか、そういう意味で「精力」と言ったんだろうけど、明らかに違う意味で捉えられてしまった気がする。案の定咳き込んだ女性客たちを見たら顔が赤い。泰樹くんは頼むから自分のルックスがどれだけ目立つかを自覚してほしい。
「……じ、じゃあ、ナンバーワンと、ローストビーフにしよう。宏樹も食べるだろうから、ビーフの方は倍量でいいよね」
他のお客さんの注文を聞き終えた店員を呼び止めて二品を注文する。支払いを終えれば、後はさっと列の外側へよけて、呼ばれるのを待つだけだ。注文済みの客が何組か待っている横に、俺と泰樹くんも並ぶ。専用の受取口なんてないから、番号を呼ばれたら結局はまたあの人混みに飛び込まないといけないんだけども。
「意外とお惣菜を買う人って多いんですね」
「そうだね。やっぱりお仕事してる人は帰ってから作るのも大変だからね。俺は定時で上がれることが多いからなるべく自炊してるけど、看護師さんとか、利用してる人も多いと思うよ」
「真緒ちゃん、いつも料理してくれるじゃないですか」
「え。うん、そうだね」
「大変じゃない?」
「んー、そうでもないよ。ほら、俺オメガだろ。結婚した時のためにって母親に言われて割と家事系は叩き込まれてたから」
「そうかぁ……」
俺の〝オメガ〟発言に、周囲の女性客の視線が泰樹くんから俺に移る。まず俺の顔を見て、それから首。ネックガードの有無を確認される。マフラーを巻いているのを見て、ため息をつかれた。冬に感謝だ。そして俺を見終わったら、隣に立つ泰樹くん――アルファを確認した。
きりよく俺たちが注文した時の番号が呼ばれる。俺が受け取りに行こうとしたら、泰樹くんが俺の頭をぽんと軽く叩いて「俺が行ってくるよ」とさっと歩いていった。
相変わらずショーケース前には女性客たちが固まって並んでいて隙間がない。泰樹くんはその女性客たちの後ろから「三番です」と店員さんに声をかける。店員さんが惣菜の入ったレジ袋を渡そうと持ち上げるけれど、女性客たちの退く様子はない。
「お姉さんたち。――頭の上、失礼しますね」
そう言って、泰樹くんは女性客の頭の上からそのレジ袋を受け取った。突然、頭上に伸びてきた腕にびっくりした女性客たちが振り返り「でかっ」と声を上げて、その腕の持ち主である泰樹くんを見遣る。
泰樹くんは三番のレシートを店員さんに渡して、驚いて固まっている女性客たちに「ごめんね」と微笑んでから、離れて待つ俺の方へと戻ってきた。
「身長高いと、こういう時は便利なんだよ」
そう屈託なく笑う泰樹くんは、来た時と同じように俺の腰に手を添えて「じゃあ急いで帰ってごはんにしましょう」と笑った。
ーーーー
デパ地下部分はまとめたかったので、いつもよりも長文になりました💦
デート回、まだもう少しだけ続きます
職場を出て地下街を通り、デパートの地下出入り口へと着く。同じように仕事帰りっぽい様子の人たちで食料品街、いわゆるデパ地下は混雑していた。泰樹くんは明らかに来慣れていない俺の腰に手を回した状態で、はぐれないように惣菜売り場へと引っ張っていく。
出入り口周辺が一番混んでいたようで、ある程度中へ進むと泰樹くんに引っ張ってもらわなくても大丈夫になった。それでも泰樹くんは俺の腰を引き寄せたままで、俺の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれているみたいだった。
(でも、人前でこんなにくっつくのは、ちょっと困るんだけど……!)
ちらちらとすれ違う人たちからの視線を感じる。この子は自分がどれだけ目立つのかわかっていないのでは? 何より、俺は、宏樹とだってこんなに密着して出歩いたことなんてない。人前でこうも密着されると、何というか照れるし、もし病院職員とか患者さんに見られたらと思うと焦りが出る。
体をよじって離れようとしても、節ばった手は俺の腰からまったく動かない。抗議の意味を込めて泰樹くんを見上げると、彼は少し屈んで俺に耳打ちをした。
「真緒ちゃん」
「な、何?」
「はぐれるのは嫌だから、離さないからね」
「…………はい。」
「今日は俺のお祝いなんだよね。真緒ちゃんとデートできて嬉しいよ」
語尾が弾んで、泰樹くんはすこぶる機嫌が良さそうだった。垂れ気味の目を細めて、口角はがっつり上がっている。
いや、それよりもデート。デート?
今この子、デートって言いましたか。デート。デート? デートって何だっけ!?
仕事帰りに待ち合わせて、
いつもは行かないお店に行って、
くっついて歩く……
……うん、デートだ。よく本で読むようなデートだ?!
宏樹とは七歳で婚約してからというものの、デートなんて名前のつくことはしたことがなかった。お互いの家で、食事をしたりお菓子を食べたり、宿題をしたり。何なら時折家族も交えてのその数時間は健全そのもので楽しかったけれど、やっぱりあれはデートじゃない。
じゃあ、この泰樹くんとの〝お出かけ〟が、俺にとって初めてのデート……ということになるんだろうか……?
「あ。まだ早かったか」
ぐるぐる考え込んでいる俺を尻目に、泰樹くんは明後日の方向を見ながらつぶやいた。
「早かったって、何が?」
「――ほら。上見て、上」
「上?」
泰樹くんが指さした方向を見れば、来週から最上階の催事スペースで始まる予定のバレンタインフェアのポスターが吊られている。
「……バレンタインって、もうそんな季節か」
ここしばらくのバタバタ続きで、すっかり季節感が抜けていた。
毎年、私生活では宏樹と兄、それと守谷先生には欠かさずチョコを贈っている。宏樹と兄は贈らないとすぐに拗ねてうるさいし、守谷先生は「別に良かったのに」と言いながら受け取ってくれる。
逆に職場では俺は「男性」だからもらう立場だ。職員同士、個人では贈り合ったりはしないけれど、男性女性、アルファやベータ、オメガ関係なくみんな数百円ずつ出し合って、患者さんに配ったりしている。
「泰樹くんもチョコ好き?」
「好きですよ。甘いのも苦いのも、チョコに関しては好き嫌いはないです」
「へぇ。それは贈る側としては助かるな」
「……真緒ちゃん。もしかしてだけど、俺に、くれるんです?」
「俺からはいらない?」
いるって言われたらあげようかな、と何となく聞いただけの、俺の意地が悪い問いかけに、泰樹くんはぴたっと足を止めた。一瞬だけ、俺の腰から手が離れて直立っていう感じの姿勢で動かなくなって、それから顔を真っ赤にして、ぐるん、と俺の方に体ごと向いた。
「いっ!……いる、いります、欲しいです。できれば会えなかった分も……!」
「会えなかった分?」
「俺が中学に入ってから、去年までの分です」
「ええ? それはちょっと多すぎじゃない?」
「大丈夫です。毎日ゆっくり味わって食べます、絶対に無駄にしません」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
一度に何個チョコをもらうつもりなんだ、と突っ込みたいところを飲み込んだ。泰樹くん一人に何個もチョコを渡したことが兄にバレたら、厄介なことになりそうな気がする。
百九十近い上背の男が通路の真ん中で立ち止まれば迷惑になる。ひとまず俺は尻尾をブンブン振り回している(であろう)泰樹くんの手を取り、今度は逆に俺が引っ張るようにして惣菜売り場へと向かった。
「真緒ちゃんはチョコ好き?」
「うん、好き」
「…………それ、もっかい言って」
「え?」
「いや、何でもないです」
「?」
俺は普通に手を握っただけなのに、歩いているうちにいつの間にか指と指と絡める繋ぎ方にされたことは、お祝いということで気にしないことにした。
惣菜売り場は、男性客より女性客の方が多い。
前にテレビのデパ地下特集で見た目当ての店舗へ行くと、やっぱりそこもショーケースの前にずらりと人が並んでいて、どんな惣菜があるのかわかりづらい。
注文した人は支払いを終えるとすぐに横にずれてくれるんだけど、その空いたスペースにすかさず他の人が入って、俺はなかなかショーケースの前に行けない。女性を押しのけてまで入るのも微妙だし、どうしたものか……と思っていたら。
ちょうど支払いを終えた前の人のスペースが空いたその隙に、泰樹くんがその大きな体をすべらせるように割り入った。
「真緒ちゃん。ほら、おいで」
呼ばれた俺が泰樹くんのすぐ後ろに出ると、すぐに俺と入れ替わった。そのまま俺の背中と泰樹くんのお腹がくっついた状態になる。周りの女性客から俺と泰樹くんの顔を二度見、三度見される。
「真緒ちゃん、どれにする?」
「今日は泰樹くんのお祝いなんだから、泰樹くんの好きなやつがいいな」
「どれもみんなおいしそうだよね。今日は、俺と真緒ちゃんと、あとはヒロの三人?」
頷くと「三人なら結構食べるよね」と言って、量を増やすか品数を増やすかで迷うねと二人で笑う。俺と宏樹はアラサーだけど、祝われる当人はまだ二十歳。食べ盛りだ。このお店だけで買うわけじゃないけれど、おいしそうな実物を目の前にすると食欲が湧いてきて、あれもこれも食べたくなってしまう。
「取り敢えず、この人気ナンバーワンのPOPのやつは鉄板じゃない?」
「うん。あと俺は肉も食べたいです」
「肉……、ローストビーフか、グリルチキン?」
「精力つけときたいんで、ビーフにしましょう」
「せっ……」
泰樹くんの返答に、周りにいた女性客が「っふ!!」と咳き込んだ。何なら俺自身も咳き込んだ。
多分泰樹くんは「栄養」だとか「元気になる」とか、そういう意味で「精力」と言ったんだろうけど、明らかに違う意味で捉えられてしまった気がする。案の定咳き込んだ女性客たちを見たら顔が赤い。泰樹くんは頼むから自分のルックスがどれだけ目立つかを自覚してほしい。
「……じ、じゃあ、ナンバーワンと、ローストビーフにしよう。宏樹も食べるだろうから、ビーフの方は倍量でいいよね」
他のお客さんの注文を聞き終えた店員を呼び止めて二品を注文する。支払いを終えれば、後はさっと列の外側へよけて、呼ばれるのを待つだけだ。注文済みの客が何組か待っている横に、俺と泰樹くんも並ぶ。専用の受取口なんてないから、番号を呼ばれたら結局はまたあの人混みに飛び込まないといけないんだけども。
「意外とお惣菜を買う人って多いんですね」
「そうだね。やっぱりお仕事してる人は帰ってから作るのも大変だからね。俺は定時で上がれることが多いからなるべく自炊してるけど、看護師さんとか、利用してる人も多いと思うよ」
「真緒ちゃん、いつも料理してくれるじゃないですか」
「え。うん、そうだね」
「大変じゃない?」
「んー、そうでもないよ。ほら、俺オメガだろ。結婚した時のためにって母親に言われて割と家事系は叩き込まれてたから」
「そうかぁ……」
俺の〝オメガ〟発言に、周囲の女性客の視線が泰樹くんから俺に移る。まず俺の顔を見て、それから首。ネックガードの有無を確認される。マフラーを巻いているのを見て、ため息をつかれた。冬に感謝だ。そして俺を見終わったら、隣に立つ泰樹くん――アルファを確認した。
きりよく俺たちが注文した時の番号が呼ばれる。俺が受け取りに行こうとしたら、泰樹くんが俺の頭をぽんと軽く叩いて「俺が行ってくるよ」とさっと歩いていった。
相変わらずショーケース前には女性客たちが固まって並んでいて隙間がない。泰樹くんはその女性客たちの後ろから「三番です」と店員さんに声をかける。店員さんが惣菜の入ったレジ袋を渡そうと持ち上げるけれど、女性客たちの退く様子はない。
「お姉さんたち。――頭の上、失礼しますね」
そう言って、泰樹くんは女性客の頭の上からそのレジ袋を受け取った。突然、頭上に伸びてきた腕にびっくりした女性客たちが振り返り「でかっ」と声を上げて、その腕の持ち主である泰樹くんを見遣る。
泰樹くんは三番のレシートを店員さんに渡して、驚いて固まっている女性客たちに「ごめんね」と微笑んでから、離れて待つ俺の方へと戻ってきた。
「身長高いと、こういう時は便利なんだよ」
そう屈託なく笑う泰樹くんは、来た時と同じように俺の腰に手を添えて「じゃあ急いで帰ってごはんにしましょう」と笑った。
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デパ地下部分はまとめたかったので、いつもよりも長文になりました💦
デート回、まだもう少しだけ続きます
応援ありがとうございます!
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